著者
三田村 康貴 占部 和敬 古江 増隆
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.982-984, 2013-09-10

要旨 18歳,女性.3週間前から出現した右上腕の萎縮,陥凹を主訴に当科を受診した.5か月前にHPV(human papillomavirus)16/18に対する子宮頸がんワクチン(サーバリックス®)を同部位に筋肉内注射されていた.モルフェア,深在性エリテマトーデスなどの鑑別目的に皮膚生検を施行した.病理組織学的検査では病変の主体は皮下脂肪織にあり,脂肪細胞の変性および消失が認められた.ヒアリン様物質の沈着,脂肪滴を貪食する組織球を認めた.サーバリックス®による脂肪萎縮症と診断した.一般にステロイド局所注射により脂肪萎縮症をきたすことが多く,女性に多いことが知られている.サーバリックス®による脂肪萎縮症の報告は調べえた限りなく,きわめて稀であると考えられた.婦人科医師は本疾患を認識し,対策を取る必要があると考えたため報告する.
著者
矢沢 珪二郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1106, 2015-11-10

経口避妊薬(ピル)の使用はある種の腫瘍を増加させる.今までにピルの使用と中枢神経腫瘍との関連を調べた文献は少ない.長期的なピル使用者では,グリオーマの発生頻度が非使用者のほぼ2倍であることが報告されている.デンマークの研究者たちは全国的な規模のpopulation based settingで,更年期以前の女性たちにおいて,ピルとglioma(神経膠腫)との関連を調べた.
著者
郡山 純子 柴原 浩章 鈴木 光明
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.846-851, 2010-05-10

はじめに 1978年に英国のSteptoeとEdwards 1)が世界で初めて体外受精・胚移植(in vitro fertilization-embryo transfer : IVF─ET)の成功を報告し,その後1992年にベルギーのPalermoら2)が受精障害を伴う重症男性不妊症を対象とする卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection : ICSI)に成功した.これらの生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)は難治性不妊症に対する最終的な治療法として位置づけられ,広く一般に普及するに至っている. 一般にARTにおいては,調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation : COS)を行い,至適範囲内で複数の卵子を採取し,媒精後得られた受精卵の中から,良好胚を選択し移植を行う.また受精卵を凍結保存する場合も,一般に良好胚のほうが生存率・着床率とも高く,良好胚の選択は不可欠である. 従来は受精後2~3日目の初期胚の形態学的評価法が一般的であった.最近では初期胚を連続的かつ非侵襲的に長期間観察可能な体外培養装置を用いて,ヒト胚の発生過程の動的解析(time-lapse cinematography : TLC)が可能になり,静止画像からでは解析できなかった新たな知見を認めている3).一方,胚発生に問題の少ないと考えられる良好胚移植後の反復不成功例では,hatching障害による着床障害がその一因と考えられる.われわれは,抗透明帯抗体の検出法を確立し,抗透明帯抗体による不妊発症機序の解明,ならびに抗体の生物活性の多様性を報告してきた4). 本稿では,卵子・受精卵・透明帯の評価法について記述し,着床障害となる卵側の問題点について述べる(表1).
著者
山口 真奈子 石黒 竜也 榎本 隆之
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.412-416, 2018-04-20

がん検診のポイント❖わが国の子宮頸がん検診受診率は低く,平均で50%未満である.❖細胞診単独検診では感度の低さに留意する必要があり,特に腺癌は扁平上皮癌よりも細胞診で偽陰性となりやすい.❖世界ではHPV検査単独または細胞診との併用検査でのスクリーニングに移行しつつある.
著者
松崎 利也 苛原 稔
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.490-493, 2009-04-10

[1]多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)の不妊治療とメトホルミン メトホルミンは,ビグアナイド系の経口血糖降下薬であり,その作用機序は肝臓における糖新生の抑制,末梢での糖利用の促進,腸管での糖吸収抑制など多彩である.PCOSで病態が改善するのは,インスリン抵抗性の改善により血中インスリン値が低下し,その結果,インスリンで促進されている卵巣のアンドロゲン産生が低下することが主な作用機序である1).
著者
山本 圭一郎 伊吹 友秀
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.471-475, 2017-05-10

●ヒト受精胚を対象とするゲノム編集技術利用には,基礎研究,治療を目的とする臨床応用,エンハンスメント的な臨床応用の各段階で倫理的な課題がありうる. ●基礎研究の段階では,ゲノム編集研究に用いるヒト受精胚の入手のあり方,余剰胚利用の是非,ヒト受精胚への人為的操作などが倫理的課題となる. ●治療およびエンハンスメントの段階においては,安全性や有効性,責任の所在,優生思想ないし優生学,諸々の格差や差別の助長,世代や地域を越えた不可逆的な影響などに関する倫理的課題がありうると予想される.

2 0 0 0 代償月経

著者
玉田 太朗
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.892-893, 1973-11-10

I.症状 思春期あるいは性成熟期の女性にみられる,子宮以外の場所からの周期的な出血と定義できるが,これは月経出血とほぼ同時におこるもののほかに,月経出血をともなわないが周期的に1ヵ月に1回くらいの割合でおこる性器外出血の意味に用いられていることもある。 しかし診断上のまぎらわしさをさけるためには前者のみを代償月経とよぶべきであろう。
著者
井田 守 森本 義晴
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.119-124, 2016-01