著者
島田 喜郎
出版者
公益財団法人 日本世論調査協会
雑誌
日本世論調査協会報「よろん」 (ISSN:21894531)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.45-55, 2004-03-31 (Released:2017-03-31)
被引用文献数
1

米国には1960年代以来、さまざまなRDDサンプリング手法を開発してきた長い歴史がある。日本では、近年ようやく電話調査でRDDサンプリングが使われるようになったばかりである。RDDの理論的な発展の成果が日本語で利用できればその価値は大きいはずだが、そのような文献は存在していない。この論文の目的は、いくつかの重要なRDDサンプリング手法のレビューを提供することにより、その欠落を補うことである。稼動中のすべての局番の0000-9999の番号を抽出フレームとする稼動局番フレーム法は、RDDサンプリングの原型である。この方法は電話世帯を完全にカバーするが、抽出した電話番号の世帯ヒット率が非常に低い。このレビューでは、世帯ヒット率が「抽出フレームの縮小」によって改善されることを提示し、それぞれの手法がどのように抽出フレームの縮小を達成しているかを論じる。Waksberg法やSudman法では、二段抽出法を使い、一段目で世帯用番号を含まないバンクを排除する戦略によって抽出フレームを縮小した。電話帳情報を使う手法は電話帳掲載番号を含まないバンクを排除することによる抽出フレーム縮小効果を利用している。電話帳情報を使うと世帯用番号がすべて非掲載であるバンクが「脚切り」されるが、「非比例層化抽出法」は電話帳情報を使いながら「脚切り」を発生させない方法である。最近では、使われていない番号を自動的にスクリーニングすることが可能になり、それによって、原型のままの稼動局番フレーム法を使っても十分効率的なRDDサンプリングができるようになった。