著者
木村 直弘
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.115-136, 2015-03-10

宮崎駿と並ぶ日本アニメ映画界の「レジェンド」で1998年には紫綬褒章を受章し,2015年には『かぐや姫の物語』で第87回アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされるなど今日国際的な評価を得ている高畑勲監督(1935年生)は,2014年10月,NHKテレビのインタビュー(1)で,宮澤賢治作品をアニメ化することについて問われた際,「僕にとっては,畏れ多い」と答えている。以前,5年の月日を費やしてアニメ映画『セロ弾きのゴーシュ』を自主制作したこともある高畑に賢治作品への畏敬の念が本当にあったかどうかについてはさて措き(2),賢治作品について高畑がこのようなイメージをもつに至ったのは,1939年,賢治没後初めて出版された子ども向け童話集『風の又三郎』(坪田譲治解説,小穴隆一画,羽田書店)を読んだという彼の最初の賢治体験に依るところが大きい。羽田書店は,この前年,賢治の盛岡高等農林学校時代の後輩でその思想に多いに影響を受け農村劇活動などを実践した松田甚次郎の『土に叫ぶ』を刊行し,ベストセラーになった。同店はその余勢を駆って,松田編の『宮澤賢治名作選』を1939年3月に刊行,これが賢治の童話作家としての名声が広まる大きなきっかけとなったことはよく知られている。このいわば大人向けの選集の好評を受け,さらに同年12月に子ども向けとして刊行されたのが童話6編を収めた前掲『風の又三郎』で,当時文部省推薦図書指定を受け,これも多くの子どもたちに読まれた。さらに,翌1940年10月には,日活によって映画化された『風の又三郎』(監督:島耕二)が公開され,「はじめての児童映画の誕生」ともてはやされ「文部省推薦映画」となり,映画文部大臣賞を受賞,宮澤賢治の名は人口に膾炙することになる。同年,小学校三年生の時に故郷岡崎で観たこの映画や小学校六年生の時に読んだ〈銀河鉄道の夜〉の「すごくメタリックに光る,キラキラした印象」(3)をもとに,名実ともに「一大交響楽」(4)を作曲したのが,高畑より3歳年上のもう一人の「勲」,すなわち,数多くの映画音楽やテレビ番組の音楽を手がけ,またシンセサイザー音楽で世界的に評価されている作曲家・冨田勲(賢治没年の前年である1932年生)である。
著者
中村 好則
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.79-88, 2016-03-31

近年,知識基盤社会や少子高齢化,高度情報化,国際化の進展など,変化の激しい時代を迎え,日本も多くの課題を抱えている。そのような変化の激しい時代に主体的に生きる子供たちを育てる教育の実現が喫緊の課題とされている。そうしたなか,平成26年12月に中央教育審議会が「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」を公表した。答申では「そうした教育の実現に資するよう,学校制度を子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的なものとすることで,制度の選択肢を広げること(p.1)」を提言している。具体的には,小中一貫教育の制度化である。さらにその答申では,小中一貫教育の取組は全国的に広がり,今後さらなる増加が見込まれること(p.7)が述べられている。しかし,小中一貫教育を推進するに当たり,算数数学の指導ではどうあればいいのかは具体的には述べられていない。算数数学は,学習内容の系統性が強い教科であるとともに,小学校算数から中学校数学への変化が大きく「中1ギャップ」を起こしやすい教科とも言われ(川上2010),小中一貫教育においては最も検討が必要な教科と考えられる。小中一貫教育等についての実態調査(文部科学省2015)では,小中連携教育を「小・中学校が互いに情報交換や交流を行うことを通じて,小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す様々な教育」,小中一貫教育を「小中連携教育のうち,小・中学校が子供像を共有し,9年間を通じた教育課程を編成し,系統的な教育を目指す教育」と定義している。つまり,小中一貫教育は,小中連携教育に含まれると考えられる。そこで,本論では,小中連携教育という大きな枠組みの中で,算数数学の指導はどうあればよいかを検討することとする。特に,小中連携における学習系統を捉えた算数数学指導とその留意点について考察することを目的とする。そのために,まず,全国学力・状況調査の結果から学習系統を捉えた指導について考える際に考慮すべき点を考察する第2章)。次に,先行研究をもとに学習系統を捉えた指導とはどのような指導であるかを明らかにする(第3章)。さらに,前節までの考察結果と教科書や学習指導要領の記述内容から,学習系統を捉えた指導において概念や意味などが拡張される場面等を具体的に検討する(第4章)。最後に,小中連携における学習系統を捉えた指導とその留意点をまとめ,今後の課題を述べる(第5章)。
著者
山本 裕之 小寺 香奈
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.67-80, 2009-03

