著者
大塚 夏彦 大西 富士夫 泉山 耕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_25-I_30, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1

2010年以降,北極海航路による東西輸送が拡大中である.当初は燃料や資源の高騰を背景とした欧州・アジア間輸送が拡大し,それが2014年に急減した後は,ロシア北極海沿岸の資源開発が駆動力となって,輸送貨物量は増大傾向にある.夏期北極海では海氷減少が進行中で,船舶の航行環境は緩和しつつあり,近年は多様な船が夏の北極海港航路を航行する様になってきた.北極海航路の輸送距離短縮により,燃料費や船体償却が低減され,ロシアの砕氷船料金などのコスト増を相殺する効果が出る.これにより,バルク貨物は輸送コスト削減が実現しやすい.当面はロシア北極海沿岸での天然資源開発に関連するバルク貨物が,北極海航路の主要貨物となって,海上輸送が拡大していくと考えられる.
著者
宇多 高明 百瀬 尚至 遠藤 和正 三波 俊郎 古池 鋼 石川 仁憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1206-I_1211, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
2

遠州灘海岸(天竜川河口から浜名湖の今切口)の広域の海浜変形について深浅測量データなどを基に分析を行った.対象海岸のうち,馬込川河口から今切口の間では,沖合の2箇所に規模の大きな深みが定常的に存在し,その背後では汀線が後退している.また,粗粒材養浜区間では汀線はほぼ維持されているが,汀線より200m以上沖では砂分の供給不足により徐々に侵食が進んでいる.海浜縦断形は一様な緩勾配斜面から凹状の断面へと変化しつつあり,当初は馬込川河口の西側近傍にのみあった凹状の海浜縦断形が西側へと広がりを示していることが実測データから明らかにされた.
著者
夏秋 嶺 穴原 琢摩 琴浦 毅 岩塚 雄大 冨井 直弥 片山 裕之 西畑 剛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_748-I_753, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

衛星搭載型合成開口レーダー(SAR)は,天候に左右されずに数十キロ四方の広範囲に位置する観測対象を一度に観測できる強みを持つ.SAR 画像の干渉解析は,二回の観測の間に生じた地盤高の変動を数センチ単位で計測できる性能を持ち,これまで地殻変動や被災域の検知を目的として研究されてきた.著者らは,陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)を利用し,SAR干渉解析による災害時の港湾の被害状況を迅速に把握するべく研究を進めている.本稿では,港湾施設を模した消波ブロック列を用い,干渉解析の適用可能性を検討し,標準偏差で約2 cmの精度を得たほか,平成26年台風第11号により被災した兵庫県神戸市の長田港および須磨港の防波堤の被災領域の検出を試みた結果についても報告する.
著者
川崎 浩司 鈴木 一輝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_144-I_149, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
5

東北地方太平洋沖地震以降,東海・東南海・南海三連動型地震がM9クラスで発生する可能性が指摘されている.そこで,本研究では,M9.0の地震規模を仮定した東海・東南海・南海三連動型巨大地震を対象に津波伝播予測を実施した.従来の想定であるM8.7の三連動型地震津波との比較から,地震規模の違いによる津波高および津波到達時間への影響を検討するとともに,太平洋沿岸および内湾における三連動型巨大地震津波の津波伝播特性について考究した.その結果,M9.0の場合,太平洋沿岸では,その津波高がM8.7と比べ約2倍となること,波源域から離れた沿岸では,津波到達時間が早まることが明らかとなった.さらに,内湾では,津波の高さが太平洋沿岸部に比べ小さいものの,湾口部が狭く外洋に津波が出にくいために,水位の高い状態が長時間続くことが判明した.
著者
瀬戸 雅文 佐藤 総一郎 巻口 範人 小形 孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_316-I_321, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
7
被引用文献数
2

マナマコ人工種苗の成長に伴う管足の数や吸盤部の表面積の変化を計測し,引っ張り試験を実施して管足の基質への固着力を測定した.更に,基質に着底したマナマコ人工種苗の流動耐性を調べた.稚ナマコの管足数と吸盤部の表面積は体長に比例して増加した.管足より発生する稚ナマコの固着力は付着基質の粗度に依存し,管足吸盤部の直径とほぼ等しい相当粗度で最小値をとりながら成長とともに増加した.吸盤部の単位面積当たりの固着力は,成長とともに付着基質の粗度に依存しながら一定値に収束した.定常流の増加とともにマナマコの形態は防水形状に変化し,他の棘皮動物と同等以上の流動耐性をもつことがわかった.マナマコ人工種苗の放流海域における波浪条件をもとに,適正放流サイズや放流水深を決定することが可能である.
著者
比江島 慎二 高松 宏彰 大熊 広樹 上田 剛慈
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.24-34, 2017 (Released:2017-05-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2

