著者
大本 達也
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-18, 2018-03-15

美妙・山田武太郎による詩歌集『少年姿』(1886)は、寺院文化にはじまり、戦国から江戸中期期にかけて武士間にも広がった「男色」を主題とする。明治期における男子学生間での「男色」再流行のもとこの作品は成立するが、前近代的な「男色」は近代に成立した「恋愛」に次第に追いやられてゆく。この作品は、“poetry”概念に基づく日本語「詩」の形成史上、恋情を主題とした初の詩歌集であり、前近代と近代と結ぶ靭帯的作品である。
著者
大本 達也
出版者
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要. 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College. 鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要編集委員会 編 (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-18, 2018

美妙・山田武太郎による詩歌集『少年姿』(1886)は、寺院文化にはじまり、戦国から江戸中期期にかけて武士間にも広がった「男色」を主題とする。明治期における男子学生間での「男色」再流行のもとこの作品は成立するが、前近代的な「男色」は近代に成立した「恋愛」に次第に追いやられてゆく。この作品は、"poetry"概念に基づく日本語「詩」の形成史上、恋情を主題とした初の詩歌集であり、前近代と近代と結ぶ靭帯的作品である。
著者
桟敷 まゆみ
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.83-106, 2019-03-29

筆者は、留学生や外国につながる学生の自律的な日本語学習を支援することを企図し、担当授業において「学習記録レポート」を用いた取り組みを実施した。受講生は開講前に自ら学習目標を立て、学習を計画し、学期中はそれにもとづき日本語学習を進めた。学期終了時には自らの学習状況や学習姿勢等をふり返り、学習記録レポートを書いた。本稿の目的は、学習記録レポート執筆の取り組みが、受講生の日本語学習に関する内省を深め、自律学習に必要なメタ認知の力を鍛えることに貢献したかを検証することである。結果、自らの計画に基づく日本語学習が受講生に様々な気づきをもたらし、自律学習の遂行時に使用するメタ認知的知識が得られることがわかった。受講生が学習の目標と計画を立て、試行錯誤しながら学習を進め、最後に学習や自らをふり返るという一連の活動は、メタ認知的活動と言えるものである
著者
渡邉 聡 前田 洋枝
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.1, pp.129-142, 2018-03-15

本論文は、倫理的消費やソーシャルビジネスに参入する消費者ならびに生産者の行動動機と、それを支える経済・社会的メカニズム(「倫理的市場」と呼ぶ)を、経済学的に明らかにすることを目的としている。結果として、倫理的市場を形成するには、倫理的消費とソーシャルビジネスをつなぐプラットフォームの媒介的機能が必要であること、また、チャリティーショップを事例に、家庭におけるボランティアの参加が倫理的市場を形成する要因になることを示した。
著者
冨本 真理子 郭 育仁
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-31, 2019-03-29

本稿の目的は、鈴鹿大学における授業科目「鈴鹿学」「モータースポーツマネジメント」のこれまでの実践を振り返り、2019年4月に本学に設置される国際地域学部におけるこれら地域志向科目の役割について考察するものである。地域志向科目「鈴鹿学」「モータースポーツマネジメント」は、単なる地域を学ぶだけの機会ではなく、キャリア形成の場として位置付けてきた。これらは、2019年に設置される地域志向性の高い国際地域学部において、あるいは県内高等教育機関連携事業においても、重要性を持つ科目であることがわかる。鈴鹿大学にとっての国際地域学は、①国内外の地域学に学び、アカデミック志向と生涯学習志向の両方を待つ、②対象となる地域は、一地域に限定されるべきではない、③単なる地域学習ではなく、地域資源活用、地域課題解決等の実践的な活動や、個の主体形成まで広がりを持つ、④大学だけでなく、産業界や行政との協働の取り組みも含む、といった方向性が考えられ、今後も引き続き議論を重ねる必要がある。
著者
井上 剛男
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.207-227, 2019-03-29

本稿の目的は、非認知的能力を育成する上で、子どもの主体性を重視するこれまでの保育・幼児教育のあり方に、どのような課題があるのかを明らかにすることである。そのために、E.デュルケムの教育論を手掛かりに、非認知的能力の意味を捉えなおすことで、課題を照射させることを試みる。その結果、子どもの主体性をめぐる2つの課題を明らかにした。1つは、子どもの主体性の尊重と、教育という行為との区別ができていないことである。教育という行為は、どれほど子どもの主体性を尊重した方法を用いたとしても、価値を押し付ける行為であることは否めない。そのため、子どもの主体性をいくら尊重しても、学ぶことに頑なに応じない子どもが現れる可能性がある。もう1つは、子どもの主体性と、子どもの意志の自律性の違いに無自覚だったことである。自ら進んで規則に従うことが、主体性を示すものであっても、意志の自律性を示すものでは必ずしもない。ある活動に主体的に取り組む子どもの中には、その活動の意味や重要性を理解している子どもと、それらを理解していない子どもが併存し、両者の間で、その活動での学びにかなりの開きが出る蓋然性が高いからである。これらの課題が生じたのは、子どもの主体性を尊重すれば、どの子どももしっかり学べるはずであるといった考えを無批判に信じ、その成長スピードの差を個人差に還元して理解する傾向があったからだと考えられる。
著者
周 国龍
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.1, pp.73-82, 2018-03-15

日本語の動詞の否定過去形は「~なかった」で、中国語の否定過去形は「没~」にあたると一般的に認識される。しかし、「知らなかった」は「没知道」にしたら、間違いになる。必ず「不知道」で対応しなければならない。このずれから誤用が生じている。双方とも瞬間動詞の性格と状態動詞的な性格を有する。本稿はその両面から分析した。その結果、瞬間動詞の性格を有する部分に双方が対応する文法形式が存在するが、状態動詞的な性格を有する部分にずれがあり、そこから誤用が生じていることを突き止め、その原因を明らかにした。
著者
川又 俊則
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.107-122, 2019-03-29

教育現場には多文化を背景にした児童生徒がいる。したがって「多文化共生社会」理念の定着が望ましい。しかし、マジョリティ側の知識や配慮の不足などにより、マイノリティの立場にある児童生徒たちは、生活しにくく、望ましい環境にない。様々なマイノリティのうち、本稿では「性」「宗教」「色覚」という3点について学校教育でどのように扱われているか検討した。これらは、現行および次期の学習指導要領で学ぶことは明瞭に記載されていない。したがって、児童生徒は、それに取り組んでいる一部の教員のもとでのみ学ぶ機会を得られるものの、それ以外は学べていない。他方、日本社会では、とくに21世紀に入り、多様性への対応がどの分野でも必要となっている。さらに諸外国での先進的な現況は大いに参照できる。教員養成校としては、学生たちに最新情報を含めた学びを提供し、同時に、現職研修など学び直しの場の提供も必要であると結論づけた。
著者
大本 達也
出版者
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要. 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College. 鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要編集委員会 編 (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.243-270, 2019

本論では、明治期における軍歌の形成過程を考察する。軍歌というジャンルは明治期において成立する。『小学唱歌集』(1881-4)や『新体詩抄・初編』(1882)、『新体詩歌』(1882-3)においてすでに軍歌的な作品が作られていたが、それらが軍歌と呼ばれることはなかった。885年末の「喇叭吹奏歌」の制定を機に、1886年に河井源蔵編『軍歌』が刊行されることによって軍歌というジャンルが立ち上がる。新体詩と唱歌を合体させたこの書の編集が軍歌の基本形を作り出す。以後、軍歌は新体詩、唱歌などとも呼ばれつつも、独自のジャンルとして発展していく。