著者
玉置 好徳
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.14, pp.52-57, 2018-03-22

本研究では、地域福祉における情報の重要性を明らかにするために、「地域福祉の4 つの志向軸」に取り上げられた各論と、後発の地域福祉情報論の関連について系統的に分析した。その結果、地域福祉論における情報の位置づけは、行政などによるサービス情報システムや住民向けの情報提供サービスなどと、住民などによる主体的な情報活用に大別されることが明らかになった。また、福祉情報化の進展によって、かえって情報格差が広がり、とりわけ福祉サービスの利用者などに情報弱者が多く含まれているという問題がある。その根底には、生活保護などの福祉サービスに付随する劣等処遇的福祉観があり、ときにそれをメディアがさらに拡散させている。したがって、福祉情報を的確に分析して活用できる能力を有する福祉情報活用主体を形成するために、福祉教育とメディア・リテラシーを統合して福祉メディア・リテラシーの方法論を確立することが今後の課題となる。
著者
三木 雅博
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.19, pp.72-93, 2023-03-20

平安朝漢文学の担い手といえば、大学寮で高度な漢学の研鑽を積み、漢語を自在に用いて作詩や作文が行える文人官僚たちを、多くの人は思い浮かべるであろう。菅原道真や大江朝綱、大江匡衡、菅原文時、院政期に降っては大江匡房などがその代表的存在として挙げられる。しかし、平安時代、漢語を用いて漢文を綴っていたのは、これらの名だたる文人官僚たちばかりではない。これらの文人官僚たちの下もと、朝廷で下働きをする官人、あるいは地方の国衙やその出先で働く在地の官人、都や地方の寺院で文書の作成に携わる僧侶など、多くの場所に様々な漢文を綴ることを生業なりわいにしていた人々がいた。こうした人たちが作成する漢文の大半は日常的な文書の類たぐいであり、その役目が終わると廃棄されてしまい、残されたものも歴史の「史料」とはなっても「作品」と呼べるものはほとんど残っていない。とはいえ、中にはそう呼べるものもいくつか存在し―本稿で扱う『尾張国解文』『将門記』『仲文章』などが挙げられる―、細々ほそぼそとではあるが現在まで伝わっている。本稿では、こうした下層の官人や僧侶たちが生み出したと思われる作品や、その作品を形成している漢文の世界に焦点をあて、それらが前述の名だたる文人官僚たちの作成した漢文の世界―彼らの代表作が収められた書物『本朝文粋』の名を取り「『本朝文粋』的漢文世界」と仮称する―と相対的にどのような関係にあるのかを考察し、こうした下層階級の漢文作品の存在意義について述べてみたい。
著者
北村 伊都子
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.19, pp.36-43, 2023-03-20

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、日本だけでなく世界中で感染対策のため、マスクの着用が普及した。これにより、鼻と口、つまり顔の下半分を互いに隠した形で他者とコミュニケーションをとることが余儀なくされ、表情の印象評定が困難になった(e.g.,Carbon, 2020)。この印象評定の困難さの度合いが文化によって異なるのかを、齊藤・元木・高野(2021)はオンライン実験によって日米比較を行った。結果、表情の印象評定はマスク着用によって影響があり、その度合いに日米差が見られた。特に、マスク着用の笑顔表情においては、アメリカ人は印象評定が阻害されるが、日本人では阻害がされなかった。この違いは、印象評定の際、人の顔のどの部分に注目するのかという文化の違いが影響を及ぼしていると考えられている(Yuki, Maddux, & Masuda, 2007)。加えて、なぜ注目する部分が違うのかについて、Tsai(2017)はその文化における理想的な感情表現・表情表出のルールにのっとっているからではないかとしている。本論文では、このようなマスク着用時における笑顔の印象評定の文化差について、日本を含む東アジア・北米に焦点をあて、文化的な背景を比較しながら検討を深めた。
著者
吉田 美穗子
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.17, pp.112-122, 2021-03-20

