著者
井山 繁 西岡 悟史 宮田 正史 米山 治男 辰巳 大介 木原 弘一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_809-I_814, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
9

船舶が係留施設へ接岸または離岸する際の繋離船作業(船舶と陸上作業員の間で係留ロープを受け渡す作業)は港湾利用を支える基礎的な活動であるが,何らかの要因により係留ロープの切断事故が発生すると,繋離船作業等に重大な危険を及ぼす懸念がある.また,繋離船作業のうち陸上作業員が係留ロープを係船柱に掛け外しする作業では,それらの作業が安全かつ効率的に行われるように改善を図っていくことは重要な課題である.本研究は,繋離船作業の安全性の向上を図ることを目的として,過去の繋離船作業における係留ロープの破断事故の整理・分析を行うとともに,陸上作業員からのヒアリング等を踏まえて,繋離船作業の安全性に影響の大きい係留施設の附帯設備(係船柱,防舷材,車止め等)の設計の際,配慮すべき事項について検討したものである.
著者
宇都宮 智昭 佐藤 郁 白石 崇 乾 悦郎 石田 茂資
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1-I_6, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

わが国における洋上風力の導入ポテンシャルは膨大であるが,水深50m以上の海域におけるポテンシャルがその大半を占めている.この膨大なポテンシャルを活かすためには,浮体式洋上風力発電の実用化が必要となる.しかしながら,浮体式洋上風力発電は世界的にもまだ実証段階であり,わが国における浮体式洋上風力発電の早期実用化を図るため,平成22年度から環境省により浮体式洋上風力発電実証事業が開始されることとなった.本論文では,本実証事業の概要とこれまでの主な成果を紹介する.
著者
野口 孝俊 内藤 裕之 守屋 典昭 眞鍋 匠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_990-I_995, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

東日本大震災では,地震による被害に加え,大規模な津波により貨物やがれき等が大量に港内に流入し,航路や泊地を閉塞したため,港湾機能が一時完全に麻痺する事態となった.東京湾に東日本大震災級の大津波が来襲した際には,首都圏の機能を麻痺する被害が想定されるが,緊急避難物資輸送を行うための航路の早期啓開は必要不可欠である.本稿は,啓開を行うための海底障害物の形状,寸法,および座標などを早期に把握できる4Dソナーシステムの実用性を現地確認し,航路啓開技術としての有効性について評価したことを報告する.
著者
門廻 充侍 高橋 智幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_545-I_550, 2015
被引用文献数
1

2011 年東北地方太平洋沖地震津波(以下,東北津波)により我が国は甚大な被害を受けた.想定が過小評価であったことを踏まえ,新たに大すべり域および超大すべり域を考慮した断層モデルが様々発表されているが,位置や形状に関する標準的な考え方は定まっていない.門廻・高橋<sup>1)</sup>は大すべり域および超大すべり域の不確かさを多数津波シナリオに導入する汎用的なモデルを提案しているが,破壊開始点や複数の大すべり域および超大すべり域,地震規模の不確かさが考慮されていない.そこで本研究では,これらを考慮した新たなモデルを提案した.そして,南海トラフの巨大地震津波を例として,具体的なシナリオの設定手順を示した.また,多数津波シナリオの防災への適用例として,湾内での津波増幅や津波警報解除に関係する津波波源に起因する卓越周期を検討した.
著者
鈴木 高二朗 河合 弘泰 仲井 圭二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_926-I_931, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
5

南関東沿岸の異常潮位に関する研究を行った.異常潮位はその継続時間によって2種類に分類できる.継続時間が短い異常潮位に関しては,銚子付近における北系の強風と高波が異常潮位の生成に重要な役割を果たし,異常潮位は南関東沿岸を伝播する.継続時間の長い異常潮位に関しては,黒潮の離岸距離が異常潮位の大きさと関係している.野島崎から黒潮までの距離が近いほど,異常潮位は発達する傾向がある.
著者
吉岡 健 坂本 登 川口 浩二 永井 紀彦 仲井 圭二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_808-I_813, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
5

