著者
松前 ひろみ 長谷 武志 清水 健太郎
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.2, pp.1-5, 2020-01-25

ヒトのゲノム情報からは,人類の系統や混血などの歴史を詳細かつ統計的に推定することができる.そうしてゲノムから推定される民族集団史の系統関係と,文化,とりわけ言語の分類には,一定の関連があると考えられてきた.しかし言語の分類のうち,言語族という語彙レベルで近縁な言語間の関係を除くと,遠い言語同士の関係(例えば日本語,アイヌ語,韓国語)を定量的に分析することは,これまで困難であった.私たちは文法の比較法である言語類型論の研究者とともに,文法のデータベースから定量的に語族を超えた言語の特徴の類似性を抽出し,ゲノムに基づく民族集団の関係との関係性を分析することに成功した.データベースに蓄積された文化と生物学の情報を統合的に解析する方法を提案する.
著者
加納 靖之
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.5, pp.1-3, 2020-01-25

歴史地震研究の成果としての地震史料集や歴史地震のカタログ(年表)がデジタル化されつつある.既にいくつかの研究プロジェクトによってデジタル化が試みられ,また実用的なデータベースとして公開されてきた.既存のデジタル資源の大部分は地震学,歴史学,情報学の協働によって実現したものである.これらを活用した歴史地震研究を紹介するとともに,今後新たに構築すべきデータベースや取り入れるべき技術や仕組みについて議論したい.
著者
王 一凡 永崎 研宣 下田 正弘
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2016-CH-110, no.7, pp.1-7, 2016-05-07

複層的な伝承経路に由来する膨大な活字種を内包した 『大正新脩大藏經』 所収 「一切経音義」 「続一切経音義」 本文の分析にあたり,版面画像から各グリフ画像を自動的に切り出して全文コーパスに対応づけるシステムに加え,画像を手動で適切に分類・修正するためのクロスプラットフォームな GUI 環境を開発した.これによりコーパスの継続的な保守が可能になるばかりでなく,一連の手法は他の活字化仏典をはじめ戦前期和文活字本のコーパス構築に広く応用できると考えられる.
著者
橋場 天紀 三原 鉄也 永森 光晴 杉本 重雄
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2018-CH-116, no.12, pp.1-5, 2018-01-20

筆者の研究室では,マンガに関する情報へのアクセスと利用を容易にするため,マンガの内容や構造に関する記述方法を検討してきた.その中で,マンガの内容や構造のメタデータを利用した探索性やアクセス性の向上のために,マンガ画像とメタデータを統合的に利用するための環境づくりを進めてきた.本研究では,マンガの内容と構造のメタデータを組み合わせ,マンガの構成要素を検索し提示するシステムを Linked Open Data (LOD) 環境の上に構築した.このシステムは,デジタルヒューマニティーズ領域を中心に広く認知されつつある国際標準である International Image Interoperability Framework (IIIF)を利用して実現した.
著者
西岡 千文 亀田 尭宙 佐藤 翔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告: 人文科学とコンピュータ(CH) = IPSJ SIG Technical Report (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2019-CH-120, no.5, pp.1-8, 2019-05-04

近年, 学術出版物のオープンアクセスが進展し,自由にアクセス可能な学術情報が蓄積されている. 一方で,研究評価など様々な目的で利用されている学術出版物の引用データに関しては, 機械可読なアクセスのオープン化が遅れてきた. このような状況を解決するために, I4OC (Initiative for Open Citations) が学術機関と出版社によって設立された. 本稿では, I4OC が公開している引用データを, JaLC メタデータと unpaywall により公開されているデータとともに利用することで, 日本の学術出版物の引用データのオープン化の現状分析を試みる.
著者
董 然 蔡 東生 浅井 信吉
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2018-CH-117, no.4, pp.1-4, 2018-05-05

