著者
山本 秀男 吉川 厚
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.73-81, 2008-12-26

ナラティブアプローチとマンガ技法を組み合わせた教材を用いて、実務家(本学会会員)を対象に研修を行ったところ、高い満足度が得られた。参与観察により、研修のフェーズによってグループ討論の牽引者が異なることがわかった。また、課題解決の判断材料が主に背景情報と登場人物の表情であること、判断基準は受講者の過去の体験に依存することが定性的に確認できた。受講者の想像力を引き出し、研修効果を高めるためには、複数のシナリオが矛盾なく存在する物語の設計と現実感のある描画技法が重要である。
著者
岩崎 幸司
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌 (ISSN:24329894)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.79-88, 2008-03-14 (Released:2017-10-18)

新薬開発は10年以上の長期間にわたり数百億円を先行投資するにもかかわらず、成功確率は1%以下の典型的なハイリスクハイリターンのプロジェクトである。国際P2M学会(IAP2M)製薬研究会では、これにP2Mのプログラムマネジメントを適用することにより、成功確率を向上させ企業としての国際競争力を向上させることを目指して2006年2月から検討を進めてきた。今回は、医薬品開発の特殊性を解説したうえでP2Mのプログラムマネジメントの概念を適用することを考え、アーキテクチャマネジメント、プロジェクトの経済性評価、製品プロファイルとリスク管理、資源調達マネジメント及びプロジェクトマネジャーの資質について考察しているので、その中間結果を報告することにより議論の材料を提供したい。
著者
田中 和夫 小原 重信
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.111-120, 2006-12-10

90年中期以降10年にわたる建設需要の冷え込みによる経営環境の変化により、建設業界の建物所有者や事業者には、建築ビジネス全体を見直して新しい価値を機会創造に結びつけ推進する意識変化が芽生えてきた。このビジネス観は、建築物の価値評価において、短期の建設サイクルから全体ライフサイクルの視点で価値向上を図り、経営活動を強化する建設業のパラダイムシフトと解釈できる。本論は「建築価値の再認識」の視点から、リニューアルビジネス領域に焦点を絞り考察する。その基本的関心は、全体ライフサイクル視点のなかで多様な価値観を持つオーナーニーズをまず明らかにすることであり、それに呼応するコントラクターによる建築物のリニューアル、すなわち「サービスモデル」の開発能力に関する方法論である。
著者
小松 昭英
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.89-102, 2010

スキーム、システム、サービスのプロジェクト・マネジメント・モデルはその登場以来、いろいろ議論されてきた。そして、特に最近は経営戦略がらみでスキームモデルについて議論されている。一方、そのマネジメントサイクルPDCAについてはあまり議論されていない。また、プロジェクトマネジメントが伝統的にプラントコントラクタの"Do"が議論されてきたことから、その議論が無意識的にコントラクタの"Do"の視点からされることが多い。そこで、マネジメントサイクルおよびオーナとコントラクタとのコラボレーションという視点から、プラント、プロダクト、ビジネス、行政の領域を網羅するマネジメント・フレームワーク・モデルとその各領域の典型的なプロジェクトモデルとそれらの相互関係について考える。
著者
喜多 一 森 幹彦 辻 高明 松井 啓之 大橋 俊夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.83-91, 2008-12-26
被引用文献数
1

近年、情報の生産、流通に関しては個々のエンドユーザが同時に生産者たり得る状況が出現している。このような流れは、具体物の伴う「ものづくり」の世界でも生まれ始めており、大量生産が中心の従来のものづくりのほかに、情報技術の高度化、普及に伴って多様なものづくりの形態が生じつつある。本稿では情報技術がもたらすこのようなインパクトについて、Webを活用したBTO型のマスカスタマイゼーションから、MITのFablabプロジェクトに見られるパーソナルファブリケーションまで様々なモデルを、背景となる技術的、社会経済的動向を踏まえて概観するとともに、筆者らが行っている諏訪・岡谷地域の工業集積との連携による利用者参加のものづくりを紹介し、そこでの課題について考察する。
著者
真原 友春 田隈 広紀 西尾 雅年
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.161-170, 2010-09-28

