著者
三船 毅
出版者
愛知学泉大学
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 (ISSN:13447939)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.189-210, 2000-12

投票行動研究において投票コストは重要な概念である。投票コストとは、有権者が選挙で投票する際に負担する時間,労力,そして、そのための情報収集などである。実証研究では有権者の社会的属性が投票参加に影響を与えることは,初期の研究からの多くの研究者が検証してきた。これはいわば,有権者の社会的属性が投票コストを減少させることを検証してきたのである。しかし,有権者のコストを減少させるメカニズムは社会的属性だけではない。近年ではSocial Capital(人間関係資本)に代表されるように,個人の持つ人間関係がその人の行動に影響を与えるといった考えが,社会学・政治学の中でも用いられるようになってきている。本稿では,投票コストの概念的整理をおこない,理論的分析で提出されてきた,難問であるダウンズのパラドクス,さらにそれを拡張させたオルソン問題を整理し,先行研究の解決方法を検証し,実際の有権者のコスト減少のメカニズムを分析していく。

37 0 0 0 OA 投票参加の低下

著者
三船 毅
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.135-160,351, 2005-11-10 (Released:2010-04-30)
被引用文献数
1 1

This paper uses individual-level data to examine the cause of the sudden decline in turnout in House of Representatives elections in the 1990s.The turnout rate remained flat from 1972 to 1990, but between 1990 and 1996 fell rapidly. In fact, individual-level data show that the electorate's political awareness changed markedly.The analysis utilized in this inquiry first offers a comprehensive explanation for the sudden change in turnout. It then establishes determinants of both voting and abstention through probit analysis, and finally illustrates the cause of the fall in turnout through simulations.The results show that the decline in turnout from 1990 to 1996 was due not to a decrease in mobilization, but rather to a decline in partisanship and low political interest of the electorate. In addition, alteration of the electoral rules had little significant effects.
著者
三船 毅
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.69-94, 2008 (Released:2016-10-03)
参考文献数
28

亥年現象は,これまで保守系地方議員の選挙動員が低下することにより生起するとされてきた。この論理は,有権者に対する選挙動員の影響力が強いことを暗黙裏に前提条件としている。本稿では,そのような前提条件が大部分の政党で成り立たないことを検証し,亥年現象の生起する過程を新たな視点から捉え直す。またこれらの作業を通して,2007年に亥年現象がなぜ起こらなかったのかをシミュレーションから検証する。
著者
三船 毅 中村 隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-106, 2010 (Released:2017-03-31)
参考文献数
32

衆議院選挙投票率が1996年以降に低水準で推移してきた一因を究明する。戦後日本の衆議院選挙投票率は1993年から急激に低下して1996年に最低投票率を記録した。その後の2000年,2003年の選挙でも投票率は低水準で推移しており,2005年の郵政選挙では有権者の関心も高く投票率は若干上昇したが,この間の投票率は1990年以前の水準とは大きく乖離している。投票率が1996年以降に低水準で推移した一因として,有権者のコウホート効果の存在が考えられ,コウホート効果の析出を行った。分析方法はコウホート分析における識別問題を克服したベイズ型コウホートモデルを用いた。使用したデータは,1969年から2005年までの総務省(自治省)による「衆議院選挙結果調」における年齢別投票率と,明るい選挙推進協会の「衆議院議員総選挙の世論調査」から集計した年齢別投票率である。分析結果から,およそ1961年以降の出生コウホートから投票率を低下させるコウホート効果の存在が確認された。
著者
三船 毅 中村 隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-106, 2010

衆議院選挙投票率が1996年以降に低水準で推移してきた一因を究明する。戦後日本の衆議院選挙投票率は1993年から急激に低下して1996年に最低投票率を記録した。その後の2000年,2003年の選挙でも投票率は低水準で推移しており,2005年の郵政選挙では有権者の関心も高く投票率は若干上昇したが,この間の投票率は1990年以前の水準とは大きく乖離している。投票率が1996年以降に低水準で推移した一因として,有権者のコウホート効果の存在が考えられ,コウホート効果の析出を行った。分析方法はコウホート分析における識別問題を克服したベイズ型コウホートモデルを用いた。使用したデータは,1969年から2005年までの総務省(自治省)による「衆議院選挙結果調」における年齢別投票率と,明るい選挙推進協会の「衆議院議員総選挙の世論調査」から集計した年齢別投票率である。分析結果から,およそ1961年以降の出生コウホートから投票率を低下させるコウホート効果の存在が確認された。
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
三船 毅 Tsuyoshi MIFUNE
雑誌
愛知学泉大学コミュニティ政策学部紀要 = Bulletin of School of Community Policy, Aichi Gakusen University
巻号頁・発行日
vol.3, pp.189-210, 2000-12

投票行動研究において投票コストは重要な概念である。投票コストとは、有権者が選挙で投票する際に負担する時間,労力,そして、そのための情報収集などである。実証研究では有権者の社会的属性が投票参加に影響を与えることは,初期の研究からの多くの研究者が検証してきた。これはいわば,有権者の社会的属性が投票コストを減少させることを検証してきたのである。しかし,有権者のコストを減少させるメカニズムは社会的属性だけではない。近年ではSocial Capital(人間関係資本)に代表されるように,個人の持つ人間関係がその人の行動に影響を与えるといった考えが,社会学・政治学の中でも用いられるようになってきている。本稿では,投票コストの概念的整理をおこない,理論的分析で提出されてきた,難問であるダウンズのパラドクス,さらにそれを拡張させたオルソン問題を整理し,先行研究の解決方法を検証し,実際の有権者のコスト減少のメカニズムを分析していく。
著者
三船 毅
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.69-94, 2008

亥年現象は,これまで保守系地方議員の選挙動員が低下することにより生起するとされてきた。この論理は,有権者に対する選挙動員の影響力が強いことを暗黙裏に前提条件としている。本稿では,そのような前提条件が大部分の政党で成り立たないことを検証し,亥年現象の生起する過程を新たな視点から捉え直す。またこれらの作業を通して,2007年に亥年現象がなぜ起こらなかったのかをシミュレーションから検証する。