1920年代にC.アイヴズ、A.ハーバらによって実践された4分音などの微分音は、その後のヨーロッパ音楽において現代的奏法の中でも重要項目として扱われてきた。彼らが微分音に挑戦した当時のヨーロッパは平均律(12等分平均律)の概念が席巻して既に久しい。かつてのヨーロッパで長期にわたって繰り広げられてきた音律論争において、それぞれの音律の間に存在した非常に小さなどツチ(音高)の差は、19世紀という様々な調性を用いた時代の要請に応えて12等分平均律という画期的な妥協案に収れんした。西洋音楽文化の外にある各民族音楽の音律を除外して考えれば、微分音とはいったん世界標準として目盛りが敷かれた平均律からあらためて外れたピッチ、または音程のことを指す。 とはいえ、オルガンのように一度調律したらそうたやすくは調律が崩れないような楽器はわずかであり、それどころか多くの楽器では奏者がその場で随時楽器のピッチをコントロールしながら演奏する。19世紀に作られたキーをたくさん持つ木管楽器や、H.シュトルツェルなどが発明したヴアルヴをもつ金管楽器群は、それ以前の楽器に比べて格段に多くのピッチを安定させながら自在に鳴らせるように設計されている。が、その中で奏者はさらに楽器の精度と共に自らの耳と発音テクニックによって出来るだけ「正しい」ピッチを作り出そうと技術を磨いた。しかし実際の演奏では厳格に正しく、19世紀以降の「半音階の分かりやすい知的モデル」である平均律に即した音律で演奏されるわけではない。音楽のイントネーションに合わせて、あるいは奏者や楽器自体のコンディションに即して、平均律から大きく外れないピッチを作りながら演奏されるのが常である。したがって、例えばある音が僅かに数セントの単位で平均律からずれたからといってもそれは「ある音」の範囲を越えず、微分音の概念で語られるわけではない。 つまりこれらのような木・金管楽器は、音楽的内容に即して随時平均律から逸脱して演奏されることを前提としながらも、平均律を原則として作られている。したがって、そのような楽器であえて微分音を作り出すことは矛盾であるが、楽器の構造上は不可能ではない。すなわち、楽器はそのように作られてはいないが不可能ではないのである。 20世紀後半になって微分音が作品の中で頻繁に使われ始めると、各楽器の現代奏法を解説する書物には必ずといってよいほど微分音の運指表が掲載されるようになった。特に木管楽器の書物では多くのキーの組み合わせによって膨大な微分音の可能性が提示されている。金管楽器においては、楽器の機構上木管楽器のように膨大な微分音が作り出せるわけではないが、それでも実用的な量は作り出せる。しかしそのための資料が木管楽器ほど多いわけではない。そこで本稿では、金管楽器の中でも特に現代奏法に関する資料がほとんど書かれていないユーフォニアムにおいて、これまで存在しなかったこの楽器のための汎用的な微分音スケールを提示することを目的とした。
著者
安井 萠
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.29-40, 2013-03-31

世界史(外国史)の授業は一般に、時代や地域ごとに史実を概説する形で行われる。こうしたやり方に多大な利点があることはなるほど間違いない。だが私見によれば、学習者の思考力を高める上で、時に時代や地域の枠を越えた「大きな絵」を描いてみることも大切ではないかと思われる。本稿では、そのような認識のもと筆者が企画・試行したある授業を、一つの実例として紹介したいと思う。紹介するのは「共和政の歴史的展開」と題する授業である。これは、西洋世界における共和政の理念ならびに共和政国家(共和国)の展開の歴史を古代から近代までたどるという内容のもので、この授業を通じ学習者が西洋史の全体的なつながりを意識するようになることを狙いとしている。筆者はもともとこれを大学の講義用に作成した。しかしその後高校世界史にも応用できるよう手直しし、まず岩手大学教育学部世界史研究室のゼミで試行的に授業を行った。そしてさらに岩手大学世界史研究会の例会で発表し、高校教員の会員から意見を聞いた。以下では、これら二度の試行を踏まえて仕上げた授業の原稿を掲げ、関係者の参考に供することとしたい。(授業の言葉づかいは、冗長を避けるため「である」調とした。本文の見出しと註は今回新たに付したものである。)
著者
安川 洋生
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.125-129, 2016-03-31