図形を回転するとその軌跡は円となるが、等しい倍率で拡大もしくは縮小しながら回転するとその軌跡は螺旋となる。正方形の黄金比を用いた回転を基本として様々な分数の正多角形の外心を中心としてその外角の角度分を、黄金比率の割合で拡大しながら回転させてその軌跡の円弧を繋げていった結果、黄金角である約137.5°に近い外角を持ち、分母・分子が1つ飛びのフィボナッチ数で現わされる正8/3角形、正13/5角形が最もバランスの良い効果的な現れ方をすることをこれまでに確かめた。また、その時の対数螺旋はr = e0.20051θ の式で表され、螺旋の接線と中心からの線とがなす角度は約78.7°であった。本稿ではr = e0.20051θ の式で表される対数螺旋を例に、部分的に、あるいは全体の構図として設計されたであろう作品を挙げ、制作者が絵画を見る者に自分の意図を確実に伝えるために仕組んだ表現手法の一つであることを実証しようとするものである。対数螺旋の効果を予測した、建築・インテリアでのデザインへの応用・転用が望まれる。
著者
好田 由佳 矢澤 郁美 香山 喜彦
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.16, pp.102-108, 2020-03-20

本研究では,フラクタル構造を持つセル・オートマトン(以下,CAという)により生成されたパターンを活用してテキスタイルデザインを作成し,その布を用いたドレス制作によりファッションショーを展開して,フラクタルCAパターンの美的価値と応用の可能性を明らかにした.フラクタルCAパターンは「フラクタル構造を持つセル・オートマトン」に関する研究の成果の一つであるソフトウェア“フラクタルパターンジェネレータ”で生成した.色の選定は「星空」をイメージし,青系統をベースカラー,ピンクとイエローをアクセントカラーとして用い,16値のフラクタルCA(レベル8:512×512 ドット)で9種類の異なるパターンを選定した.それらをテキスタイルに印刷し,アクティブラーニングとして学生が衣装制作に取り組んだ.ドレスのデザインにもフラクタルの特徴である自己相似性を取り入れ,ポスター制作やファッションショーの背景映像にも生成したフラクタルCA パターンを活用した.結果として,様々な分野に応用が期待されるフラクタル理論をファッションデザイン分野にも活用できることが実証できた.
著者
西川 良子
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.15, pp.81-96, 2019-03-21

2005年に神戸市で発足した「神戸ウエディング会議」は神戸市やその周辺地域のウエディングに関わる施設や事業関係者が中心となり、神戸の街の魅力を最大限に活かすべく活動している任意団体であり、神戸をウエディングの街として、認知度アップに努めている。全国的にウエディング産業活性のために取り組む団体は数多く存在するが、その中でも「神戸ウエディング会議」はその活動歴の長さや、会員数、活動事例の多さが顕著で、注目を集める存在となっている。本論では、まず明治以降のわが国におけるウエディング産業の変遷を紐解いて、近年の傾向を探る。神戸に都市型リゾートウエディングという場所イメージが定着したことにより、神戸はたちまちウエディングの激戦区となったが、近代のわが国の結婚式の変遷が少なからず関係していることが解明できた。続いて、神戸ウエディング会議の活動を辿り、結婚式から派生するマーケットや今後の神戸におけるウエディング産業の展望について考察した。
著者
好田 由佳 香山 喜彦
出版者
梅花女子大学文化表現学部
雑誌
梅花女子大学文化表現学部紀要 = Baika Women's University Faculty of Cultural and Expression Studies Bulletin (ISSN:24320420)
巻号頁・発行日
no.14, pp.34-41, 2018-03-22

本研究は,文化財デジタルアーカイブの現状を調査し,研究用データベースとしての有益性を検証する.特に日本の文化財データベースのなかの服飾資料に注目し,研究資料としてどのような活用方法があるのかの実践を試みる.その上で,Microsoft 社のKinect センサーを活用した服飾資料の3D デジタル化の方法を提案する.Google Arts & Culture の“We wear culture”は,有数の博物館・美術館が協力した世界規模の文化財デジタルアーカイブであり,研究用データベースとしての活用を目的とした今後の展開が期待される.一方で,資金をもたない大学機関の貴重服飾資料が消失されないように,早急なデジタルアーカイブシステムの構築が望まれている.本研究では,立体的な形状の資料をデジタル化するために,コスト面・技術面の負担を抑えた新手法として,Kinect を活用した3D モデルの合成を試みた.撮影方法に検討が必要ではあるが,新しいデジタルアーカイブを構築する可能性を提示できた.