北九州市沖海域では現在,洋上風力発電設備の合理的な計画・設計に資することを目的とした実証研究が進められている.本稿では特に他海域(ナウファス各地点)との比較に主眼を置き,洋上風車の維持管理に重要となるアクセス性すなわち静穏度について,太平洋側と日本海側で季節によって大きな違いがあることを示す.続いて,支持構造物の耐波・耐風設計に重要となる両作用の同時生起性について,擾乱毎の有義波高と10分平均風速の相関係数を調べるとともに,両作用の簡易な組合せ方法を提案する.
著者
琴浦 毅 森屋 陽一 関本 恒浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_959-I_964, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
10
被引用文献数
4

海上作業を伴う海洋工事では,高度化されつつある気象モデル,波浪推算モデルを用いた予測結果が作業可否判断に利用され始めている.しかし,波浪推算モデルの推算精度に関しては,外洋部での高波浪に着目して検討されたものが多く,海上作業の可否判断である波高1m程度の精度の検討は多くない.また,瀬戸内海は多くの島嶼が存在し,波周期が短いことから高精度モデルでの検討が望まれるが,高精度モデルは計算時間が多くかかり,作業可否判断予測に活用するには実務的とは言えない. 本研究では瀬戸内海を対象として,気象庁GPV海上風データを入力とし,波浪推算モデルとしてWAMモデルを用いた波浪予測を実施するとともに,海上作業可否に着目して風・波浪の予測精度を検討し,実務的に妥当な予測精度を得るために必要な条件を明らかにした.
著者
井内 国光 山口 正隆 野中 浩一 日野 幹雄 畑田 佳男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_247-I_252, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
12

第3世代波浪推算モデルSWANの特性を調べるため,一様風とstormの各条件に対して波の発達・減衰式と海面抵抗係数Cdや時空間解像度を変えた計算を行った.主要な結果として,一様風条件に対し 1) 摩擦速度u*表示の無次元エネルギーε*と無次元吹送距離F*の関係は発達・減衰式の種類により相違し,いずれのε*も経験式による値を上まわる.とくにJanssen式は最も大きいε*を与える.ε*-F*関係に及ぼすCd式の影響は無視しうる.2) ε*-F*関係に及ぼす風速U10の影響はみられない.また,ピーク周期と平均周期の間の勾配値は経験値1.1に近い値をとる.storm条件に対し 3) 各種パラメータ条件下のSWANは高い精度を与えるが,最大波高へのCd式や発達・減衰式の影響はある程度有意である.4) 空間解像度の影響はみられないが,計算時間間隔の影響はJanssen式の場合に有意である.
著者
中嶋 道雄 前田 庫利
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_534-I_539, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
5

港湾工事でBIM/CIMの取り組みが活発化してきている現状であるが,施工方法の確認や施工手順の検討をディスプレイやタブレットにより作業員や技術者へ周知している状態である.BIM/CIMの利点は工事前のシミュレーションによって施工不具合個所の発見や危険個所を発見・改善する事であり,モデルや確認する方法が現実との乖離が少ないほど,これらを発見する事が可能であると考えられる.ここではBIM/CIMデータをVRによって上記の改善活動を実際に行い,その際に行った開発方法を示した.また現場での実際に実施した中で,現実との乖離が少なくなるようなモデル配置や,仮想空間に必要なオブジェクト等を取りまとめた.またこれらから発見した課題等を示す.
著者
田中 理久 島田 良 石川 仁憲 小峯 力
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_1019-I_1024, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
9

全国約200箇所の海水浴場におけるレスキューは2,000~3,000件/年であり,毎年多くの溺水事故が発生していることから,ライフセーバーには重大な事故に繋がる前の迅速な救助が求められる.しかしながら,繁忙期は,数万人の利用者に対して数十人のライフセーバーで活動を行っていることから,すべての溺水に対して迅速な救助は難しい.一方,近年はAIを活用した技術開発が進んでおり,AIが溺水者を自動検知することができれば,監視体制の強化に繋がると考えられる.そこで,本研究では,溺水者を自動検知するAIの開発を試みた.AIモデルにはYOLOv3を用いた.教師データには室内,屋外,海水浴場の3箇所の計12,326枚の画像データを用いた.AIによる溺水者の検知精度を評価した結果,F値は0.7~0.9程度であり,AIによる溺水者検知の可能性を示すことができた.
著者
東 さやか Nasroden PAGAYAO Maria Antonia N. TANCHULING 日比野 忠史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_929-I_934, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

