著者
渡邉 真理子
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1_51-1_57, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

2007年に始まったサブプライム危機は,マクロ経済の成長鈍化を通じて中国に伝播した。銀行部門の海外取引は規制され,利益追求インセンティブも弱かったため,サブプライム証券への投資がわずかであったことが幸いした。しかし,中国政府は,大規模な財政拡大,金融緩和政策を打ち出し,急速に銀行与信が拡大した。中国経済は,高度成長期を終える前に,バブル期に一気に突入してしまった感がある。
著者
仙石 学
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.2_15-2_24, 2020 (Released:2020-09-04)
参考文献数
30
被引用文献数
1

東欧のヴィシェグラード4カ国では,2019年12月の段階でポピュリスト的な政党が与党の座にあるが,その経済政策にはポーランドの法と正義のばらまき型,ハンガリーのフィデスの擬似ネオリベラル型,およびチェコのアノの折衷型という相違がある.この政策の相違は,主として各国の政党間の経済政策をめぐる対立の形の違い,並びに各政党の支持を求めるターゲットの違いから説明することが可能である.
著者
堀江 典生
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1_81-1_95, 2009 (Released:2011-01-21)
参考文献数
50
被引用文献数
1

テイラー主義の導入と労賃制度近代化とともに発展した旧ソ連型職業分類は,現代ロシアにおいても,いまだに広く利用されている。旧ソ連型職業分類は,旧ソ連の仕事の世界の特徴を表すものである。本稿では,旧ソ連型職業分類の生成・発展を追い,市場経済化以後においても労働の現場,そして労務管理において機能している現状とその問題点を分析し,現代ロシア企業に根強く残る旧ソ連的な職務構造の転換の必要性を論じている。
著者
五十嵐 徳子
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.17-34, 2009
被引用文献数
1

本稿では,約70年間同じソビエト社会にあった,ロシア,グルジア,ウズベキスタン,そしてロシア国内のタタルスタンのジェンダーの状況を明らかにするとともに,今後のジェンダーの動向を予測している。分析に際しては,女性の就労と役割分担,そしてそれらに影響を与えているであろう各社会の有する規範に焦点を当て,「旧ソ連の共和国で大量の専業主婦は誕生するのか」という課題について考察を行っている。
著者
木村 雅則
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.11-24,95, 2006-02-28 (Released:2009-07-31)
参考文献数
27

ネップ期経済はパターナリズム,共同体的原理,組織的動員主義,階層間協調主義,近代合理主義をエレメントとして組成され,制度的には経済機関と労組の協議制を基軸とし,指令制や本来の市場と並存・補完関係にあり,共同体的諸関係を基底に配置する多元的体制であった。ネップ期後半の閉鎖化,高圧力化と共に社会階層は分断化され,強引な統合化によって強権的領導主義と社会的合理主義をエレメントとする指令制中心の体制に転換した。
著者
中兼 和津次
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_85-2_98, 2018

<p>現代中国政治・社会の統治構造の柱が,1)権力主義(権力の維持,拡大を最高目的とする思想と政策),2)エリート主義(意思決定は少数の選ばれた人間・集団によってなされるべきだとする思想と政策),そして3)実用主義(目的のためには手段を択ばないという思想と政策)という3つの大きな原理だと私は考えるが,それは空想から現実へと社会主義像が変転する中で生まれ,確立してきた原理であった.そのことを立証するために,1)ロシア革命とマルクス・エンゲルス,レーニンの空想的社会主義構想,2)スターリンによって実施されたソ連型社会主義経済の実態,3)中国に輸入されたソ連型モデルと毛沢東による修正,4)毛沢東の空想的社会主義理念とそれがもたらした結末,5)鄧小平による現実的経済体制の選択といった,社会主義像が空想から現実へと転換していく一連の過程とその結果について考察する.</p>
著者
吉原 直毅
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1_49-1_61, 2017 (Released:2017-05-17)
参考文献数
21