ネグレリアフォーレリ(Naegleria fowleri)は温水を好む病原性アメーバで,ヒトの鼻腔から大脳に侵入し大脳組織の軟化や出血を伴う壊死(原発性アメーバ性髄膜脳炎; PAM)を引き起こす。PAMの進行は急速で有効な治療法もなく,約2週間でほとんどの患者が死に至り,臨床では僅かな生存例があるのみである。筆者は,ネグレリアフォーレリの分子生物学的解析を行い本病原体の特性と病原性を理解するとともに迅速簡便な検出法の開発を目的として,本邦で分離された株について次世代シーケンサによる全ゲノム解析を行った。その結果,本株のゲノムサイズは27.61Mb,GC含量は35.7%,遺伝子数は15108であることが分かった。また,青色光受容ドメインを有するタンパク質が2種類コードされていることが分かり,本病原体が青色光に応答する可能性が示唆された。
著者
中村 好則
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.15, pp.69-78, 2016-03-31

平成26年6月24日に閣議決定した世界最先端IT国家創造宣言において「学校の高速ブロードバンド接続,1人1台の情報端末配備,電子黒板や無線LAN環境の整備,デジタル教科書・教材の活用等,初等教育段階から教育環境自体のIT化を進め,児童生徒等の学力の向上と情報の利活用の向上を図る」ことが,さらに「これらの取組により,2010年代中には,全ての小学校,中学校,高等学校,特別支援学校で教育環境のIT化を実現するとともに,学校と家庭がシームレスでつながる教育・学習環境を構築し,家庭での事前学習と連携した授業など指導方法の充実を図る」ことが述べられ,政府主導で教育の情報化が進められている。また,文部科学省では,平成26年度にICTを効果的に活用した教育の推進を図ることを目的に,教育効果の明確化,効果的な指導方法の開発,教員のICT活用指導力の向上方法の確立を図るためにICTを活用した教育の推進に資する実証事業を行い,成果報告書や手引き書を公表している(ICTを活用した教育の推進に資する検証事業,2015)。さらに,総務省でも,平成26年6月から「ICTドリームスクール懇談会」を開催し,教育分野におけるICT活用の推進に取り組み,平成27年4月に中間取りまとめを公表している。これらのことからも,教育の情報化は着実に進展している。しかし,学校現場ではどうだろうか。文部科学省や総務省,県や市などの研究指定校や先進的に研究に取り組んでいる学校だけがICTを活用した実践に取り組み,それ以外は従来からの指導とあまり変わらない現状があるのではないだろうか。特に,数学指導においては,ICT活用よりも,紙と鉛筆による指導こそが重要だという教師の思い込み(固定観念あるいは素朴な考え方)がある(例えば,中村2015a)。中学校においても,電子黒板やパソコン,タブレット等のICT 環境が徐々に整備され(平成26年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果,文部科学省2015),それらを数学指導においても有効に活用することが求められている。しかし,数学指導において「なぜICTを活用するのか(ICT活用の目的)」,そのために「どのようにICTを活用するのか(ICT活用の方法)」が,学校現場において十分に理解されていない。そこで,本研究では,中学校学習指導要領とその解説及び教科書を基に,数学指導におけるICT活用について検討し,中学校の数学指導におけるICT活用の方向性(目的と方法)を明らかにすることを目的とする。そのために,平成20年版の中学校学習指導要領とその解説におけるICT活用に関する記述内容を調査する(第2章)とともに,中学校数学の平成27年検定済みの教科書におけるICT活用の取り扱いを分析(第3章)し,それらを基に中学校の数学指導におけるICT活用の方向性を考察する(第4章)。最後に,本研究のまとめと課題を述べる(第5章)。
著者
渡瀬 典子
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.169-178, 2016-03-31

