著者
中村 澄子 鈴木 啓太郎 原口 和朋 大坪 研一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.63-66, 2007-06-01
被引用文献数
1
著者
大越 昌子 胡 景杰 石川 隆二 藤村 達人
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.125-133, 2004-09-01
参考文献数
31
被引用文献数
3 10 1

古代に栽培されていたイネの品種や来歴を明らかにすることを目的として,遺伝的変異を比較的よく保有していると考えられる日本の在来イネ(Oryza sativa L.)73品種について,複数のマイクロサテライトマーカーを用いた多型解析による分類を試みた.基準品種として,中国より導入した陸稲4品種および形態的・生理的形質に基づいてIndicaおよびJaponicaに分類されているアジアの在来イネ8品種を用い,多型性の大きい8種(RM1,RM20A,RM20B,RM30,RM164,RM167,RM207,RM241)のマイクロサテライトマーカーを選んで分析した.その結果,日本の在来イネはIndicaおよびJaponicaに大別され,そのうち8品種がIndicaに,残り65品種がJaponicaに属していることが明らかになった.後者に属するものはさらに3つのサブグループ,すなわち陸稲グループ(J-A),陸稲・水稲混合グループ(J-B)および水稲グループ(J-C)に分類された.このうち,グループ(J-B)は陸稲グループ(J-B_1)と水稲グループ(J-B_2)の2つのグループに分類され,前者は熱帯Japonica,後者は温帯Japonicaであることが示された.陸稲の「古早生」,「福坊主」および「関取」は,温帯Japonicaの品種と同じグループ(J-B_3)に属していた.これらは水稲と近縁であることから,水稲から転用された陸稲であったと考えられる.本研究に用いた8種のマイクロサテライトマーカー(RM1,RM20A,RM20B,RM30,RM164,RM167,RM207,RM241)は,イネ,特に日本の在来種の分類・識別に有効なマーカーとなりうると考える.
著者
武田 和義 高橋 秀和
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-8, 1999-03-01
被引用文献数
1

ムギ類の作期にほとんど雨の降らない夏雨型の半乾燥地では, 種子を深播して土壌深部の水を利用するため, 深播した場合にも出芽し得る深播耐性が必要である.オオムギ5,082品種とコムギ1,214品種を用いて深播耐性の品種変異を評価し, 極強品種を選抜した.深播耐性には大きな遺伝変異があり, 種子の大きさならびに幼芽の伸長量と関係があって半矮性品種の深播耐性は弱い.同質遺伝子系統対を比較したところ皮性オオムギの方が裸性オオムギよりも強かった.
著者
江面 浩 西尾 剛
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.125-130, 2014-09-01 (Released:2014-10-02)
参考文献数
10
著者
田中 淳一 山口 信雄 中村 順行
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.43-48, 2001-03-01
被引用文献数
4 2

緑茶品種'さやまかおり'は茶の重要害虫であるカンザワハダニ, クワシロカイガラムシに対して抵抗性を持ち, かつ寒害, 霜害にも強く緑茶育種の抵抗性育種素材として極めて重要な存在である.'さやまかおり'は埼玉県茶業試験場において, 静岡県茶業試験場より取り寄せた茶品種'やぶきた'の1947年産自然交雑種子中より選抜されている.'さやまかおり'は極端な立葉, 際立って濃い葉色, 特徴的な鋸歯等々, 一般的な日本在来のチャにはほとんど見られない特徴的な形態形質を有している.これらはその後代の形態形質に大きな影響を与えることが再確認され, 優性効果の大きな遺伝子に支配されていることが推定された.従って'やぶきた'がそのような形質を有していない以上, 'さやまかおり'の花粉親に必須の条件と考えられた.これらの特徴的な形態形質を指標に静岡県茶業試験場内より'さやまかおり'の花粉親としての可能性が多少なりとも疑われる栄養系を全てピックアップした.選ばれた78栄養系はいずれも海外, 特にそのほとんどが中国からの導入系統であり, 日本在来のチャは含まれなかった.これらを'さやまかおり'の花粉親候補とし, 'やぶきた'および'さやまかおり'を用いてDNAマーカーによる親子鑑定を行った.その結果, 'さやまかおり'の花粉親として合致するものはなく, 'さやまかおり'の花粉親はすでに現存しない可能性が高いと判断された.
著者
Chotechuen Somsong Watanesk Orapin Chitrakon Songkran
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.61-64, 2009-06-01
被引用文献数
1

