著者
下條 太貴 廣瀬 等 Shimojo Taiki Hirose Hitoshi
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.22, pp.117-138, 2015

本研究は,児童の規範意識の発達について,学校・家庭・地域での活動が規範意識に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。調査では,小学生5ー6年生を対象とし,規範についてはTurielの領域特殊理論に基づき,規範を「道徳」「社会的慣習」「個人」の3領域に分けて詳細に検討した。下條・廣瀬(2015) の結果に基づき,その結果を実践的な場面において検討するため,家庭や地域が関わる,小学校における行事(運動会)を取り上げた。そして,家庭や学校,地域での活動の影響により,児童の規範意識の高まりの結果としての規範行動が行事(運動会)の前後でどのように変化するかを明らかにし,小学校における行事(運動会(5学年については組み体操, 6学年についてはエイサー))に関わる学校や家庭,地域での活動が規範行動に与える効果を検討し,明らかにした。
著者
平田 幹夫 Hirata Mikio
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.13, pp.11-24, 2006

本事例では、不登校に陥った小3児童(以後K子)の教室に掲示されていた「母の日の画」から心理アセスメントを行い、それをもとに母子カウンセリングを2回行った。面接においては、「動的家族画」、「動的学校画」、「家族が立っている画」「自由画」の描画テストを実施した。描画を解釈しK子の情動を母親に伝えたことによって、母親のK子への関わりに大きな変化が現れた。その結果、初回面接の翌日から学校復帰を果たした。また、K子の問題を契機に家族システムにも変化が見られた。その後、4年生から6年生にかけて年に1回の割合で描画テストを行いフオローアップを行った。K子は3年生の面接以降、6年生になるまで不登校になることはなかった。実施した描画テストを縦断的に分析した結果、家族システムの良好な変化が描画の変化として表出していることが明らかになった。本事例を通して、描画テストは子どもの内面世界を表出すると同時に、その活用は、カウンセリングにおいて臨床的に有効であると思われた。
著者
金城 昇 野原 賢一 Kinjo Noboru Nohara Kenichi
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.11, pp.45-60, 2004

本研究の目的は、病院(整形外科等)・リハビリ施設・整体・鍼灸・マッサージなどへの受診を繰り返す高齢者に動作法を適用することにより、このような高齢者の重複受診傾向の改善及び健康志向の向上の可能性について言及することである。沖縄県H町K区において、整形外科的障害はないにも関わらず、肩や腰、膝などの痛みによる重複受診傾向がある高齢者へ動作法を適用した結果、「病院や鍼・マッサージとは違う」、「自分でも痛いところは治せるんだねえ」、「自分で治すという気持ちが大事なんだな」などの感想が聞かれた。これらは、動作法を通して高齢者の心の中に「自分のからだは自分で治す」という意識が芽生えたことを示唆するものである。動作法の実施後、この意識の芽生えにより、肩や腰、膝などの痛みの発生に伴う種々の医療施設への重複受診傾向が改善された。さらに、「適度な運動に加え、日常生活での余分な緊張を解き、適切な姿勢を保っていくことで、自らの健康を維持・増進していく」という健康志向の向上を見ることができた。尚、本事例研究における高齢者への動作法の実践及び本実践報告の作成は主に野原が全面的に進め、補完的に金城がアドバイスしたものであることを付しておく。
著者
島袋 恒男 大城 房美 Shimabukuro tsuneo Oshiro fusami
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-104, 2012

高校教師が現在受け持っている「勉強ができる生徒」の抱く気持ちや考えを推測学習・対人・進路CAMI尺度を使って予測させた。その因子分析の結果、第1因子「未知の原因・運・他者の援助」、第2因子「努力・他者の援助」、第3因子「能力・運」、第4因子「未知の原因」を見出した。各因子と教師の成長性との相関分析の結果、勉強のできる生徒の、「教師の援助」や生徒自身の「努力」を強調する教師は、「教育指導への自信」や、「同僚・先輩・職場の雰囲気・生徒との関係や幅広い人間としての成長」の高いことがわかった。反対に、「教育指導への悩み」を感じている教師は、勉強のできる生徒に対して、なぜ勉強ができるのかその「原因がわからない」し、「運や能力や教師の援助」で説明しており、生徒自身の「努力」の過程を理解することができないということがわかった。そして性別、教職経験年数毎の分析を通して教師の予測する勉強のできる子の「推測CAMI」 と「教師の成長性」についての考察が行われた。
著者
吉田 安規良 小田切 忠人 Yoshida Akira Kotagiri Tadato
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.20, pp.133-158, 2013

2013年から4年制大学で本格実施される「教職実践演習」に先立ち、沖縄こどもの国と連携しながら「ドリームフェスティパル2012」という行事の企画・運営を主とする、特別活動の運営をモチーフとした試行実践を行った。受講した学生は「対人関係能力」や「協働体制の構築」の重要性を理解し、これらに代表されるこれからの教員として必要な資質能力を修得していたと判断できる。学生にとってこの取り組みそのものは達成感や充実感を味わえるものであり、今回の試行実銭は「教職実践演習」 の一形態として有効であると判断できる。しかし、とりわけ卒業研究との両立に際して負担感があることもわかった。
著者
平田 幹夫 Hirata Mikio
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.12, pp.15-26, 2005

本研究は、幼稚園から絵と作文を一度もかいたことがない小3男児に対して、Coと担任が連携しシングルセッションでカウンセリングを行った事例の経過報告と考察を目的としている。担任とシングル・セッション・カウンセリングの介入シナリオの検討を行い、以下のようなカウンセリングを行った。1.給食の様子を写真撮影に来た大学の先生という場面を設定を行った。2.笑顔で語りかけ、笑いを共有した。3.他の子どもより優れているところをみんなの前で誉めた。4.学級の仲間をカウンセリングの援助者に位置づけた。5.描画場面においては、描画に対する自己効力感を高めるために「他の人よりも感じる力があり、それを表現するすごい能力を持っている」と何度も伝えることを行った。その結果、絵を描けるようになり、短文ではあるが作文も書けるようになった。また、小3男児の描画について考察を行った。
著者
金城 昇 嘉陽 宗芳 野原 賢一 後呂 健二 金 福柱 Kinjo Noboru Kayoh Muneyosi Nohara Kenichi Ushiro Kenji Kin Fukutyu
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466038)
巻号頁・発行日
no.11, pp.61-85, 2004

2003年6月から7月にかけ、沖縄県内のS小学校4,5,6年生を対象に、ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育を行った。本実践は初めに、タバコの害や影響に関する知識を深め、それに基づきタバコの広告分析の授業、喫煙を勧められた際の良い断り方の習得を目指した授業へと系統立てて実施した。児童から出されたアイディアや授業後の感想をPPモデルで分析した結果、児童は喫煙による急性影響、長期影響、環境タバコ煙の影響についてそれぞれ理解し、その知識を基に家族とのタバコに関する対話がなされたことが示された。さらに、喫煙による事実とタバコ広告に隠されたテクニックとを対比し、その矛盾点を明らかにするとともに、喫煙を勧められた際に、相手を尊重しつつ自分の意思をはっきりと伝えるスキルの一定程度の習得がみられた。尚、本実践研究は、本学大学院教科教育専攻保健体育専修の科目である「保健体育科教育法特論」「保健体育科授業研究・教材開発」の一環として、S小学校から依頼のあった喫煙防止教育について院生が中心となり実践・分析・検討してまとめたものである。