著者
里村 大樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_209-I_214, 2015

近年,海上輸送・港湾分野において保安対策が強化されている一方,港湾のコンテナターミナルではゲート処理の時間短縮が課題となっている.そうした中,2014年7月1日から三点確認が義務化された.<br> 本研究では,三点確認義務化によりコンテナターミナルのゲート前の渋滞悪化が懸念されたため,現地調査を行った.また,今後,保安対策が強化された場合におけるゲート処理の円滑性確保策を検討した.現地調査を行ったコンテナターミナルでは,三点確認義務化による渋滞の悪化は確認されなかった.しかし保安対策が強化されてコンテナ搬入の処理時間が仮に5分長くなる場合を想定したシミュレーションの結果,現状設備ではオーバーフローするが,ゲート処理を多段化すること等でオーバーフローを回避でき,ゲートイン処理が効率化できる可能性が確認できた.
著者
山田 浩章 松下 泰弘 井岡 良太 平野 辰昇 川口 浩二 猪股 勉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_19-I_24, 2015
被引用文献数
1

GPS海洋ブイは,現在,国土交通省港湾局のナウファスの「GPS波浪計」として日本全国に18基設置され,沖合の大水深海域で波浪の定常観測を実施している.GPS海洋ブイは津波観測も可能であり,東日本大震災による大津波発生時には,岩手県釜石沖などに設置されていたGPS波浪計が津波を観測し,気象庁の津波警報の更新に利用されたが,津波をより早期に観測するには更に沖合にGPS海洋ブイを設置する必要がある.しかし,従来のGPS海洋ブイではGPS測位法と無線通信によるデータ伝送の制限から設置可能距離は沖合20km程度までであった.本稿では,更なる沖合観測のために開発した新型GPS海洋ブイの概要と実海域での実証実験の状況について報告する.
著者
後藤 浩 前野 賀彦 竹澤 三雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_790-I_795, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
9

平成22年度のレジャー白書によれば、海水浴は多様なレジャーの台頭により減衰傾向にはあるものの、我が国の余暇活動の項目の中で重要な地位を占め、平成21年度には年間延べ約1680万人の人々が海水浴場を訪れているとの報告がなされている。人にとってはトイレの利用は不可欠で、公共の場所である海水浴場においても適切にトイレ施設が設置されている必要がある。また、近年、人々の衛生に対する期待の高まりから、いずれの場所においても快海水浴は多様なレジャーの台頭により減衰傾向にはあるものの、今なお我が国の余暇活動の項目の中で重要な地位を占めている。人にとってはトイレの利用は不可欠で、海水浴場においても適切なトイレ施設が設置されている必要がある。また、近年、いずれでも快適にトイレが利用できることが常となってきており、海水浴場に設置されるトイレ施設も例外とはならないと考えるが、必要なトイレ施設数などや既設トイレの管理方針としての清掃の時間間隔の決定などについては不明確な点が多い。本研究では、首都圏近郊の海水浴場を選択し、公衆トイレを利用した人にトイレ利用に関する聞き取り調査を実施し、トイレの清潔度および清掃回数、トイレまでの最適距離、設置するトイレ施設の数などの推算を試み、海岸における環境衛生施設の改善策を考察した。適にトイレが利用できることが常となってきており、海水浴場に設置されるトイレ施設も例外とはならないと考える。しかしながら、トイレ施設の設置方針としての必要なトイレ施設数などや既設トイレの管理方針としての清掃の時間間隔の決定などについては、著者らの知るところによれば、東京都福祉保健局が公共トイレ設置に関して指針を提示しているのみで、検討の余地がある。本研究では、現状把握のために、首都圏近郊の日帰りの海水浴客が大多数を占める3つの海水浴場を選択し、公衆トイレを利用した約1000名の人にトイレ利用に関する聞き取り調査を実施した。そして、利用者が感じるトイレの清潔度および清掃回数、利用者からトイレまでの最適距離、設置するトイレ施設の数などの推算を試み、海岸における環境衛生施設の改善策を考察した。
著者
岡田 知也 古川 恵太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_31-I_36, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
9
被引用文献数
1

東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって,干潟・浅場は大きく地形変形し,藻場は消失するなど,宮古湾(岩手県)の生態系は甚大な影響を受けた.著者らは,アマモ場に着目し,アマモ,地形および底質環境を合わせた総合的な環境復元過程を検討すること考えた.本研究では,宮古湾において,アマモ場の復元のための初期の情報として底質の状況を把握することを目的とした.調査は2011年2月と10月に行った.2月調査により,津波被害後のアマモ場を,底泥の粒度分布からアマモ生育の適性度を評価し,3つにゾーニングした.10月調査では,ゾーニングに基づいて空間的に密な調査を実施し,詳細な底質およびアマモの分布状況を把握した.この底質の分布データは,今後の底泥およびアマモの回復過程の初期データとして有用となる.
著者
村上 啓介 前原 翔太 椎葉 倫久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_707-I_712, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
11

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波被害を教訓に,南海トラフ域を中心とした地震による被害想定と防災・減災対策の見直しが西日本の沿岸地域で進められつつある.宮崎県の沿岸自治体においてもマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震による甚大な人的・物的被害が想定された.人口と経済活動が集中する宮崎市では,低平地に市街地が広がることや沿岸域に住宅地や商業施設が展開する傾向にあることから,想定される津波に対して確実な被害軽減策を講じることが喫緊の課題となっている.本研究は,現実に即した津波避難対策を合理的に講じることを目的に,津波浸水域の時間的広がりと地盤の液状化を考慮した津波避難困難エリアの抽出法と具体的な適用例を示す.
著者
宮田 康人 松永 久宏 薮田 和哉 林 明夫 山本 民次
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_564-I_569, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
14
被引用文献数
4

塊状製鋼スラグの生物着生基盤機能の長期的検証を行うことを目的として,2002年3月に広島県因島の海域において造成した塊状製鋼スラグ潜堤材について,9年後(2011年)まで追跡調査を行った.その結果,製鋼スラグ潜堤材には,施工1年後から9年後の調査まで海藻の着生種数は,天然転石と同等もしくは同等以上であり,また時間とともに種類数が増加傾向であったこと,魚類,メガロベントス,マクロベントスが天然転石と同程度に着生したほか,絶滅危惧種として隣県の岡山県レッドデータブックに掲載されているマクロベントスも観察されるなどの知見が得られた.以上の結果から,製鋼スラグ潜堤材は,海藻着生場,底生生物生息場,および魚類の蝟集の場などとして施工から9年間にわたり機能が継続していることから,製鋼スラグ潜堤材の有用性が確認された.
著者
山田 吉彦 川上 哲太朗 川崎 一平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_402-I_407, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
8

海洋立国を目指す我が国では, 2007年に海洋基本法を制定した. この海洋基本法では, 地方自治体が同法の理念にのっとりその自然的社会的条件に応じた施策を策定することになっている. この法に従い竹富町(沖縄県)は, 独自に竹富町海洋基本計画を策定し, 海洋環境の保全と海洋の利活用を進めてゆく方針を固めた. また, 隣接する石垣市ではさらに海洋開発, 海洋保護区の設定も視野に入れた計画を策定することとなった. 海洋都市を意識する地方自治体は, 海洋基本法のもと,海洋とともに地域社会の将来像を構築しつつある. この地域における海洋基本計画は, 海洋基本法の理念が国民に定着するための指針となりえる.