近年、大学全入時代が到来し、いわゆる「入口管理による学生の質保証」は、実現困難になりつつある.そのため「出口管理による学生の質保証」が重要視されてきており、大学ではこの実現に向けた具体的施策の考案が急務となっている。この状況を鑑み、筆者らは大学での卒業研究を通した学生の質向上に焦点を当て、ロジックモデルとバランススコアカードを活用した研究支援活動を実施した。さらに政府が策定したスキル標準である「社会人基礎力」と「学士力」を「学生の質」を測る指標に定め、卒業研究の過程で学生が上記を獲得できたかを調査した。本研究では上記活動の報告と、「出口管理による学生の質保証」の実現に向けた施策の考察を行う。
著者
佐藤 和枝 相原 憲一
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.117-127, 2010-09-28

地域活性化は不確実性を伴うオープンイノベーションの土俵で如何に地域価値を活かすのかという議論が中心である。地域自身の扱いが、行政区画でなく、本来の文化・生活・産業的な範疇とすることが今日では自然の認識であり、そこに存在する産業構造と地域価値創出の人間力が注目される。そこでは、地域活性化に関してP2M V2コンセプトは大いに参考になる。地域価値を創出するにはプロデューサ(いわゆるプロジェクトのオーナー)とコーディネータ(いわゆるプロジェクトマネージャ)の存在は当然として、実は多様化、オープン化時代には、ある接の業務遂行能力を備えたブリッジパーソン(いわゆるプログラムマネージャ)の存在が不可欠になることを本論文は提唱する。
著者
辻 高明
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.159-168, 2009-10-30

フィールド情報学とは、フィールドで生じる諸問題に対して、情報学の視点からその解決法を提案することを目的とした新しい学問領域である。本論文では、フィールド情報学の特徴を、それを構成する9つの手法の紹介を通して解説する。次に、フィールド情報学はどのような情報学として捉えられるのか、また、どのような点が文理融合として捉えられるのかについて分析することで、領域横断的な新しい分野としてのフィールド情報学の姿を提起する。最後に、フィールド情報学の方法論がP2Mにどのように寄与し得るのかについて考察する。
著者
遠 征 清水 基夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.85-95, 2007-10-10

100年単位の長期間における将来の中核的エネルギー源と想定される太陽光発電方式に関し、グローバルなエネルギーの発生と輸送のトータル・システムについて工学的開発プログラムの視点から考察を行った。屋上設置型などの現状の地域分散型太陽光発電方式は、発電規模と発電可能時間の面で能力は限定的で、その役割は補完的である。将来、太陽光を中核的な一次エネルギー源として使用するためには、世界各地に設置した大規模な基幹的太陽光発電施設とグローバルな超電導ケーブル網の連携運用が必要である。本研究では三つの主要な消費地(中国、米国、EU)と5つの基幹太陽光発電基地を結ぶグローバル電力ネットワークの原型的モデルについて考察し、必要となるシステムへの要求を検討した。
著者
梅田 富雄
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.125-134, 2009-04-18

システムエンジニアリング方法論は、1960年代に基本的な枠組みが提唱され、代表的なA.D.Hallの方法論には、プロジェクトのライフサイクルに基づく業務遂行フェーズと課題設定から始まる業務遂行ステップおよびそのために必要な専門領域に関わる知識群が織り込まれ、3次元の形態学的フレームワークとして構造化されている。しかしながら、現在ではプロジェクトマネジメントとシステムエンジニアリングは、統一されたフレームワークとして認識されていないように感じられる。本研究では、方法論に関する共通理解がグローバルな業務展開には必要であると考え、プロジェクトをコンテキストとして実行する視点から、企業の求める事業戦略と合致した問題解決のためのシステムエンジニアリング方法論を展開する。
著者
清水 基夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.27-36, 2009-04-18

マネジャーの活動は3種類の複雑なシステムを対象とする。製品やその生産設備など活動の直接的対象である「ターゲット・システム」は「詳細化の複雑性」が基本で、マネジャーの主要な武器はシステムズエンジニアリングである。ターゲット・システム実現のために活動する「組織」はマルチエージェントという意味で「動的複雑性」であり、マネジャーはリーダシップを頼りとして対処する。そしてこれらを包み込み影響を与える「環境」(市場、社会など)という非線形に変化する「動的複雑性」に対し、マネジャーは「戦略」を武器に、ターゲット・システムという「詳細化の複雑性」を用いて対処する。本稿では、複雑性とマネジメント、そして組織の戦略について考察する。