振り子の流体励起振動を用いた革新的な水流発電機を開発してきた.本研究では,円柱振り子の渦励振を用いた従来の方式に代わり,半円柱や半楕円柱の振り子に生じるギャロッピングを採用した新方式を提案した.この新方式において,半円柱振り子は円柱振り子の5倍,半楕円柱振り子は半円柱振り子のさらに2倍のエネルギー取得性能を発揮した.半楕円柱振り子の無次元仕事率は,低流速域では,振り子長さに関係なく一本の回帰直線に沿って無次元流速とともに線形的に増加し,高流速域では,無次元流速に対してほぼ一定値を示すことが明らかとなった.
著者
鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_870-I_875, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3

地球が温暖化すれば,海面上昇と台風強大化によって高潮による浸水リスクが増大する.そのため,全国の高潮浸水による被害リスクを,将来の海面上昇と高潮偏差の増大を外生的に与えて推計し,その地域分布を表すリスクマップを作成した.そのマップでは,三大湾,瀬戸内海,有明・八代海地域でリスクが大きい一方,北陸,東北,北海道地方では有意なリスクがみられる場所が限定的である.高潮や津波による浸水の被害ポテンシャルを把握するため,作成した浸水被害モデルを使い,陸域が浸水した場合の被害額を様々な浸水水位で計算し,浸水水位と浸水被害額の関係を表す関数を作成した.関数によれば,東京湾,大阪湾および瀬戸内海がT. P. 5mまで,茨城・九十九里と南海・東南海がT. P. 10mまで被害額の増加割合が大きい.
著者
鈴木 拓也 茅根 創 岩塚 雄大 片山 裕之 関本 恒浩 磯部 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_838-I_843, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
9
被引用文献数
4

サンゴ礁州島は,サンゴ礁上にサンゴ礫で形成された標高1~2m程度の低平な島であり,静水面よりわずかに高い位置に形成される.その地形変化については,短期間の高波浪により形成・消失された報告はあるものの,観測データ取得が困難でありそのメカニズムについては未解明な部分も多い.本研究では,西表島北方リーフ上にサンゴ礫だけで形成されるバラス島を対象として現地調査および水理実験を行い,その地形変化メカニズムについて検討を行った.その結果,以下の結論を得た.1)台風時の強い外力により堆積・侵食・移動の地形変化を繰返す.島の移動方向は流れを主体とした外力の卓越方向と定性的に一致する.2)枝サンゴを中心としたサンゴ礫は,底面流速として概ね0.7m/sが移動限界流速と考えられる.
著者
岩塚 雄大 琴浦 毅 片山 裕之 竹森 涼 田島 芳満 茅根 創
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_455-I_460, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
9
被引用文献数
1

サンゴ礁州島の形成機構は様々な報告,研究が行われているものの観測データの取得事例は少なく,州島形成場の波浪場,海浜流場は依然未解明である.本研究では,西表島北方リーフ上にサンゴ礫だけで形成されるバラス島を対象として現地調査を行い州島形成場の外力評価を行った.さらにそれを補完する数値計算を行い州島形成に至る外力場の検討した.その結果,バラス島周辺のリーフ上では,来襲波浪に時空間的な位相差が見られることやサンゴ礫移動外力としてはリーフ内の流れよりも波浪が卓越する可能性が高いこと,バラス島付近では鳩間島の遮蔽とバラス島北側の二つの窪地の屈折効果によりバラス島に向かうNE,NW双方向からの波浪が生じ,窪地背後のリーフ中央部ではサンゴ礫が集積されるポテンシャルが高いことが明らかとなった.
著者
田辺 智子 山城 賢 島田 剛気 横田 雅紀 木梨 行宏 橋本 典明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_1000-I_1005, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
6

