著者
村上 啓介 北村 翔一郎 真木 大介 竹鼻 直人 岩田 恭平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_670-I_675, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8

効果的な防波機能と十分な耐波安定性が得られる構造形式の一つとして,防波堤や護岸天端のパラペット部を後退させた構造形式(後部パラペット)が提案されている.本研究では,後部パラペットにフレア断面を採用する新たな構造を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,数値シミュレーションを実施し,フレア断面を有するパラペット部に作用する波圧と波力について検討した.後部パラペットにフレア断面を採用することで,従来の直立断面パラペットと比較して少ない後退量で越波を低減できることを確認した.また,フレア断面のパラペット部に作用する水平波力は,パラペットを後退させることで低減され,下向きの鉛直波力は増大することを示した.
著者
村上 啓介 前原 翔太 椎葉 倫久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_707-I_712, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
11

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波被害を教訓に,南海トラフ域を中心とした地震による被害想定と防災・減災対策の見直しが西日本の沿岸地域で進められつつある.宮崎県の沿岸自治体においてもマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震による甚大な人的・物的被害が想定された.人口と経済活動が集中する宮崎市では,低平地に市街地が広がることや沿岸域に住宅地や商業施設が展開する傾向にあることから,想定される津波に対して確実な被害軽減策を講じることが喫緊の課題となっている.本研究は,現実に即した津波避難対策を合理的に講じることを目的に,津波浸水域の時間的広がりと地盤の液状化を考慮した津波避難困難エリアの抽出法と具体的な適用例を示す.
著者
杉尾 哲 神田 猛 西脇 亜也 森田 哲夫 村上 啓介 伊藤 哲
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

温暖多雨の亜熱帯性気候下にある宮崎県の南半分に位置する宮崎県内の5河川と沖縄県内の5河川を調査対象河川として、工改変による河川環境への影響を定量的に評価し、さらに河川環境の復元を予測する手法について検討した。このうち、宮崎県県最南端に位置する千野川においては治水と環境保全を調和させる川づくりが実施された。そこで本研究では、生態系の生息環境が整った区間における生態系の相互作用の検討と、河川改修が進んだ区間での河川改修による河川環境へのインパクトに対する生態系のレスポンスについての継続的なモニタリングを実施して物理環境と生態環境の両面から定量的に計測し、これらの結果から河川環境システムを総合的に評価することとした。その結果、千野川の旧河道の土壌環境は、高位・低位法面と河床堆積面の中間的な性質を保持していたこと、新河道においては、植生は旧河道の種組成を復元していたが次第に外来種が繁茂する傾向にあること、鳥類は9目23科52種が観察されて千野川が水鳥・水辺の鳥にとって良好な採餌場になりつつあること、小型哺乳類はイタチが捕食の場として利用しうる段階まで復元したこと、ホタルの飛翔はこれまでとほぼ同じ数を保持できていて、ホタルは新河道で生活サイクルを完結させていること、などが確認された。しかし、他の河川を加えて千野川の河川環境を総合的に評価した結果、千野川の新河道は、化学的環境に特徴を持ち、日常的な人間活動によって十分に影響を受けた箇所に分類された。また物理的環境は、深掘れが発生したことによって比較的に良くない状態であることなどが判明した。このことから、河川改修による河川環境へのインパクトを受けた河川での環境の形成には、モニタリングを継続して物理的環境を改善するなどのフォローアップが必要であることが分かった。
著者
原田 隆典 村上 啓介
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

剛性マトリックス法による震源・地震波伝播過程の定式を一般化することに成功した。コンピュータプログラムを整備し、試算例として、震源断層の深さや表層地盤の厚さによって、断層による永久変位を含む地表の地震動の時間・空間分布特性がどのように変わるかについて調べ、表層地盤の厚さや、断層上端の深さが重要な要因であることを明らかにした。地表面の動きを3次元的に視覚化し、震源域の地表面の動きは、台風時の雲の動きのように渦を巻いていることを始めて示すことができた。地表面の水平・鉛直方向の3成分変位に関する運動と共に地表面の傾きや回転に関する運動の3成分波形が大きくなるなど従来あまり知られていない地震動特性に関する成果を得ることができた。断層近傍に典型的な都市高速道路の連続高架橋とパイプラインを想定し、3次元非線形応答解析を実施し、その応答挙動を調べた。断層に平行なケースや横断するケース、回転地震動の影響を調べた。その結果、断層を横断する連続高架橋とパイプラインにおいても、断層上に表層地盤が存在する場合(断層が地表に現れない場合)には、応答を崩壊限度内に抑えることが可能であるが、断層が地表に現れるような場合には、断層を横断するケースで、応答は崩壊限度を大きく超え、特に、連続高架橋の橋脚に大きなねじりモーメントが発生することを示した。長波理論に基づく津波シミュレーションコードの改善を行っい、日向灘地震(1968年)、南海地震(1854年)による津波高記録と計算結果を比較し、計算精度の妥当性を確認した。また、日向灘地震については、沿岸構造物への津波の波力を計算するプログラムを開発した。試算例では、波力と地震力を比べると、波力は1/10程度と見積もられる結果であったが、条件を変えた試算例も実施する必要がある。
著者
入江 功 滝川 清 小島 治幸 吉田 明徳 浅野 敏之 渡辺 訓甫 富樫 宏由 後藤 智明 村上 啓介 佐藤 道郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本調査は、平成10年から12年の3年間をかけて、九州各県にある九州大学,佐賀大学,長崎大学,熊本大学,鹿児島大学,宮崎大学,大分日本文理大学,九州共立大学,東海大学(静岡),東和大学などの大学が協力体制をつくり、(1)各大学が所在する県の海岸を対象に、海岸の景観・利用・防災に関する共通のアンケート用紙でサーベイし、(2)既往最大級の津波・高潮による浸水域を求め、これをとりまとめるものである。本調査が計画検討されていた平成10年頃には、既に次年度発足へ向けての海岸法の改正が検討中であり、学識経験者の海岸の開発保全に対する意見が要請される趨勢にあった。このため、少なくとも各大学の所在する地域の海岸については、十分な知識と理解を持っておくことが重要であると認識され、まず海岸の「防災」「環境」「利用」について、九州全域の海岸のサーベイを行うことになった。同時に九州沿岸は、南西域の津波、内湾および北部域の高潮に脆弱な海岸が多いため、津波計算、高潮計算をベースに沿岸の自然力に対する危険度をハザードマップで認知する手法を検討した。まず、海岸環境のサーベイにおいては、多くの評価項目から厳選した55項目を用い、各大学所属県の海岸を現地踏査した。その際撮影した海岸の写真画像を用い、別途写真画像のみで同じ55項目の評価項目で評点をつけ、現地踏査と写真画像とで評価結果がどの程度異なるかを主成分分析により調べた。その結果、両者の違いはほとんどないことが分かったので、今度は九州全海岸127地点について、写真画像のみを用い、17名程度の学生・職員により海岸環境の相対評価を行った。また、ハザードマップの在り方に付いては、3年間を通して議論の対象となった。まず、防災担当部局(者)は人間宣言すべきであること、すなわち、その危険度に至る前提、不確定さを明示すること、危険度としては、可能最大の自然力を対象とすること、宮崎海岸のように津波警報等の住民伝達が間に合わない場合の避難システムをマップ表示すること等の意見が出された。結局数値計算結果に、これらの考え方をどう生かして行くかの議論が締めくくりにもなった。