衣生活・食生活の外部化が進展する現在,家庭科教育では生活実態との関連から「消費」にかかわる教育内容の開発・実践に関心が集まっている。その一方で,児童・生徒が自ら製作をする技術的側面の育成は授業時間数減などを背景に精選・縮減される傾向にある。この状況は,子どもを取り巻く家庭・社会の変化に加え,家庭科教育の履修形態の変化―男女別学から男女共修―も要因のひとつに挙げられる。家庭科は,小学校5年生から高等学校まで男女必修の教科になって20年以上が経過した。男女必修に至った経緯は各学校段階で様々であるが,本報告では,新学制後に誕生した中学校の「技術・家庭科」に注目したい。「技術・家庭科」の前身は「職業・家庭科」という教科であり,その性格について当時の文部省事務官だった長谷川は「戦後行われた教育制度や教育課程の改革の際に,従来ともかく生活から遊離しがちな教育全般の課程の中で,生活と直接的な関連を保ち,それに必要な技術の習得を目的とし,身体を動かして労働一般の体験を得させることを目的として設置された」と述べ,「職業・家庭科」は「生活技術」を習得する教科,と捉えている(長谷川 1953)。「生活技術」という言葉は,話者・文脈・時代の違いによって,様々な意味づけがされる。例えば,三木(1941) は,「生活技術」を「生活文化を作ってゆくことに関するすべての技術」であり,「生活技術の全体を統轄する技術,技術の技術ともいふべきもの,この理念的技術的なものが叡智にほかならない」として生活を俯瞰し,捉える見方を示した。また,長谷川は「生活技術」を「実生活に役立つ知識・技能」であり,「閉じられた狭い社会,地域社会,更に学校や家庭内における『実生活に役立つ仕事』に含まれる技術」,「実生活に対処して起こる各様の物事をうまく処理し,それを切り抜けていく能力や態度」として「実生活」場面を重要な要素に挙げた。この「生活技術」とは別に「生産技術」という言葉も後の「技術・家庭科」を考えるうえで重要なワードである。長谷川は当時の農村では「生産技術と生活技術とは一体であり,不即不離」で,都市では「『生活技術』はたかだか『生産技術』の部分的な応用の技術であり,それの消費者の技術にすぎない」と捉え,生産が国民生活の発展向上になれば「『生活技術』は『生産技術』の基礎として,生徒の日常の生活の中から選び出され,普通教育の内容として編成できる」と考えた。ここでの長谷川による「生活技術」が示す対象範囲は極めて広義である。1958(昭和33)年の教育課程審議会では中学校の教育課程に必修教科として「技術科」を置くと答申し,技術科は「現行の職業・家庭科(必修)を改め,これと図画工作科において取り扱われてきた生産的技術に関する部分と合わせて技術科を編成」とした。後に家庭科教育関係者からの要望によって,教科名は現在の「技術・家庭科」という名称に落ち着くが,当時の技術科からは,「男子に『生産技術の基礎』を指導し,女子に『生活技術の基礎』を指導しようとするのが学習指導要領の精神であるのが,この二つの分野を技術の観念を以て統一した『技術・家庭科』とするためには『生活技術の基礎』を本来の技術であるように組織替えしなくてはならない」という批判的見解が,また家庭科側からは「家庭科は家庭生活の科学的・技術的・経営的な向上を目標とする教科であるから,寸断された技術の修練によって, その目的を達成することはできない。個々の技術が集ったのが家庭生活であるかのように見るのは誤謬である」との反駁があった(常見 1954)。以上の状況から,技術の学習に対するスタンスが当時の家庭科、技術科双方において異なっていたことがわかる。同様に,当時の家庭科教育関係者は「『技術』を学習すること自体に価値を認めるというよりも,『技術』を学習することにより,さらに上位の何ものかを習得することが大切」で「『技術』は目的に対する手段の位置に置かれていた」と見ていた。これは「( 戦前の家事・裁縫教育とは異なる)『新しい家庭科』を創ろうとする立場」からなされたものであった(朴木 1993)。また,鈴木(2004)は「生活技術」が固定的なものではなく「自らの身辺的自立に処したりする技術にとどまるものではない」と述べている。以上の歴史的経緯を受け,本稿では「手芸」,とくに「編み物」教材に焦点を当てる。寒冷地である東北地方で生活する生徒にとって,編み物や毛糸製品の被服管理は,「技術・家庭科」発足当時から重要な学習内容だった。また,増田(1997)は「編むという手仕事は,人が衣服を体に付け始めたころには発生していたとみられ,長い歴史を持っている」文化的な生活の技術であることを述べている。そこで,本報告は中学校「技術・家庭科」の「手芸」における「編み物」教材で育成しようとした能力観とその課題について明らかにすることを目的とする。
著者
工藤 あい李 吉井 洋二
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.61-68, 2016-03-31