有明海は,高潮の危険性が高い海域の一つであり,さらに将来的には温暖化による高潮リスクの増大が懸念されていることから,特に背後に低平地を有する湾奥部の沿岸では,高潮・高波に対する防災対策が重要である.本研究では有明海湾奥部の沿岸防災に資する知見を得ることを目的に,海岸堤防に沿った複数の地点で潮位観測を実施し,湾奥部の高潮の増幅特性等について検討した.加えて,非構造格子モデルFVCOMを用いて観測期間に来襲した台風1216号について高潮推算を行い,湾奥部の高潮増幅率をより詳細に検討した.台風1216号のように有明海の西側を台風が北上すると,湾奥部で高潮が大きく増幅される場合があることが,潮位観測および高潮推算結果より具体的に示された.
著者
村上 智一 小花和 宏之 河野 裕美 下川 信也 田林 雄 水谷 晃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_766-I_771, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は,サンゴ礁海域を対象として,SfM(Structure from Motion)による水中3次元計測(水中SfM)の可能性を明らかにすることである.そこで,サンゴ礁海域である西表島網取湾において,枝状サンゴ,塊状サンゴおよび海草であるウミショウブを対象に水中SfMと実施コストが高い従来の測量を同時に行い,これらの結果を比較・検討した. その結果,水中SfMは,サンゴの高さ,長径,短径および枝状サンゴの枝幅を最大誤差4.5 cm,最小誤差0.1 cmの精度で計測でき,サンゴ保全のためのモニタリングなどにおいて有用となることが明らかとなった.一方,ウミショウブは,連続写真撮影中に葉が波や流れによって揺らぐため,SfMによる3次元化が不十分であった.
著者
直井 恒雄 渡部 要一 新舎 博 日高 征俊 白神 新一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_498-I_503, 2012
被引用文献数
1

東京都の新海面処分場Cブロックにおいて,真空圧密を利用した粘性土層の減容化事業を実施した.対象となる粘性土層は,均質な在来粘土層とその上に処分した砂分を多く含む浚渫土層である.本減容化事業では事前予測沈下量の90%以上の沈下量を目標として工事を実施しているが,浚渫土層の中に存在する中間砂層の堆積分布を正確に把握し,沈下量の評価に反映する必要があった.そこで,本文ではドレーン打設時のマンドレル貫入抵抗値から中間砂層の堆積分布を詳細に把握した.また,減容化のための圧密挙動に関しては,中間砂層を排水層とみなした圧密理論と実際の沈下挙動を比較し,予測沈下計算方法が十分に適用できることを明らかにした.
著者
松下 紘資 Thieu Quang Tuan Nguyen Quang Luong Le Tuan Hai 滝 泰臣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_318-I_323, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
7

異常気象や台風の大型化により設計波高を超える外力が作用する頻度が高くなっており,消波ブロックを利用した消波構造物の重要性が高まっている.本研究では,かみ合わせの強化を目指した2種類の新しい消波ブロックを用いた傾斜堤において水理模型実験を実施し,新型ブロックの安定数算定式を提案した.さらに既存ブロックとの比較により,傾斜堤用消波ブロックとしての安定性能について考察した.その結果,いずれの新型ブロックも同種の既存ブロックに比べて,非常に高い安定性能を有していることがわかった.さらに2種類の新型ブロックのうち,軸を持つ形状の新型ブロックは,被害が始まってからの波高の増加に伴う被害の広がりが遅く,構造的に崩れにくく粘り強さを持っていることがわかった.
著者
只隈 章浩 幸福 辰己 滝川 清 横手 敏弘 奥村 靖浩 小田 勝也 小堀 達
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_491-I_496, 2015

国土交通省九州地方整備局では,調査観測兼清掃船「海輝」「海煌」を用いて,有明海・八代海の海域環境特性の把握を目的として,水塊構造調査並びに底質・底生生物調査を実施している.2004-2013年度の10ヶ年分の調査結果を整理した結果,八代海では球磨川河口前面海域よりも湾奥の海域の方が表層-下層間の密度差が大きいことが確認された.また,八代海において,底質と底生生物群集のクラスター解析により,それぞれ4つのグループに分類されるが,さらに,これらの組み合わせにより9つのグループに細分類され,複雑な環境特性を持つ海域であることが明らかになった.
著者
喜古 真次 菊池 喜昭 兵動 太一 神戸 泉慧 引地 宏陽 平尾 隆行 竹本 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_384-I_389, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

