著者
竹内 身和 石黒 広昭
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
pp.2022.089, (Released:2023-03-15)
参考文献数
56

Power ubiquitously shapes what is learned, how learning happens, and who learners become through learning. In recent years, the centrality of equity and power in learning has been rigorously discussed in the community of the learning sciences, especially as a critical expansion of sociocultural and sociohistorical approaches to learning. This shift in the field not only helps us to examine various contexts of learning that have been previously overlooked, but also fundamentally urges us to reconsider the meaning of learning that has been historically treated as apolitical and non-ideological. In this article, we review the recent development of studies on learning that re-center power, equity, and justice. Our review documents the conceptual shift on learning and discusses major methodological frameworks to study the relationships between power and learning. Based on our review, we maintain that learning can be reconceptualized as socio-environmental design where learners agentively alter the material and ecological functioning and geopolitical mapping of oppression and injustice. Our view of learning as socio-environmental design could open a new horizon on studies on learning, attending to heterogenous and conflicting histories and voices rooted in the particularities of geopolitical environments that have been understudied. Bringing back the central thesis that learning is contextually bound, we call for future studies on learning as socio-environmental design that reflect a macro-micro continuum arising from the geopolitical matrix of power situated in the post-industrial and post-developmental society of Japan.
著者
石本 啓一郎 石黒 広昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.333-345, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
30
被引用文献数
2 3

文字獲得はこれまで主に文字形態に焦点をあててきたが, 本研究では思考の媒介手段としての文字の機能に焦点をあてる。子どもが産出する物理的な線を総称して「インスクリプション」と呼び, それが想起の媒介手段として機能する発達過程を明らかにすることが本研究の目的である。ヴィゴツキーの「二重刺激の機能的方法」に基づき, 呈示文を後で思い出せるようにインスクリプションの産出を促すメモかき課題を3歳から7歳の80人に実施した。子どもが産出したインスクリプションの形態と, それによる想起成績の関係を検討したところ, インスクリプションは年齢と共に図像, 文字へと順次移行し, 想起手段として役立つようになっていった。さらに, 想起手段として文字を産出した者とそれ以外の者の課題遂行過程を比較検討したところ, 図像利用者は呈示文の意味を記すのに対して, 文字利用者は呈示文の音韻を記そうとしていた。インスクリプションはその形態変化を伴いながら, 媒介手段にほとんどならない多様な線画の状態から, 図像, そして文字に媒介された行為を形成する段階へと順次移行していく。
著者
石黒 広昭 内田 祥子 小林 梓 東重 満 織田 由香
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.181-223, 2005-12-20

2005年度第一クールの調査目的はファンタジー遊びの中で,子ども達の挑戦的な経験がどのように子ども達を育て,そうした経験が何を発達させるのか調べることであった.第一クールは五月から七月まで行われ,テーマは月探険である.この第一クールからは「こどもクラブ」と呼ばれるメンバー制が採用され,12名の子どもが参加した.そこには年長5名,年中6名,年少1名が参加した.その内,7名が女児で,5名が男児である.大人は6名が参加した.その内,2名は宇宙研究所の研究員という主要な役割を担った.彼女らはプレイショップの始まりでは「こどもクラブ」の先生だが,途中から急に宇宙調査隊員に変身した.彼女たちは子ども達にとっては,現実世界と空想世界をつなぐ媒介者として存在した.劇化の中で,子ども達はいくつかのコンフリクトを経験し,現実と虚構,探険への不安と希望といった曖昧な状態に投げ込まれた.子ども達は劇化の中で自分達で問題を発見し,大人に助けられながらそれを解こうとした.本研究では劇化,集団討論,描画を通して子ども達がどのようにストーリーを組み換え,創作していったのか分析した.
著者
武元 英夫 BRESSOUD Dav 竹内 洋 瓜生 等 降矢 美彌子 安江 正治 前田 順一 渡辺 徹 花島 政三郎 LAINE James KURTHーSCHAI ルサン LANEGRAN Dav PARSON Kathl WEATHERFORD ジャック SUTHERLAND A 石黒 広昭 川上 郁雄 本間 明信 猪平 真理 森田 稔
出版者
宮城教育大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

マカレスター大学において研究協議を行い、意見交流を行った。協議では学内のカリキュラム担当者、学外における教育プログラム担当者等と話し合いが行われた。また、カリキュラムに関する資料や学外の教育プログラムに関する資料が収集された。広域情報教育について、発達しているアメリカのその実態をマカレスター大学との研究討議で、教育センターを訪れることによって見ることができ、いくつかの資料を得た。音楽についてはアジアの音楽での楽器の使用での大学でのカリキュラムの討議、数学のカリキュラムについても解析学や数学科教育の分野での討議したり、実際に講義に参加しアメリカ合衆国での現在の大学でのカリキュラムの見直しの実態に触れ、これからの日本の大学におけるカリキュラムの検討課題が得られた。また、環境教育のカリキュラムについても討議を行った。当初の予想以上の成果があったと言えよう。マカレスター大学は今後の国際化教育を進める上で日本を含むアジア・アフリカ等との交流を重視していくというのは、21世紀に向けた日本の大学教育を考える上で極めて示唆に富む点である。今後の研究を進める上で、どのように共同の視点に立って協議を進めて行くかが課題となろう。経済学教育の面で、特に、アメリカ側から眺めた日本の経済体制についての討議が行われ、金融状勢についての両国の見方、大学でのカリキュラムの導入の方法等において有意義な研究が行われた。コンピュータネットワークは予想どおり、我が大学よりもはるかに進んでいて、数年後の本大学の期待する姿をみたような気がする。
著者
宮崎 隆志 横井 敏郎 上原 慎一 石黒 広昭 藤野 友紀 間宮 正幸 大高 研道 日置 真世 武田 るい子 大高 研道 向谷地 生良 仲真 紀子 駒川 智子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会的に排除された若者の移行支援の課題を明らかにした。彼・彼女らの「生きづらさ」の背後には、生活世界を構成する諸コミュニティの断片化がある。したがって移行支援のためには断片化したコミュニティを再統合することが必要であるが、そのためには多様性が保障された新たな媒介的コミュニティを構築することが有効であること、およびそのコミュニティを中心にした地域的な支援システムを構想することが必要であることを明らかにした。