タイは513,115km2の面積と約6500万人の人口を持つ国であり、主要な産業は農業である。76の州に分かれ、それらは北部、北東部、中央部、南部の4つの地域グループに分類されている。ほとんどの地域は熱帯に属し、2つの季節を持つ。暖かく多雨で曇りがちの南西モンスーン(5月中旬から10月まで)と、涼しくて乾燥した北東モンスーン(11月から4月中旬まで)である。しかし南部の地峡地帯はいつも高温多湿である。極めて多様な種類の農作物が栽培されているため、農業が行われている地域ではさまざまな生態型が見られる。いくつかの在来種の作物、なかでも特にコメが、かつて栽培されていたし、現在も栽培され続けている。コメの在来種としてはPlai Ngahm、Nahng Mon、Leuang Pratew、Jek Chuey、Sang Yodなどがある。農業生態学的な分類方法によると、タイの国土は4つの生態系に分けられる。つまり灌漑農耕地域、天水農耕が行われる低地、地下水利用地域、そして高地である。コメの栽培が一番多いのは天水農耕が行われる低地であり、次いで灌漑農耕地域、地下水利用地域、高地が続く。コメ栽培が行われる地域の80%以上が天水農耕地域にあり、そこではモンスーンの降雨が唯一の水源であるため、年に一度、雨季にだけコメが栽培される。残りの20%以下の土地で灌漑農耕が行われており、そこでは灌漑用水のおかげで雨季だけでなく乾季にもコメが栽培されている。
著者
小森 貞男 深町 浩 真岡 哲夫 日高 哲志 小川 一紀
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.137-145, 2002-09-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

パパイアは、中央アメリカ原産で世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培され、その年間生産量は720万トン(2000年、FAO)に達し、重要な熱帯果樹の一つである。パパイアは直立した幹を持つ草本性植物で、高いものでは10mに達する場合がある。葉は大型の掌状で頂部に群生する。雌雄異株に加え、両性花をつける株(両性株)がある。両性株は栽培環境で、両性花以外に雄花や雌花をつけることがある。このようにパパイアの花の性は複雑で、Storeyは花の形態で7つの型に分類している。播種後9~14ヶ月で結果時期に入り、量の変動はあるものの、果実は7~8年間周年での収穫が可能である。果実形は、花の種類によって長楕円形、球形、洋ナシ型などを呈する。果物として生食する他、完熟前の果実を野菜として利用する。ブラジルが第一の生産国で300万トン以上に達し、ほとんど自場消費されている。アメリカ合衆国(米国)ハワイ州の生産量は2万トン弱と多くはないが、ハワイで開発されたSolo系品種の品質は良好で、多くが輸出されている。日本では、南西諸島においてパパイアが自生化しており、また生産量は500t程度と少ないものの露地や施設で栽培されている。
著者
吉田 俊雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.103-107, 2003-09 (Released:2011-03-05)
著者
菊池 彰 河岡 明義 島崎 孝嘉 于 翔 海老沼 宏安 渡邉 和男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.17-26, 2006-03-01
被引用文献数
9

地球規模での環境悪化や食糧問題を改善するための手段として,遺伝子組換え植物を効率的に利用する研究が進められている.本研究では,閉鎖系温室,特定網室,隔離ほ場と段階を追って有用遺伝子組換え植物を実際に育成し,さまざまな科学的知見に基づいて環境安全性評価を確立することを目的の1つとしている.適合溶質の産生に関わる土壌細菌Arthrobactor globformisのcodA遺伝子を導入した耐塩性ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis Dehnh. codA 12-5B, codA 12-5C, codA 20-C)が塩ストレス培養条件下で選抜され,その導入形質の安定性と環境影響評価を閉鎖系温室・開放形温室にて実施した.各遺伝子組換え体の遺伝子発現は非耐塩ストレス環境下で18ヶ月間安定していることが明らかとなり,耐塩性も維持されていることが明らかとなった.一方,環境影響評価については,有害物質の生産を発芽アレロパシー試験・土壌微生物相の調査・液体クロマトグラフィー・ガスクロマトグラフィーのいずれの試験においても組換え体と非組換え体との間に有意な差が認められなかった.また,生長性・形態についても顕著な差異が認められず,組換え体と非組換え体との間の違いは耐塩・耐乾燥性以外には認められなかった.一方,非組換えユーカリの野外栽培の結果から,競合における優位性,食害等も認められなかった.また,本邦に交配可能な近縁野生種の自然分布はなく,近隣の栽培ユーカリに対する交雑も,既知の交雑性から極めて低いことが考えられた.以上の点から,本遺伝子組換えユーカリは耐塩性を除き,非組換えユーカリと相違点は認められず,隔離ほ場における栽培に際して,生物多様性影響が生じるおそれは無いと判断された.
著者
大江 夏子 田原 誠 山下 裕樹 丸谷 優 蔵之内 利和
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.169-177, 2004-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
6 3