ヒルベルトーファン変換(Hilbert-Huang Transform: HHT)は信号処理および解析分野において,高精度の解析性能を見せている.周波数領域における舞踊動作手法として,ヒルベルトーファン変換を用いたスペクトラム解析手法が提案され,その優れる解析精度により,周波数領域における舞踊動作の解析ができるようになった.一方,アジアの日本舞踊はスローテンポであり,規則正しい振り付けされているのが一般的である.それに対して,欧米の舞踊動作はアップテンポであり,リズム中心という特徴がある.本研究では,ヒルベルトーファン変換を用い,手の舞踊動作が特徴で,踊りが難しいと言われている「AyaBambi」の舞踊動作をスローテンポの日本伝統舞踊(能楽),およびアップテンポの日本舞踊(Perfume),欧米舞踊(Madonna)と比べ,その独特な舞踊特徴の解析を行う.
著者
後藤 真
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2017-CH-115, no.13, pp.1-5, 2017-07-28

本報告では,日本史学にたいして,どのような場面で情報技術が用いられるようになったのか,それにより変わったことは何であり,変わっていないことは何なのかについて,概観を試みる.日本史学におけるデータベースの歴史は古く,1980 年代にはすでに大型計算機によるデータベース構築が行われ,その後もさまざまな場面での活用が試みられてきた.その活用のあり方は,大きくはデータベース目録検索の時代,辞書と史料集の CD-ROM の時代,データベース 「乱立」 の時代,遍在するコンピュータの時代と大きく 4 つ程度に区分することが可能であるという暫定的な見通しを持っている.このそれぞれの状況が 「デジタルアーカイブ」 などとどのように切り結ばれてきたのか,今後の未来のありようなどについて,現状での見通しを述べたい.
著者
守岡 知彦
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2016-CH-111, no.4, pp.1-8, 2016-07-23

HNG の基になった 「石塚漢字字体資料」 のカード画像を CHISE-wiki 上で試験的に公開したのでその概要について報告する.また,京都大学人文科学研究所所蔵の開成石経の拓本画像と 「石塚漢字字体資料」 のカード画像の統合も試みた.
著者
高橋 恵利子 畑佐 由紀子 山元 啓史 前川 眞一 畑佐 一味
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2015-CH-107, no.5, pp.1-4, 2015-08-02

本研究の目的は,外国人日本語学習者の発音能力を簡易に診断するシステムを開発することである.その目的を達成するためにはさまざまな問題があるが,本稿では音声データの収集形式の問題と評価者の問題を取り上げる.音声データの収集方法としては,短文を読み上げ,それを録音する方法 (読み上げ課題) と,同じ短文をあらかじめ録音したものを聞いて発音したものを録音する方法 (リピート課題) の 2 つを検討する.録音の評価者は,全員日本語母語話者 (日本語教師,日本語教育未経験者) とし,これらの条件で,6 名 (母語話者 2 名,ほぼネイティブ水準の発音技能を持つ者 2 名,顕著な外国人訛りを持つ者 2 名) の音声提供者の録音資料を用い,一対比較法による評価実験を行った.実験の結果,データの収集方法については,いずれの方法によっても 0.86 以上の相関係数が得られたが,リピート課題 (0.86 以上) よりも読み上げ課題 (0.92 以上) の方が,若干高かった.これにより,今後のシステム設計計画では,一般の母語話者を評価者とし,あらかじめ音声材料を準備する必要のない読み上げ課題によるデータ収集方式を採用することにした.
著者
孫 昊 李 鍾賛 金 明哲
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2015-CH-107, no.8, pp.1-4, 2015-08-02

日本初のノーベル文学賞を受賞した川端康成にまつわる数多くの代作問題があり,その一つは 「花日記」 である.「花日記」 は新潮社 1981 年版の川端全集第 20 巻に収録されているが,本作は当時川端康成を師事した主婦作家・中里恒子の代作という説がある.本研究は文章から抽出した文字・記号列の Bigram,タグの Bigram,文節パターン特徴量を基に,統合的分類アルゴリズムを用いて代作問題を検証した.
著者
小風 尚樹
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2015-CH-106, no.7, pp.1-5, 2015-05-09

本報告原稿は,財務記録史料マークアップのための方法論的提言を行った Kathryn Tomasek,Syd Bauman による 2013 年の論文を検討すべく,実際に 19 世紀イギリス政府文書に収録された貿易統計データの史料をマークアップすることで,その方法論の有効性や課題について考察するものである.