著者
浜 由樹子
出版者
静岡県立大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2019

本研究は海外の研究機関での国際共同研究を計画の基本としているが、新型コロナ・ウィルス感染症の世界的な拡大を受け、予定していた期間中の渡航が叶わず、また、所属予定の機関でも海外からの研究者の受け入れを停止しているため、2020年度はほとんど進展をみることができなかった。参加を予定していた国際学会もすべて延期・中止となったので、学会での成果の発表やフィードバックを受けることもかなわなかった。渡航前にできることとして、共同研究者へのプロポーザルとして、英語での論文執筆を進めているが、ロシアでの(公文書を含む)一次資料の補強ができない状況であるため、基課題で収集済みの二次資料に大きく依拠するものとなっている。新たに入手した二次資料を整理し直す過程で、書評を1本、論文を1本執筆したが、これらは掲載待ちの状態で、未刊行である。今後、渡航の目途がいつ頃立つのかがまったく不透明だが、オンラインでも実施可能な海外の研究者との共同研究の形態、内容の修正を考えていく必要があるだろう。また、ネオ・ユーラシア主義とも地政学とも関係の深い「ファシズム」概念を、ロシアの地域的文脈の中で再検討するという方向に研究テーマを展開させており、研究の重層化を試みているところである。これは、アジア、とりわけ日本においても重要なトピックであるため、本研究の目的の基本路線は同じでありながらも、より広がりと厚みを持たせることにつながると見込んでいる。この研究成果は、2021年度中に刊行予定である。
著者
鶴田 幸恵
出版者
千葉大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2020

本研究は、女と男に二元化されない新しい性別概念である「ノンバイナリー」というアイデンティティ・カテゴリーがどのようなものかを、カナダでのフィールドワークとトランスジェンダー、ノンバイナリーの活動家へのインタビューをもとに明らかにする。インタビューによって得たデータを、社会学の一つの手法であるエスノメソドロジー・会話分析の方法を用いて分析することで、ノンバイナリー概念が相互行為の中でどのように使用されているのか、またそれによって性別という現象にどのような新たな理解がもたらされているのかを析出する。
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2022

刻々と変化するAIに関する規制の整備状況のなかでも、特に日本の法整備に影響を与え、かつ参考となるEUで進められるハードロー(法制度整備)的な枠組み構築の在り方の比較検討を進め、法規制や共同規制の在り方についても、国際共同研究を進めながら、一層の研究の深化を図る。特に、先進的かつ具体的な規制枠組みにつき、EUにおける先端技術にかかわる立法事例の積み重ねとともに、EUにみられる柔軟な調整機関・規制機関の設立の在り方、他国に影響を与える立法状況を、BREXITを含めた法的課題や影響が今後どのように変化していくのかという点を含めて注視し、比較検討したうえで、我が国への影響や課題について研究を行う。
著者
安田 洋祐
出版者
大阪大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2019

世界各国で貧富の格差や不平等が深刻な社会問題となっている。格差問題が「問題」であり続けている大きな理由は、格差を解消するような再分配の実現が様々な事情から難しいからだろう。基課題においては、この「再分配が難しい」という現実的な制約をモデルに取り込み、同質財市場における資源配分の問題を厚生経済学的な視点から検討した。国際共同研究では、同質財市場からより一般的なマッチング市場へと分析の拡張を行う。さらに、市場参加者たちのインセンティブを考慮に入れて、マーケットデザイン的な視点から分析を深める。具体的には、取引数量が競争市場よりも多くなるような具体的なメカニズムの検証や提案などを試みる予定である。
著者
城戸 康年
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2019

アフリカトリパノソーマ症は寄生性原虫Trypanosoma bruceiを病原体とする人獣共通感染症であり、ヒトに生じるアフリカ睡眠病(Human African Trypanosomiasis; HAT)は致死性疾患である。HATは血流のみに感染が限局している急性期と、数カ月から数年の経過で中枢神経へ進展する慢性期の2病期に大別されるが、ヒト慢性期の起因原虫はT. brucei gambienseという亜種である。しかし、家畜伝染病予防法の規制により日本で入手できるT.b.gambienseは限られ、マウスへの感受性が悪く、他の動物種を用いた実験も不可能である。2020年度には新型コロナウイルス感染症の流行拡大のため、研究代表者らはコンゴ民主共和国への渡航は出来なかったが、2019年度の本国際共同研究で実施したMastomys natalensis (African ratと総称されるサブ・サハラの固有種であり実験動物として供される) を用いた慢性期感染モデルの再現性の確認と解析を海外共同研究者と実施した。この慢性期モデルでは、数日ごとに末梢血中のトリパノソーマ原虫が出現と消失を繰り返し、慢性期の病態が完成し、実際に中枢神経へ病原体が浸潤することが確認できた。これはヒトの慢性期における病態と極めて類似しており、この感染実験系は良好な慢性期病態モデルであることがわかった。2020年度は、T.bruceiの急性期モデルに効果を示すアスコフラノンおよびその誘導体を用いて、慢性期モデルでも治療可能かどうかを検証したところ、急性期モデルでの効果と同等の効果が得られることが示唆された。