蒸切干し用に開発されるサツマイモ新品種の不正使用や海外流出に対抗する手段を確立するため,加工品である蒸切干し製品から,その原料となった品種を,DNAの多型を基に高精度に判定する技術を開発することとした.転移因子であるレトロトランスポゾンは,植物のゲノムに多数の複製配列が散在している.サツマイモのレトロトランスポゾンRtsp-1のゲノム挿入部位を,葉から抽出したDNAを用い,蒸切干し用新品種候補を含む12品種についてS-SAP(Sequence-Specific Amplification Polymorphism)法により分析した結果,多数の複製配列の挿入と挿入部位の品種間の多型が検出された。品種間で違いが見られたRtsp-1挿入部位の塩基配列を調べ,挿入を受けた宿主側の配列とRtsp-1の末端反復配列間のPCRによって,それぞれの品種について様々な挿入部位における挿入の有無を調べた.その結果,最少5ヵ所の挿入部位のPCRにより,上記12品種の区別が可能であった.蒸切干しイモのDNAは,イオン交換樹脂カラムを用いて抽出することができたが,加工による断片化が進んでいた.断片化した蒸切干しイモのDNAを鋳型にしたPCRにおいても,明瞭な結果が得られ,原料品種の識別が可能であった.染色体の特定部位におけるレトロトランスポゾン挿入の品種間多型をPCRにより判定し品種識別を行う方法は,DNAが断片化した加工品の分析に適する,再現性が高く操作が容易,マーカー数の確保が容易などの利点があり,高次倍数性の作物や加工品などにおける優れた品種識別マーカーとなる.
著者
新村 和則 金川 寛 三上 隆司 福森 武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.87-94, 2005-06-01
被引用文献数
8 9

本研究では日本国内で栽培されている水稲うるち品種の中から, 作付け面積の約99%のシェアを有する130品種(好適酒造品種は12品種)を供試品種とし, これらの品種をすべて判別できるマルチプレックスPCRプライマーセットの開発を試みた.供試した原種または原々種について, 供試品種間での多型DNA断片の塩基配列を決定し, 15組のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを設計した.これらのプライマーを1組ずつ用いて130品種それぞれについてPCRを行ない, 品種特有のバンドについて確認した.設計した15組のプライマーが互いに干渉しないよう塩基配列やプライマーの組み合わせ, PCR条件などを検討し4セットに集約した.マルチプレックスPCRを行ない, すべての品種を判別できることを確認した.次に, 複数の都道府県で栽培されている12品種を用いて, 「コシヒカリ」, 「ひとめぼれ」, 「ヒノヒカリ」, 「あきたこまち」, 「キヌヒカリ」, 「日本晴」, 「ササニシキ」, 「ハナエチゼン」, 「祭り晴」, 「あさひの夢」について, これら4つのマルチプレックスPCRプライマーセットを用いてPCRを行ない, それぞれの品種において品種内変異が生じないことを確認した.以上の結果から, 本研究に用いたマルチプレックスPCRプライマーセットは, 日本国内で栽培されているイネの品種判別に有効であると考えられる.
著者
西村 実 梶 亮太 小川 紹文
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-22, 2000-03-01
被引用文献数
5

本研究は日本国内の多数の水稲新旧品種を用いて普通期栽培に加えて早期栽培を行うことにより高温環境を設定し, それによって登熟期の高温が玄米の品質に及ぼす影響の品種間差異について検討したものである.良質米率および千粒重はほとんどの品種において早期栽培(高温区)で普通期栽培(対照区)より低い値を示した.良質米率の低下要因の多くは乳白米, 背白米および基白米の多発であった.北陸地域で近年育成された品種のほとんどは, 早期の高温環境においても良質米率が低下しにくい傾向にあることが明らかとなった.これらの品種はコシヒカリ, 越路早生, フクヒカリ, フクホナミ, ゆきの精等であり, いずれもコシヒカリと類縁関係にあるものであった.これは北陸地域における品種の登熟期が7月後半から8月前半の高温期にあたり, その中で品種育成が行われ, 必然的に玄米品質に関して高温耐性の高い遺伝子型が選抜されてきたことによるものと考えられた.旧品種および北陸以外の地域で育成された新品種では, 高温環境で玄米品質が劣化し易いものと劣化し難いものが混在していた.以上のように, 出穂後の高温によって玄米品質が低下する傾向にあり, また, 玄米品質の高温ストレス耐性は, 遺伝的制御を受けているとみられ, コシヒカリの近縁品種で高いことが明らかとなった.