著者
角田 (矢野) 悦子 森谷 絜
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.95-103, 2005-12-20

植物カモミール(Matricaria chamomilla)は,ヨーロッパを中心に古くから鎮静効果をもつ植物として利用されてきた。カモミールの摂食によるリラックス効果及び睡眠影響について報告された論文を総説としてまとめた。カモミール茶の摂食が末梢皮膚温を上昇させる,心拍数を低下させる,自律神経系を副交感神経優位にするという報告,感情測定尺度(MCL-S.1)によってリラックス感得点の上昇を認めたことが報告されている。また,カモミールエキスを添加したゼリーを温めた状態で摂食した場合には末梢皮膚温の上昇や心拍数の低下が起こり,副交感神経優位の傾向が示されたが,低温で摂食した場合 にはその効果が認められなかったと報告されている。OSA 睡眠調査票を用いた睡眠実験から,カモミールエキス添加ゼリー摂食日の夜間睡眠では,ねむ気の因子,寝つきの因子などが無添加ゼリーを摂食した日に比べて改善したことが報告されている。
著者
佐藤 公治 西山 希
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
no.100, pp.29-49, 2007

絵本の集団読み聞かせ場面で、幼児はどのように反応し、また読み聞かせの活動にも積極的に参加していくことによって読み聞かせの楽しさを見出しているか、その微視発生的な過程を分析した。本研究では、子どもの発話活動が積極的に展開された読み聞かせの事例と、子どものイメージ活動が積極的に展開された事例について子どもの絵本への注視行動の分析と発話分析から受容過程の微視的分析が行われた。そこでは、それぞれがやや異なった活動のモードで展開しながらも子どもたちは読み聞かせに集中していた。また保育者の読みに子どもたちが途中から一緒に参加して発話をしていくといった同調行動や共振性を音声分析から明らかにされた。これらが子どもの読み聞かせの楽しさを生んでいる一因になっていると考察した。そこでは母子の間の読み聞かせとは異なった集団の読み聞かせの特性が明らかになった。また、保育者の効果的な働きかけや、子どもたちの反応を引き出すような作品の仕掛けについても関連づけて検討された。
著者
石黒 広昭 内田 祥子 小林 梓 東重 満 織田 由香
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.181-223, 2005-12-20

2005年度第一クールの調査目的はファンタジー遊びの中で,子ども達の挑戦的な経験がどのように子ども達を育て,そうした経験が何を発達させるのか調べることであった.第一クールは五月から七月まで行われ,テーマは月探険である.この第一クールからは「こどもクラブ」と呼ばれるメンバー制が採用され,12名の子どもが参加した.そこには年長5名,年中6名,年少1名が参加した.その内,7名が女児で,5名が男児である.大人は6名が参加した.その内,2名は宇宙研究所の研究員という主要な役割を担った.彼女らはプレイショップの始まりでは「こどもクラブ」の先生だが,途中から急に宇宙調査隊員に変身した.彼女たちは子ども達にとっては,現実世界と空想世界をつなぐ媒介者として存在した.劇化の中で,子ども達はいくつかのコンフリクトを経験し,現実と虚構,探険への不安と希望といった曖昧な状態に投げ込まれた.子ども達は劇化の中で自分達で問題を発見し,大人に助けられながらそれを解こうとした.本研究では劇化,集団討論,描画を通して子ども達がどのようにストーリーを組み換え,創作していったのか分析した.
著者
須田 力 河口 明人 森田 勲
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
no.97, pp.1-25, 2005

豪雪地住民の冬季の身体活動の実態を明らかにし在宅での自発的なトレーニングによる体力の変化を検討するため,豪雪地帯の栗沢町,特別豪雪地帯の三笠市および士別市の中高年者を対象に,運動実施記録による調査(三笠市および士別市),無雪期及び積雪期の生活における身体活動の強度測定(三笠市),降雪始めと降雪終了期の2回の体力測定(3地域)を行った結果,⑴除雪の運動時間が歩行を上回ること,⑵無雪期の畑仕事,歩行,積雪期の歩行よりも除雪の運動強度が酸素摂取量,心拍数とも高いこと,⑶降雪始めに対して降雪終了期には男女共6分間歩行において有意な向上を示し,全般的に体力が向上したものの血圧値が増加傾向を示すなど,豪雪地域特有の特徴が浮き彫りにされた。これらの結果から,冬季間は運動不足により体力が低下するという問題が必ずしも妥当しない現実と除雪の効果と問題点を考慮した運動指導の必要性が明らかとなった。