著者
服部 伸一
出版者
関西福祉大学研究紀要編集委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.113-123, 2023-03-31

本稿では,データベースを用いて,小学校の体育授業でどのような事故が起きているのか,その実態を把握することを目的とした.主な結果を以下に示す.1 )小学校の体育授業において,15 年間で32 件の死亡事故が発生しており,1 ~ 3 年生で全体の59.1%を占めていた.「水泳」25.0%,「準備・整理運動」及び「短距離走」15.6%,「持久走・長距離走」12.5%という結果であり,水泳・陸上運動で多くなっていた.死亡事故の種別については,「心臓系突然死」40.6%,「溺死」21.9%,「大血管系突然死」及び「中枢神経系突然死」がそれぞれ15.6%の順となっており,突然死が71.8%を占めていた.2 )障害事故は215 件発生しており,4 年生以上で全体の67.4%を占めていた.障害事故の種別については,「外貌・露出部分の醜状障害」29.8%,「視力・眼球運動障害」18.6%,「精神・神経障害」14.0%,「歯牙障害」12.1%の順であった.運動種目別の障害事故数については,「跳び箱運動」が10.2%,「体操(組体操)」9.8%,「サッカー・フットサル」7.0%,「マット運動」6.5%の順であり,特に器械運動系の種目で多くなっていた.3 )負傷事故は,高学年になるほど増加傾向となっていた.また,種別としては「骨折」(31.9%)が最も多く,次いで,「捻挫」29.5%,「挫傷・打撲」27.6%となり,上位3 つで全体の89.0%を占めていた.負傷の部位については,「上肢部」43.7%,「下肢部」31.7%,「体幹部」10.6%の順であった.運動種目別では,「跳び箱運動」18.4%,「バスケットボール」13.8%の順で多くなっていた.
著者
野々上 敬子 田村 裕子 岡﨑 恵子 多田 賢代 笹山 健作
出版者
関西福祉大学研究紀要編集委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.23-30, 2022-03-31

幼児と保護者の食や睡眠,運動習慣との関連性については十分に明らかにされていない.幼児と保護者の生活習慣(食習慣,睡眠習慣,運動習慣)の関連性を明らかにする.○○県O 市南部にある私立保育園3 園に通う保護者のうち,本研究の趣旨に同意が得られた133 名(3 歳児:42 名,4 歳児:45 名,5 歳児:46 名)を対象とした.調査期間は令和3 年6 月,保護者に調査票を配付し回収する留め置き法を用いた.質問項目は,家族構成,子どもの性別,保護者の健康状態,生活習慣・食生活,子育ての養育態度,子どもの様子,健康教育・食育への関心とした.幼児とその保護者を対象とし,生活習慣や食生活などについて調査した結果,保護者は睡眠が「十分とれていない」が約半数であり,子どもの睡眠時間は「10 時間未満」が約7 割,間食は「子どもが欲しがると与える」が約5 割であり,「健康教育,食育の必要性を感じる」は9 割,「イライラすることがある」は,保護者の約7 割,子どもの約4 割,「テレビゲームをする時間を決めていない」が約半数であった.幼児と保護者の生活習慣(食習慣,睡眠習慣,運動習慣)の関連性を明らかにした結果,保育所に子どもを預けている保護者において,時間的なゆとりがない人が半数を占めていたことから,睡眠時間が十分確保できない状況が窺われた.睡眠時間が十分確保されていないことから派生する生活習慣および食習慣への影響がみられた.保護者の健康状態や生活習慣は,良いとは言い難い状況であったが,子どもに対しては,しつけとして生活習慣を身につけさせたいと考えていた.これらのことから,保育所と地域および専門機関が連携協働し,保護者への支援が重要であると考えられた.
著者
谷川 和昭
出版者
関西福祉大学研究委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.109-121, 2018-03

本論文では,民生委員制度の発足100 周年(1917 - 2017),民生委員法の制定70 周年(1948 -2018)を踏まえ,今日における民生委員の実態や状況について赤穂市に焦点を当て,政策提言を行っている.赤穂市と同民児協の協力を得て実施した谷川研究室の調査では,地域福祉に役割を果たしてきた民生委員は,さまざまな悩みや不安を抱え,住民への対応や必要を感じ,理想の条件を描き,一定のストレスにも晒されていることが明らかになった.この調査で明らかになった赤穂市における民生委員の活動実態や意識の状況を手がかりに,どう問題解決していったらよいか分析を行い,民生委員活動の今後の展開に資することをねらいとして14 の提言にまとめた.
著者
大和田 智文 御幸 大聖
出版者
関西福祉大学研究委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.123-130, 2017-03

今日,SNS は対人コミュニケーションの重要なチャネルとして日常生活にはなくてはならないものになっている.心理学領域におけるSNS コミュニケーションに関する研究では,SNS の利用がもたらす功罪や,それに関連するパーソナリティに着目した議論が主になされてきていた.しかしながら,SNS 上にさまざまな発言を顕在化させてしまう心理機序をFTF コミュニケーションと関連づけながら検討した研究は見当たらなかった.本研究では,大学生におけるSNS の利用実態とSNS 上に見られる社会的不適切行為との関連に着目し,この社会的不適切行為が,FTF コミュニケーションによってすでに存在していた行為がSNS を通して顕在化されたもの(SNS の不適切行為表出の媒介機能)なのか,それとも,SNS によって新たに生み出された行為(SNS の不適切行為創出機能)なのか,すなわち,SNS コミュニケーションの顕在化に関する心理機序についての検討を行った.兵庫県内の私立大学学部生計97 名を対象に質問紙調査を実施した.その結果,FTF において不適切発言を経験することが,SNS への不適切発言投稿経験に影響を及ぼしていた.一方で,FTF での不適切発言を多く経験している者がSNS 上に見られる社会的不適切行為に対する許容度を高めてしまうことが,SNS への不適切写真投稿経験に影響を及ぼしていた.加えて,SNS を利用した自己開示欲求もSNS への不適切写真投稿経験に影響していた.すなわち,SNS への不適切発言投稿に対してはSNS の不適切行為表出の媒介機能が,SNS への不適切写真投稿に対してはSNS の不適切行為創出機能がそれぞれ働いていたことが示唆された.以上より,SNS への不適切発言投稿経験とSNS への不適切写真投稿経験とでその発現機序は異なっていると考えられた.