Repeating decimals are taught in elementary, junior high and high school. However, they are usually not taught in university mathematics. We should learn the deep theory and some mystery of repeating decimals, and use them for teaching in several stages. We introduce some interesting examples of repeating decimals, and explain the mathematical background.
著者
渡瀬 典子 長澤 由喜子 菊地 尚子 川越 浩子 羽澤 美紀
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-8, 2010-02

2005(平成17)年に成立した「食育基本法」では、食育を「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」ものとし、国民運動として推進することが明記されている。また、同法の第5,11,20条等では、学校が家庭、地域の諸機関とともに、子どもへの「食育」を推進する役割・責務を負うことが述べられている。学校教育における“食育”は、その呼称は異なるものの、食生活改善をはじめとする様々な実践が積み上げられてきた。その中で、「りんごの皮が適切にむける(注1)児童は28.6%」(文部省 1984)等の基本的な生活技術の定着に関わる課題が高度経済成長期以降、顕著に指摘されるようになった。同じ時期に、東北地区の家庭科教育学会では、家庭科教育において「生活の機械化や社会化をどう受け止めるか」、「子どもの心身発達を支えるための生活技術教育をどう捉えるか」を課題とし(壁谷沢 1985)、1985(昭和60)年に児童・生徒の食生活領域を含む「家庭生活技術の実技調査」が実施された(以後、「 年調査」と記述)。この中で用いられる「生活技術」という用語について、本研究では、「人間が日常生活を主体的に営むために生活環境に働きかける方法、手段であり、総合生活技術、情報による技術、家族関係を調整する技術、精神的な技術など、無形なもの、意思決定にかかわる領域も含む広範なもの」(中間 1987)と捉える。 この「生活技術」について1985年調査当時の『小学校学習指導要領家庭編(1977年改訂)』、現行学習指導要領(1998年改訂)、新学習指導要領(2008年改訂)の食生活に関する記述を見ると、基礎的な「調理技術力」と「献立作成力」が抽出される。具体的には、「食品を組み合わせて取る必要があることを知る」、「1食分の献立(注2)」、「調理に必要な材料の分量がわかり、手順を考えて調理計画を立てる」という「献立作成力」と、「調理に必要な用具及び食器の安全で衛生的な取扱い(並びに燃料(注3))及びこんろの安全な取扱いができること」、「ゆでたり、いためたりする」調理、「米飯、みそ汁の調理」、「盛り付けや配膳」といった「調理技術力」に関わるところであり、これらは一貫して、その「内容」に挙げられてきた。 そこで本研究は、現代の小学生が1食分の献立を整えるために、食材をどのように選び、調理できるかという献立作成力と基礎的な調理技術力に注目し、25年前の「 年調査」と比べ、どの点で技能の定着・応用に課題があるのかを明らかにする。また、ここで得られた示唆をもとに、小学生の「献立作成力」「調理技術力」を高めるための学習課題について検討する。
著者
佐々木 全 名古屋 恒彦
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.14, pp.409-421, 2015-03-10

筆者らは高機能広汎性発達障害等注)のある小学生らを対象としたエブリ教室を開催している(佐々木,加藤,2011 1)).その目的は参加児にとっての休日生活の充実である.エブリ教室では,その活動内容としてタグラグビーを設定した.タグラグビーとは,ラグビーの簡易普及版である.タグラグビーは,タックルなどの接触プレーを排除した安全なスポーツであることが指摘されがちだが,実は,接触プレーを排除したことによって独自の競技特性を有すことになり(鈴木,2012 2)),そこに競技としての面白さが生まれている. また,タグラグビーは,平成20年版小学校学習指導要領解説における例示種目の一つとなり,以後その教材研究が徐々に進められている.その内容は当然ながら,小学校体育の授業における内容であり,そこでの展開方法や内容,具体的な競技にかかる知識技能,例えば,状況判断やパスなどの習得や発揮などに関する指導方法に関する実践的,実証的な研究がある(例えば,鈴木,2009 3);永友,勝田,2009 4);杉田,2010 5);木内,2012 6)).タグラグビーに関する研究において,対象者を高機能広汎性発達障害等のある児と限定し,かつ実践の場を学校の授業以外の活動とし,さらに,タグラグビーやラグビー経験のないボランティアを主たる支援者とし,共にプレーしながら支援するという実践方法という点で,エブリ教室の実践及び本研究は類を見ない.