資本主義経済システムの原理的安定性は,拡大的資本循環の長期的継起性に関わり,「利潤率低下法則」問題として論じられる.本論では,マルクスの利潤率低下法則論への置塩定理(1961)による批判,及び同定理への近年の批判的議論を概観しつつ,今後の資本主義経済システムの継起性は,新たな資本の拡大的循環を確立させる技術革新に依拠すると同時に,それは人類の持続可能な福祉的自由の発展の方向性とは相容れない可能性を指摘する.
著者
吉井 昌彦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_51-2_57, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
14

中・東欧諸国における政府-企業間関係は,EU 加盟交渉の中で,EU の競争・産業政策に準拠することが求められたため,国家支援,投資優遇措置等はむしろ既加盟国を下回る水準にまで低下してきた.もちろん,政府と企業の間に汚職などの非公式な関係が残っていることは否定できないが,これらの非公式な関係は,欧州委員会の政策により矯正され,中・東欧諸国の政府-企業間関係は,旧ソ連諸国と比べて,希薄なものとなるであろう.
著者
大田 英明
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.59-66, 2010

2008年秋の金融危機以降,EU に新たに加盟した欧州移行諸国は,直接投資および資金流入の激減と急速な資本流出によって打撃を受けている。こうした中,IMF による通貨制度設計、経済調査・分析能力,さらに従来の緊縮プログラムを緊急時の政策として適用することが問題点としてあらわれている。EU 新加盟国は通貨制度,自由化の見直し,資本取引の監視・監督体制の強化をEMU参加の前に再検討する必要がある。
著者
日臺 健雄
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1_19-1_31, 2015

近年,ロシアや中国など新興国の経済発展を「国家資本主義」概念を用いて分析する研究が増加しているが,そこでは理論的な検討が不十分なままに当該概念が用いられる傾向にある.本稿では「国家資本主義」概念について,経済理論として初めて用いたヒルファディングから,革命後のロシアに適用したレーニンを経て,発展途上国に適用した日本の「国家資本主義論」学派に至る理論的な系譜を,学説史的な観点から概観していく.
著者
小山 洋司
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_39-2_49, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
32

中東欧の経済危機の諸相を概観したうえで,バルト諸国,とりわけラトビアに焦点を当て,経済危機の原因を考察する.2004年の EU 加盟の前から賃金が急上昇した.金融面では北欧の銀行が進出し,シェア競争をし,消費ブームを煽った.すでに2005年には経済は過熱の兆候を見せていたが,政府の対応が遅れた.2007年春に引き締め政策に転じ,同年12月に経済は不況に陥ったうえに,2008年 9 月のリーマン・ショックが追い打ちをかけた.
著者
高屋 定美
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_27-2_37, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
15

本稿では,米国のサブプライム危機から派生した欧州の金融・経済危機の構造的要因を分析している.構造的要因として,経済構造の相違があるままに単一通貨を導入したことや,金融統合によって欧州の金融機関の競争環境が激化したこと,そして中東欧諸国への EU 拡大などが挙げられ,それらを実証的に解明している.さらに欧州中央銀行,欧州委員会ならびに,各国政府が行っている危機対応の経済対策について展望している.
著者
木村 光彦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1_27-1_38, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
19

戦後北朝鮮は軍事工業化をすすめた。そこでは対外物資調達,技術導入が重要な役割を果した。国民は貧しく,1960年ごろの米穀消費水準は韓国より低かった。
著者
奥田 宏司
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_15-2_26, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
17

小論ではドル体制とはどのような体制であるかを規定したうえで,ドル体制の現局面を明らかにしたい.オイルマネーの米への還流,EU,日本等の対米投資の「復活」も厳しいとすれば米経常赤字のファイナンスは厳しく,ドル体制は不安定さが増していくだろう.また,「ドル離れの兆候」がいくつかみられる.ロシアも含め全欧州においてユーロの地位が高まってきており,湾岸諸国においてドル・ペッグ制が継続されるか予断を許さない.
著者
横川 和穂
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_1-2_14, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1

本稿では,ロシアで2003年に制定された新地方自治法とそれに基づく改革が,地方自治体財政に如何なる影響をもたらしたのか,とくに政府間機能配分および税源配分という側面に注目して考察した.財政学で標準的とされる理論に照らした評価,および諸外国との国際比較を通して,ロシアではより標準的なルールの形成と中央集権化の強まりというプロセスが並行して進んでいる点に,現在の制度構築の特徴があることが確認された.