管理型海面廃棄物処分場跡地の高度利用を考えた場合,底面遮水基盤(粘性土地盤)を貫通するような杭の打設が必要になるものと考えられる.この場合,処分場内の一部の廃棄物,特に大きな塊やひも状の廃棄物が,杭の打設に伴って連れ込まれることが現地施工において懸念されている.そこで本研究では,杭の先端形状を変えることで廃棄物の連れ込み状況が変化するのではないかと考え,遮水基盤上の廃棄物層を模擬した地盤に先端形状の異なる模型杭を貫入することで,各先端形状の杭を貫入した時の廃棄物の連込み状況を確認した.実験結果から,杭先端の内側を細くした形状が塊状の廃棄物の連込み抑制に効果があることがわかった.ひも状の廃棄物に対しては,杭の実質部の先端面積を狭くすることが効果的であると考えられるが,実験結果には明確な差が認められなかった.
著者
陸田 秀実 村上 一樹 土井 康明 山本 民次 川口 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_364-I_369, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
5
被引用文献数
3

To evaluate impacts of oyster raft placement on tidal current and seawater exchange in Etajima Bay, northern part of Hiroshima Bay, we have developed a coastal circulation model incorporating the drag force of the oyster raft in Etajima Bay. We found that the number of oyster rafts in summer season is twice as large as that in winter season. In Etajima Bay, the seawater exchange is relatively large in the northwest part, whereas the term of the seawater exchange is about one year in the southern part. Moreover, we computed some scenarios which the oyster rafts are reduced at each zone, and then it could be desirable to reduce 40% of the total number of oyster rafts in order to make a plane for reducing organic matter load from the oyster culture.
著者
木岡 信治 森 昌也 遠藤 強 竹内 貴弘 渡部 靖憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_509-I_514, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本稿では,過去に発生した海氷を伴う津波の被害事例を概観するとともに,海氷群を伴った津波の市街地氾濫に関する水理模型実験を行い,その上乗せリスクの可能性について検討した.建築物間においアイスジャム(氷群の閉塞)が発生すると,流れをせき止める.建築物へのインパクトは,遡上津波先端近傍の氷群による衝突荷重がまず作用するが,その後に続く準定常部分においても,大きな荷重が持続する.これは閉塞による水位上昇分と,建築物間の静水圧も加味した静水圧荷重で説明できた.また,津波避難ビル等への避難に際しては,その建築物が崩壊せずとも,水位上昇と氷群のパイルアップ(氷群の積み重なり)も勘案すると,より高い所に避難する必要がある事が示唆された.
著者
日比野 忠史 金城 信隆 TOUCH NARONG 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_910-I_915, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

過剰な有機物の流入により底棲生物(マクロベントス)が棲息できなくなった海底から堆積有機泥を採取して生態系の再生実験を現地で行った.還元化した土壌での生態系の再生は,SiO2,Al2O3,CaOを主な成分とするアルカリ剤を用いた.アルカリ剤を用いることで生態系が崩された土壌を底棲生物が棲息できる土壌に再生することができた.生態系の再生ができた土壌の有機泥性状を分析することで有機泥土壌の再生法について検討した.この結果,アルカリ剤からの陽イオンの溶出は有機物の分解により泥層内に蓄積された電子,水素イオンを処理すること(電子伝達機構の促進)により,COD,硫化物の低下等を生起させて生態系の再生を促進させていることが明らかにされた.
著者
村上 啓介 北村 翔一郎 真木 大介 竹鼻 直人 岩田 恭平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_670-I_675, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8

効果的な防波機能と十分な耐波安定性が得られる構造形式の一つとして,防波堤や護岸天端のパラペット部を後退させた構造形式(後部パラペット)が提案されている.本研究では,後部パラペットにフレア断面を採用する新たな構造を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,数値シミュレーションを実施し,フレア断面を有するパラペット部に作用する波圧と波力について検討した.後部パラペットにフレア断面を採用することで,従来の直立断面パラペットと比較して少ない後退量で越波を低減できることを確認した.また,フレア断面のパラペット部に作用する水平波力は,パラペットを後退させることで低減され,下向きの鉛直波力は増大することを示した.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_677-I_682, 2015
被引用文献数
2

国生み伝説で知られる淡路島の海岸から1km圏内には多くの神社が鎮座している.本島沿岸は2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で兵庫県下最大の津波被害が出ると予想されており,避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における淡路島沿岸域の神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,多くの神社が直接の津波被害を免れ,長い歴史をもつ神社の現在の空間分布は過去の大規模災害によって淘汰された結果を示しているという仮説を裏付ける結果が得られた.また,祭神による津波被災リスクの違いがあることも明らかにされた.