著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.91-109, 2015-10

豊かさを測るため,これまで経済的尺度(経済成長率や一人あたりGDP)が重視されたが,近年その不十分さが強く意識されるに伴って「幸福」についての関心が上昇し,関連研究も増加している。本稿は,経済学的視点のほか,思想史,倫理学,心理学,脳科学などの知見も取り入れながら考察した試論であり,概略次の主張をしている:(1)幸福を考える場合,その深さや継続性に着目しつつ(a)気持ち良い生活(pleasant life),(b)良い生活(good life),(c)意義深い人生(meaningful life; eudaimonia)の3つに区分するのが適当である。(2)このうち(c)を支える要素として自律性,自信,積極性,人間の絆,人生の目的意識が重要であり,これらは徳倫理(virtue ethics)に相当程度関連している。(3)今後の公共政策運営においては,上記(a)にとどまらず(b)や(c)に関連する要素も考慮に入れる必要性と余地がある一方,人間のこれらの側面を高めようとする一つの新しい思想もみられ最近注目されている。(4)幸福とは何かについての探求は,幅広い学際的研究が不可欠であり今後その展開が期待される。【研究メモ/Research Memoranda】
著者
秋月 望
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-14, 2020-03

【研究ノート/Research Note】
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.46, pp.19-49, 2014-10

「自分にしてもらいたくないことは人に対してするな」(禁止型)あるいは「自分にしてもらいたいように人に対してせよ」(積極型)という格言がある。これは,洋の東西を問わず古くから知られた倫理命題であり,一般に黄金律(Golden Rule)と称されている。本稿の前半では,その生成と発展の歴史を簡単にたどるとともに,この格言の意義を考察した。その結果(1)禁止型を積極型へ明確に変更したのはキリスト教の聖書である,(2)黄金律は宗教や文化を超えて道徳の基礎となっているので普遍性があり,またそれは相互性,論理整合性,人間の平等性といった重要な原則も主張している,一方(3)自分と相手の価値観に差異がある場合にはそのルールの適用に留意が必要である,などを主張した。本稿後半では,黄金律よりも視野を拡大し,世界中の多くの宗教や文化に共通する規範になっている利他主義(他人の幸せに関心を払う主義ないしそのための行動)を取り上げた。そして,利他主義の動機をどう理解すべきかについて,多様な分野(社会科学,生物学,神経科学等)の研究や実験結果を展望することによって多面的に考察した。その結果(1)人間は利己主義的動機に基いて利他的行動を示す場合もある一方,他人の利益だけを考慮して行動するケースも確かにあること,(2)利他主義(与えること)は与える人の健康と幸福にとって良い効果を持つこと,(3)この(2)のことが利他主義の普遍性を支える一つの要因になっている可能性があること,などを述べた。【研究メモ/Research Memoranda】
著者
大川 玲子
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.163-180, 2017-03

【研究メモ/Research Memorandum】■特集テーマ 「マイノリティの視点から」/Special Topic: From the Perspective of Minorities
著者
戸谷 浩
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.129-149, 2017-03

【研究ノート/Research Notes】■特集テーマ 「マイノリティの視点から」/Special Topic: From the Perspective of Minorities
著者
新開 潤一 Jun-ichi Shinkai
雑誌
国際学研究 (ISSN:21868360)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.115-124, 2017-03-30
著者
尹 盛熙 Sunghee Youn
雑誌
国際学研究 (ISSN:21868360)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.87-92, 2017-03-30
著者
サンベック リー
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.25-47, 2015-10

日本の為替政策に関しては多くの先行研究があるが、70 年代半ばから後半までの期間を包括的に分析した先行研究は比較的少ない。そのため当該期間における為替市場と為替政策に関する全体的な流れを把握するのが容易ではない状況にある。本稿では、まずこの時期の展開を時系列に沿ってなるべく前後隙間なく理解できるように、先行研究を参考にしながら、その他の学術論文、政府刊行物、当時の新聞や経済雑誌の記事、回顧録を幅広く活用した。そしてその過程で、変動相場制と為替介入をめぐる当局者含む専門家達の認識が如何に変化し、その変化の要因が何であったのかを探った。結果、アメリカを筆頭とする海外からの圧力、保護主義台頭と市場開放への恐れ、投機資本による市場圧力、そして「国際金融のトリレンマ」による金融・為替政策上の制約が大きく作用したことを明らかにした。【論文/Articles】
著者
涌井 秀行
出版者
明治学院大学国際学研究会
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-22, 2011-10

新幹線,超高層ビル,自動車,そして半導体技術をはじめとするハイテク産業。東京都のGDPはオーストラリア一国に匹敵し,2009年までは,日本のGDPは世界第2位の規模であった。誰もが,日本が「高度に発達した資本主義国」であるということを疑わないだろう。だが戦後日本の経済は,前近代的な土地所有を基盤に発展したのである。欧州諸国は資本主義の成立過程(本源的蓄積)で,長い時間をかけて封建的土地所有を近代資本制的土地所有へと編制替えしてきた。農業をともかくも資本主義的農業・産業へとつくりかえたのである。しかし日本ではこの過程を経ることなく,またその暇もなく資本主義国へと転換せざるを得なかった。いや,むしろ戦前の「富国強兵」・急速な近代化の過程では,この半封建的土地所有・寄生地主制が近代化を促進したのである。戦後においても零細農地・農耕=宅地所有が「高度成長」を促進した。戦前も戦後も「前近代の存在がむしろ超近代を加速」(内田義彦)したのである。本稿は,戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とした「土地所有」にあり,その核心は零細農耕=稲作で陶冶された労働力にあることを論証し,この解決をとおして日本の変革を展望しようとする試論である。有効な制限原理,社会的な「公共財」としての性格を持たない,封建領主顔負けの土地所有こそ戦後日本の【基盤】であり,この【基盤】土地問題の解決なしには日本の変革と楊棄はあり得ないだろう。小稿は戦後日本資本主義を規定した国内要因=基盤が「零細土地所有=零細農耕」を核とする「土地所有」であることを論証し,「失われた20年」「閉塞感」打破の国民的立場に立った道筋を見出そうとする問題提起である。論文
著者
藤嶋 亮
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.63-86, 2011-03