- 著者
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城戸 康年
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
- 巻号頁・発行日
- 2019
アフリカトリパノソーマ症は寄生性原虫Trypanosoma bruceiを病原体とする人獣共通感染症であり、ヒトに生じるアフリカ睡眠病(Human African Trypanosomiasis; HAT)は致死性疾患である。HATは血流のみに感染が限局している急性期と、数カ月から数年の経過で中枢神経へ進展する慢性期の2病期に大別されるが、ヒト慢性期の起因原虫はT. brucei gambienseという亜種である。しかし、家畜伝染病予防法の規制により日本で入手できるT.b.gambienseは限られ、マウスへの感受性が悪く、他の動物種を用いた実験も不可能である。2020年度には新型コロナウイルス感染症の流行拡大のため、研究代表者らはコンゴ民主共和国への渡航は出来なかったが、2019年度の本国際共同研究で実施したMastomys natalensis (African ratと総称されるサブ・サハラの固有種であり実験動物として供される) を用いた慢性期感染モデルの再現性の確認と解析を海外共同研究者と実施した。この慢性期モデルでは、数日ごとに末梢血中のトリパノソーマ原虫が出現と消失を繰り返し、慢性期の病態が完成し、実際に中枢神経へ病原体が浸潤することが確認できた。これはヒトの慢性期における病態と極めて類似しており、この感染実験系は良好な慢性期病態モデルであることがわかった。2020年度は、T.bruceiの急性期モデルに効果を示すアスコフラノンおよびその誘導体を用いて、慢性期モデルでも治療可能かどうかを検証したところ、急性期モデルでの効果と同等の効果が得られることが示唆された。