パシッグ川はマニラ首都圏の中心をラグナ湖からマニラ湾に向かって東西に流れている.下水処理施設の未整備によりパシッグ川の支流・水路には生活排水が直接流入し,47の支流・水路では過剰な有機物により著しい水質汚濁の問題がある.本論文ではパシッグ川支流の水質特性と直面する問題についてまとめた.その結果,雨と潮位変動に伴った流れが支流・水路でのBOD,CODの持空間の分布を変化させていること,CODが平均的に100を越え,BOD/CODが1/2程度に分布する水塊には,常時のBOD(生活排水)の流入に加え,底泥からのCODの拡散が年を通して継続的に起こるため,CODには底泥起源の還元物質の含有率が高いことを明らかにした.
著者
鮫島 和範 仲井 圭二 内藤 了二 川口 浩二 額田 恭史 橋本 典明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_527-I_532, 2018 (Released:2018-09-12)
参考文献数
7

副振動について,これまで余り注目されなかった周期と振幅との関係に関する解析を行い,平均周期が大きい地点ほど,無次元振幅の散らばりが小さいことが分かった.また,無次元周期の出現頻度が高い階級では,無次元振幅の平均値は周期や地点に依らず1に漸近する.仲井ら1)2)は,気象庁の振幅5 cm以上の観測資料を用いて,個々の副振動の出現特性を示す確率密度関数の形等により,全国の地点を3種類に分類した.本研究では,港湾局の5地点において観測されたデータを対象に確率密度関数を算出したところ,気象庁のA群の形とほぼ一致した.平均振幅が小さい地点について,5 cm以上のデータだけを用いて確率密度関数を計算すると,真の確率密度関数からずれるということを仲井ら2)は指摘していたが,このことが港湾局のデータにより確認できた.
著者
野志 保仁 宇多 高明 清水 達也 熊田 貴之 冨澤 和雄 川瀬 栄 下木 豪
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1209-I_1214, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
2

九十九里浜南端部に位置する一宮海岸は有名なサーフスポットのひとつである.とくに一宮海岸に設置されている7~10号ヘッドランド間では,夏季の南東からの入射条件下でサーフィンに都合のよい波が立つと言われている.本研究では,太東崎沖に発達する広大な岩礁帯(器械根)による屈折回折効果を波浪場の計算により検討することにより,当該区域のサーフスポットの成立理由を明らかにした.この結果,夏季には,沖合にある器械根による屈折・回折が著しいことから,一宮川河口から太東漁港までの全域でサーフィンに都合のよい波が立つことが分かった.
著者
安野 浩一朗 岩塚 雄大 西畑 剛 古牧 大樹 森屋 陽一 伊野 同
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_90-I_95, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災は,今まで築き上げてきた構造物の設計における考え方や手法などの妥当性を根底から改める必要性を投げかけられるものであった.これまでは,一定の想定設計値に対する安全性を確保することのみを対象に構造物を設計してきたが,外力が想定を越えた場合の構造物の変形に関する知見は殆ど蓄積されておらず,それらに関する知見の構築は今後の重要な課題と考えられる.本研究では,外洋護岸に設置された消波ブロック群に着目した水理模型実験を行い,設計津波を越えた津波外力場におけるブロック群の大規模被災の形態,そのメカニズムや想定される周辺への影響などについて基礎的な知見を得ることを目的とした.
著者
澤井 泰基
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_827-I_832, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
8

造成したアマモ場をモニタリングにより事業評価し,その結果を後々の造成活動に反映していくことは重要である.アマモ場のモニタリング手法は,コドラード法による調査手法が用いられるが広大な群落をモニタリングするには労力が大きい.これに対して,衛星リモートセンシング,航空機,バルーンやドローンによる空撮画像から藻場を分類する研究が取り組まれている.RGB画像からアマモ場を判別する際には教師付分類による閾値法が用いられるが,計測者の経験に依存する部分が大きく,藻場抽出に時間的な労力を要する.本研究ではドローンによる空撮画像からのアマモ場抽出について従来の手法で問題となっていた解析時間と人為的な誤差を,領域ベースのSnake法を用いることで短時間かつ人為的誤差の少ない高精度な解析手法を検討することを目的とする.
著者
安田 公昭 本巣 芽美 深田 亮平 永井 紀彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_1-I_6, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本稿では,洋上ウィンドファーム事業を推進するため必要となる合意形成と行政手続きについて,岩船沖洋上風力発電事業を事例として,現状の課題を示し,課題解決のための提言を行った.当該事業と漁業との共生の将来像を明らかすることをめざして,合意形成のための研究会や市民および漁業者との話し合いの中で,事業者による売電収益の地元還元の具体的な方法を検討し,スキームをとりまとめた.予定海域に港湾法を活用する可能性を視野に入れ,事業者の選出までを村上市で責任を持って実施する体制を考案した.すなわち,村上市に推進委員会を設置することを条例で定め,同委員会のなかに評価委員会をおいた.評価委員会は,FSの手順書を作成し,その手順書に従って村上市は事業者を公募した.
著者
中野 敏彦 宮田 正史 清宮 理 菊池 喜昭 岩波 光保 下迫 健一郎 鈴木 高二朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_312-I_317, 2018 (Released:2018-09-12)
参考文献数
6

