著者
加藤 千枝
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-60, 2014

GC(ゲーテッド・コミュニティ)とは居住境界線を明確に示すコミュニティの形態である(Blakely & Snyder,1997=2004)。本研究ではSNS上のGCの分類を行い,非GCとの比較・検討をすることで,オンライン上のGCの可能性と限界を整理し,考察することが目的である。先行研究を踏まえ,SNS上の151のGCを分析した結果,「知人同士のやりとり」「見知らぬ者同士のやりとり」「個人利用」「完全非公開」の4点に分類することができた。さらに,限定的ではあるが青少年99名の自由記述から,SNS上のGC・非GC共に他者とやりとりすることでカタルシス効果が得られた。しかし,非GCでは相手に打ち明けることで関係が変容・崩壊してしまう恐れのある話題についても,打ち明けることが可能なので,そのような点がGCとの差異として見出されたと考える。
著者
吉田 純
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-63, 2012

本稿は,ギデンズの再帰的近代化論を手掛かりとして,再帰性概念が社会情報学において担いうる理論的意義を明確化することに向けての,予備的な考察をおこなう。再帰的近代化論によれば,社会の情報化のプロセスは,「モダニティの徹底化」としての再帰的近代化の本質的構成要素であることが指摘できる。情報化の帰結として出現したインターネット上のCMC空間の特性には,再帰的近代化の構成要素である「脱埋め込み」と「再埋め込み」との両側面がみられ,その両者を再帰性概念により統一的な視点から説明することができる。したがってCMC空間は,情報化が再帰的近代化の本質的構成要素であることを例証しているとみることができる。ただし,以上の考察は,直接にはCMC空間のみを対象としている点で,限定的な範囲にとどまっており,再帰性概念を,一方では社会情報現象一般を説明する概念として一般化すること,他方では現代の情報テクノロジーに固有の社会情報現象を説明する概念として分節化することが今後の課題となる。この課題を追求していくうえで,正村俊之の情報空間論が有力な理論的手掛かりとなることが期待される。
著者
橋元 良明
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.47-53, 2012

本稿では,まずsociologieという言葉が,日本での通説とは異なり,フランスの革命指導者シエイエス(Emmanuel Joseph Sieyes)がその手記でしたためたのが最初であることを述べた。そこには市民革命前夜の新しい社会秩序成立への期待があった。その後,オーギュスト・コント(Auguste Comte)が改めてsociologieという言葉を使用し,産業革命後の社会再編も伴って,学問としての「社会学(Sociology)」の展開が始まるが,その中から,研究対象の分化という形で「社会心理学(Social Psychology)」が発展する様子を概説した。最後の節では,「社会情報学」が,「社会心理学」などとは異なり,大学の組織論的要請から生まれた言葉であり,研究領域にちなんで学術的発展の必然から生まれた語ではないことを述べた。すなわち,東京大学新聞研究所の学部転換構想や,札幌学院大学における新学部設置をめぐって「社会情報学」という言葉が作り出されたという特殊な出自をもっ学問領域名であった。
著者
吉田 寛 柴田 邦臣
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.29-36, 2014

2012年度に東日本大震災の被災地山元町で実施された「山元復興学校」は,ニフティ株式会社,河北新報社,そして山元町役場と連携した社会情報学会(SSI)の災害情報支援チームによるものであった。災害情報支援チームの活動は,当初,日本社会情報学会(JSIS)の研究活動委員会内・若手研究者支援部会の社会貢献活動として実施された。しかし,若手による研究促進の活動は,二つの日本社会情報学会(JASI & JSIS)が統合される以前から,両学会の若手が参加して合同で行われてきた若手研究支援活動の流れを汲むものである。この場所を借りて,学会における若手研究支援活動の経緯を紹介したい。