著者
佐藤 香織
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-26, 2012-03

本稿では中上級の42名の日本語学習者に文産出課題を課すことにより,「ように」を用いた「命令,依頼」の内容を示す間接話法の習得状況の一端を探った。さらに,日本語教科書や参考書等での「ように」を用いた間接話法のこれまでの取り扱われ方等についても検討し,効果的な文型提示や指導法について考察した。間接話法がふさわしい文脈において「ように」を用いた間接話法を産出できた学習者は全体の20%程度であり,習得状況は決して良いとは言えない。1級合格者については半数弱が「ように」節を産出することができていたが,語用論的に不適切な「ように」節の産出も見られた。また,1級合格者の残りの半数は「と」節を用いた直接話法の文を産出していた。このことから,直接話法よりも間接話法がふさわしい状況があることを理解させた上で,待遇表現の調節も含めた適切な「ように」節が使用できるような運用練習を行っていく必要があると考えられる。
著者
佐々木 良造
出版者
秋田大学国際交流センター
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-17, 2018-03

本稿は,教養教育基礎科目「海外短期研修」の一部として行われた,カナダのビクトリア大学における1 か月の英語研修に参加した学生1 名を対象として,異文化理解・語学・学業・進路選択の態度にどのような変化が生じたかを明らかにすることを目的とし,渡航前,研修修了1か月後,研修修了1 年後の3 回にわたってPAC 分析を行った。その結果,渡航の前後で英語学習に対する動機の高まりと異文化理解の深化がみられた。そして,研修修了1 年後の調査では,英語学習,留学に対する動機は高まりつつも,リエントリーショックおよび専門の勉強に対するモチベーションの低下とその回復という相容れない状態が続いていたこと,さらにその状態から自力で脱出し,海外志向・上昇志向を形成している様子が明らかになった。このことから,研修後の長期にわたるフォローアップの必要性を指摘した。
著者
市嶋 典子
出版者
秋田大学国際交流センター
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-20, 2016-03-01

本稿では,シリアの元日本語教師,日本語学習者の語りに焦点を当て,彼女たちがなぜ日本語を自身の人生と結びつけて考えるようになったのか,紛争という社会的状況が彼女達の人生にどのような影響を与え,いかなる市民性を形成させたのかを考察する。その上で,日本語教育が果たす役割を問い直し,平和構築としての日本語教育の可能性を主張する。
著者
平田 未季 阿部 祐子 嶋 ちはる
出版者
秋田大学国際交流センター
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-50, 2018-03

本稿では,秋田大学と国際教養大学の間で行われた留学生を対象とする日本語合同授業の実践の詳細を報告するとともに,異なる大学に所属する留学生同士の交流からどのような学びが得られるのかという点について考察する。筆者らは,秋田市に留学しているという共通点を持ちながら,異なる環境で生活する学生が交流することで,自らの置かれた環境の類似点や相違点を比較することができ,互いに共感や刺激が生まれるのではないかという仮説のもと,2 回に渡り両大学間の合同授業を実施した。本稿では,第1回目の合同授業の準備過程,活動内容の詳細,学生の反応,第1 回目の実践で生じた課題およびそれを踏まえた第2 回目の実践内容を示すことで,異なる大学が,既存のクラスの中で合同授業を行う方法の1 つを提示する。また,従来は日本人学生と留学生の間で行われることが多く,「留学生-日本人」,「自国文化-日本文化」といった二項対立になりがちな多文化クラス活動が,異なる大学の留学生間で実施されることで,新たな学びの機会となりうる可能性を指摘する。
著者
牲川 波都季
出版者
秋田大学国際交流センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.53-82, 2014-03-01

本稿は,2009年度から実施してきた農家民泊事業について,目的・概要を詳細に示すとともに,アンケート結果等に基づきその成果を検証しようとするものである。 これにより本事業の意義と現在の到達点,残る課題を示す。 また,予算の出所などを含めた実際的な資料を提供することで,他機関が同様の取り組みを始めようとする際にも役立つ内容とする。
著者
市嶋 典子
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.43-52, 2012-03

本稿では,対話的読解授業を通して,学習者は,「文化」という抽象的な概念をどう解釈したのか,学習者の書いたレポートの分析を行うことによって明らかにした。その上で,本授業の意義と課題を主張した。学習者のレポートを分析することによって,学習者の文化観,(1)集団の傾向性とて捉える視座,(2)文化相対主義的な視座,(3)可変的で多様なものとして捉える視座,(4)体験の中で作られていくものとして捉える視座,(5)他者との関係性によって作られていくものとして捉える視座が明らかになった。また,様々な読み物を読み,対話を重ねることによって,学習者の間に文化を集団の傾向性として捉えることに対する批判性が生まれ,文化を可変的で多様なもの,他者との関係性によって作られていくものとして捉える視座が生成されていったことを示した。