旺盛な需要が見込まれる開発途上国のインフラ整備に対応して,インフラの品質を確保し,日本のインフラ輸出に寄与するため,技術基準の整備が重要である.一方,日本の港湾設計基準は,国内基準の進化により途上国で求められる技術水準や自然条件との相違が大きくなる傾向にあり,そのままでは途上国での適用・普及が難しくなっている.このため,日本の港湾設計基準を相手国の自然条件等の事情に合わせて調整した上で,相手国の基準として利用してもらうという新しいアプローチが重要である. 本研究では,日本とベトナムとの間で行われたベトナムの港湾の新しい国家技術基準の共同策定を通じて得られた知見から,設計において重要となる設計条件の設定方法について,潮位,波浪,地盤,耐震設計等の相違点とその調整方法と課題について論じる.
著者
園田 吉弘 滝川 清 荒巻 智子 川崎 信二 齋藤 孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1164-I_1169, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1981~2008年の東シナ海北部海面水温,有明・八代海海域の水温,塩分,潮位および周辺陸域の気温,流入河川の流量データを用いてMann-Kendall検定,均質性検定等の統計解析を行い,東シナ海北部海面水温および気温と有明・八代海の水温の関連性,潮位変動と水温変動の関連性,塩分と流入河川の流量の関連性を検討した.検討の結果,有明・八代海海域の水温変動は,東シナ海北部の海面水温,周辺陸域の気温の変動の影響を強く受けており,その傾向は八代海でより顕著であることがわかった.また,潮位の上昇は,水温の上昇と同時かあるいはやや遅れて出現しており,水温変動が潮位変動の要因の一つである可能性が示唆された.有明・八代海湾口部の塩分の経年変動に,筑後川,球磨川からの河川流量の経年変動の影響が現れ,特に,梅雨期においてその傾向が顕著である.
著者
仲井 圭二 橋本 典明 額田 恭史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_318-I_323, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

副振動は西日本での出現が話題になることが多いが,全国的に発生している現象である.しかし,全国での出現特性を調べ,その海域特性について検討された例は少ない.そこで,本研究では,気象庁の検潮所における観測資料を用いて,全国沿岸における副振動の出現特性を調べた. 副振動の出現回数の経年変化は,地点によって異なり,近傍の地点でも必ずしも良く似ているとは限らない.逆に距離が離れていたり,海域が異なったりする2地点でも,特性が似ている場合がある. 一方,出現回数の季節変化をみると,北海道や沖縄,内湾の一部を除き,全国的に非常に似た特性を示す.副振動の原因となる低気圧や台風の影響は,毎年局地的に変動するが,長期間を通してみると,全国的にほぼ同じであるということができる.
著者
宇野 宏司 廣瀬 裕基
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_996-I_1001, 2014
被引用文献数
1

南海トラフ巨大地震による津波で大阪湾圏域の沿岸部には大きな被害が及ぶことが懸念される中,緊急避難場所としての駅舎利用や堤防としての機能発現など,沿岸部の鉄道インフラ施設を活用した防災・減災が期待される.本研究では,大阪湾圏域沿岸部を走るJR阪和線・紀勢本線(天王寺~串本),阪神本線・なんば線(三宮~大阪難波),南海本線(難波~和歌山市)の路線構造や駅舎(全149駅)の標高・構造を調査するとともに内閣府の中央防災会議のモデル検討会で示されたシミュレーション結果を活用することによって,現時点での想定津波に対する浸水可能性を検証し,鉄道施設による津波防災・減災効果を明らかにした.また,大阪湾圏域の鉄道インフラ施設による津波防災・減災対策の現状と課題を整理した.