著者
今田 絵里香
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

(1)戦前日本の「少年」「少女」というジェンダーの解明 近代日本の都市新中間層の子どもイメージを「少年」「少女」という表象を手掛かりに解明するため、昨年度まで「少女」、今年度は「少年」という表象の解明に取り組んだ。方法として少年雑誌『日本少年』を分析した。その結果、1920年代は勉強・文芸というホワイトカラー的なイメージを都市新中間層の「少年」にふさわしいものとして示し、他の階層の男子と差異化していた。より文芸に力を入れる都市新中間層の「少女」とも差異化していた。しかし、1930年代、下層や地方在住の子どもを読者として取り込み、軍事・スポーツを示して成功を収めた『少年倶楽部』の勃興により、『日本少年』はホワイトカラー的なイメージを捨て去ろうとし、「センチメンタリズム」として「少女」に押しつけていく。このようなことがわかった。(2)少年少女雑誌の読者への聞き取り調査 かつての読者たちは高齢であるため、難航した。しかし、数人の読者に手紙のやりとり・電話でのインタビューなどの方法によって、当時のことを尋ねることができた。(3)戦後の「少年」「少女」というジェンダーの解明 戦後日本の「少女」という表象を解明するため、戦後の少女文化をリードした『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』を分析した。その結果、男女共学化の影響によって、男子禁制であった少女雑誌に男子が出てくることがわかった。「少女」にとっては「少年」とどう関係を築くかということが重要なものとなり、そのような男女交際のできる青春時代を「ジュニアの時代」と表象され、輝かしいものとして称揚されるようになったことがわかった。(4)西欧の「少年」「少女」文化との比較 PISAで高得点を取ったフィンランドは少年少女文化を支援するためのセンターが充実している。このようなフィンランドの取り組みについて調査をおこなった。
著者
今田 絵里香
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.185-202, 2002-05-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
11

This paper aims to clarify the image of the girl among the new urban middle class, which had a great influence in society, using analysis of the image of girls that appeared in mass-consumption culture, and especially which arose in the girl's magazine culture. In our analysis of columns in a girl's magazine, we assumed that the interaction between the editors of the magazine and its readers constructed the image of the girl in the magazine. Specifically, the readers' column of the magazineShojo-no-Tomofrom 1931 to 1945 was analyzed.The results are as follows. In the 1930s, a “girls network” among the readers was organized inShojo-no-Tomo.Through this network, readers corresponded with each other in the columns and met at regular readers' parties. The readers were united under the concept of girlishness, especially pureness, and for a concrete thirst for culture and arts. This girlishness, with its “purity, ” was constructed in opposition to the “dirty” “adults, ” and took precedence over adults. However, from the endof the 1930s, in the midst of the war, editors and the surrounding adults started to condemn “girlishness, ” and in response, the girls themselves changed their image to one of “Japanese girls” who served the country with patriotism. However, the image remained one constructed against “adults.”Therefore, there was continuitybetween the “girl” of the 1930s and the “Japanese girl” of that era.The process of change during the War indicates two facts. First, “girls” came tobe admired for their ability to work, and secondly, the idea of “girlishness” had become defective.
著者
神野 由紀 辻 泉 山崎 明子 溝尻 真也 中川 麻子 飯田 豊 塩谷 昌之 塩見 翔 松井 広志 佐藤 彰宣 今田 絵里香
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

大量生産の既製品が安易に購入できるようになった20世紀半ば、自己表現としての手作りが大衆化していく。本研究では雑誌調査などから、女性の手芸に対して男性は工作と呼ばれる手作り趣味が興隆した背景を明らかにした。男女の手作りは近代的なジェンダーの枠組みの中で、それぞれの領域を発展させていった。両者の関係は女性解放運動の影響、あるいは男性の家庭生活への接近などにより揺れ動きつつも、それを完全に越境することが困難な時代が続いた。しかし今日、こうしたジェンダーの枠組みを超えるような新たな手作りの文化も生まれてきていることも明らかになった。