著者
福内 友子 岩崎 円香 山岡 法子 金子 希代子
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.165-172, 2018-12-20 (Released:2018-12-20)
被引用文献数
2

患者の食事指導に役立てるため,これまで当研究室では日常的に食される多くの食品中のプリン体含量を測定し報告してきた.食品は生で食べるものを除き,多くの場合何らかの熱処理により調理され食されている.本研究ではプリン体(ヌクレオチド,ヌクレオシド,塩基)一斉分析法を用いて,食品に含まれるプリン体,特に旨味成分であるイノシン酸(IMP)・グアニル酸(GMP)の分解について,湯煎および電子レンジによる加熱温度・加熱時間・加熱方法の違いに着目し分析を試みた.食品試料として,IMPを多く含む鶏がらスープの素と鶏もも肉,GMPを多く含む乾燥しいたけを用いた.プリン体一斉分析の結果,鶏がらスープ中には,ヒポキサンチン(HX)類であるIMP,HX,イノシン(Ino)が多く含まれ,沸騰水(約100℃)の湯煎での加熱は,それ以下の温度と比較してほぼすべてのプリン体量が有意に上昇し,60分加熱し続けてもプリン体量に変化は認められなかった.電子レンジによる加熱との違いについて検討すると,鶏がらスープの素に含まれる核酸系旨味成分であるIMP,GMPは電子レンジより湯煎での加熱の方が分解しにくいことが示された.次に,鶏もも肉からの溶出を検討した結果,湯煎より電子レンジでの加熱の方がすべてのプリン体が多く溶出した.また,鶏もも肉を水にさらしたのみでも,アデニン類(ATP, ADP, AMP, アデノシン, アデニン)やグアニン類(GTP, GDP, GMP, グアノシン,グアニン)は溶出しなかったが,HX類は溶出した.さらに鶏もも肉中のプリン体と肉片から溶出したプリン体を塩基の量で比較すると,アデニン,グアニンは肉片中の1/10程度の溶出だったが,HXは湯煎で60%,電子レンジではほぼ100%溶出した.乾燥しいたけからは,どちらの方法も時間依存的に全てのプリン体が溶出液中で上昇したが,電子レンジの方が加熱後短時間で溶出し,また,分解しにくく,溶出液中に核酸系旨味成分であるGMPが多く残る結果であった.これらの実験より,食品の違いにより同じ加熱方法でもプリン体の溶出や分解に違いがあることが示された.高尿酸血症患者は,鶏肉を食べる時は湯煎や電子レンジで茹でて,尿酸値を上げやすい肉中のプリン体であるHX類を少なくすることを推奨する.
著者
大田 祐子 土橋 卓也
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.169-174, 2011 (Released:2012-02-14)
被引用文献数
1 1

高尿酸血症の病型を分類することは,患者個人に合った治療法を選択する上で有用であるが,24時間法や60分法による評価の実施は容易ではない.そこで簡便法としての随時尿中尿酸/クレアチニン(UUA/UCr)の有用性について検討した.利尿薬または尿酸降下薬服用者を除く外来高血圧患者1067名を対象に24時間家庭蓄尿により尿酸動態を評価した.さらに蓄尿と随時尿中UUA/UCrの評価を行った177名において,両方法に基づく高尿酸血症の病型分類について比較検討した.24時間蓄尿により高尿酸血症合併高血圧患者の92%が尿酸排泄低下型と判定された.高血圧患者,高尿酸血症合併高血圧患者のいずれにおいても蓄尿で産生過剰型と判定された例で24時間蓄尿中UUA/UCrが0.5未満を示した例はなかった.一方,随時尿実施者においても,随時尿中UUA/UCr が0.5未満を示した例の99%が蓄尿による評価で尿酸排泄低下型を示した.蓄尿中UUA/UCrは随時尿中UUA/UCrと有意な正の相関を認め(r=0.42, p<0.01),両方法に基づくUUA/UCr0.5をカットオフ値とした場合の病型分類の一致率は69.5%であった.高尿酸血症合併高血圧患者において随時尿中尿酸/クレアチニンに基づく病型分類は日常診療での薬剤選択の根拠となりうると思われた.
著者
神原 彩 三浦 芳助 瀬山 一正
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.95-103, 2012 (Released:2013-01-23)

我々は「食物成分の操作による尿のアルカリ化が尿酸排泄を促進する」ということを発見した.この発見を生活の場で具体化するためには,献立をたてる段階で,食物が代謝された時に尿酸だけでなくH+の生成量を予測することが必要不可欠となる.Frassetto等(1998)は,食事に含まれるタンパク質(g)とK+(mEq)の比率であるP/K比は,腎による正味の酸排泄量([滴定酸]+[NH4+]-[HCO3-])と直線的相関関係があると報告している.我々は,この仮説が過去4年間に得られたデータと一致するか検証した.得られた結果は彼らのデータを支持するものであった.そこで,プリン体含有量とP/K比で分類した食物を選択するための簡単な参照表を作成した.プリン体はすでに金子氏によって報告されたデータを使用し,P/K比は五訂増補日本食品標準成分表を用いて算出した.高尿酸血症予防のためによいとする食事のP/K比の境界線は,日本痛風・核酸代謝学会の治療指針に尿路結石予防のために尿pHを6.0以上に維持することが示されているので,尿pH6.0に相当する一日当たりの食事のP/K比1.5とした.