著者
渡瀬 典子
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.169-178, 2016-03-31

衣生活・食生活の外部化が進展する現在,家庭科教育では生活実態との関連から「消費」にかかわる教育内容の開発・実践に関心が集まっている。その一方で,児童・生徒が自ら製作をする技術的側面の育成は授業時間数減などを背景に精選・縮減される傾向にある。この状況は,子どもを取り巻く家庭・社会の変化に加え,家庭科教育の履修形態の変化―男女別学から男女共修―も要因のひとつに挙げられる。家庭科は,小学校5年生から高等学校まで男女必修の教科になって20年以上が経過した。男女必修に至った経緯は各学校段階で様々であるが,本報告では,新学制後に誕生した中学校の「技術・家庭科」に注目したい。「技術・家庭科」の前身は「職業・家庭科」という教科であり,その性格について当時の文部省事務官だった長谷川は「戦後行われた教育制度や教育課程の改革の際に,従来ともかく生活から遊離しがちな教育全般の課程の中で,生活と直接的な関連を保ち,それに必要な技術の習得を目的とし,身体を動かして労働一般の体験を得させることを目的として設置された」と述べ,「職業・家庭科」は「生活技術」を習得する教科,と捉えている(長谷川 1953)。「生活技術」という言葉は,話者・文脈・時代の違いによって,様々な意味づけがされる。例えば,三木(1941) は,「生活技術」を「生活文化を作ってゆくことに関するすべての技術」であり,「生活技術の全体を統轄する技術,技術の技術ともいふべきもの,この理念的技術的なものが叡智にほかならない」として生活を俯瞰し,捉える見方を示した。また,長谷川は「生活技術」を「実生活に役立つ知識・技能」であり,「閉じられた狭い社会,地域社会,更に学校や家庭内における『実生活に役立つ仕事』に含まれる技術」,「実生活に対処して起こる各様の物事をうまく処理し,それを切り抜けていく能力や態度」として「実生活」場面を重要な要素に挙げた。この「生活技術」とは別に「生産技術」という言葉も後の「技術・家庭科」を考えるうえで重要なワードである。長谷川は当時の農村では「生産技術と生活技術とは一体であり,不即不離」で,都市では「『生活技術』はたかだか『生産技術』の部分的な応用の技術であり,それの消費者の技術にすぎない」と捉え,生産が国民生活の発展向上になれば「『生活技術』は『生産技術』の基礎として,生徒の日常の生活の中から選び出され,普通教育の内容として編成できる」と考えた。ここでの長谷川による「生活技術」が示す対象範囲は極めて広義である。1958(昭和33)年の教育課程審議会では中学校の教育課程に必修教科として「技術科」を置くと答申し,技術科は「現行の職業・家庭科(必修)を改め,これと図画工作科において取り扱われてきた生産的技術に関する部分と合わせて技術科を編成」とした。後に家庭科教育関係者からの要望によって,教科名は現在の「技術・家庭科」という名称に落ち着くが,当時の技術科からは,「男子に『生産技術の基礎』を指導し,女子に『生活技術の基礎』を指導しようとするのが学習指導要領の精神であるのが,この二つの分野を技術の観念を以て統一した『技術・家庭科』とするためには『生活技術の基礎』を本来の技術であるように組織替えしなくてはならない」という批判的見解が,また家庭科側からは「家庭科は家庭生活の科学的・技術的・経営的な向上を目標とする教科であるから,寸断された技術の修練によって, その目的を達成することはできない。個々の技術が集ったのが家庭生活であるかのように見るのは誤謬である」との反駁があった(常見 1954)。以上の状況から,技術の学習に対するスタンスが当時の家庭科、技術科双方において異なっていたことがわかる。同様に,当時の家庭科教育関係者は「『技術』を学習すること自体に価値を認めるというよりも,『技術』を学習することにより,さらに上位の何ものかを習得することが大切」で「『技術』は目的に対する手段の位置に置かれていた」と見ていた。これは「( 戦前の家事・裁縫教育とは異なる)『新しい家庭科』を創ろうとする立場」からなされたものであった(朴木 1993)。また,鈴木(2004)は「生活技術」が固定的なものではなく「自らの身辺的自立に処したりする技術にとどまるものではない」と述べている。以上の歴史的経緯を受け,本稿では「手芸」,とくに「編み物」教材に焦点を当てる。寒冷地である東北地方で生活する生徒にとって,編み物や毛糸製品の被服管理は,「技術・家庭科」発足当時から重要な学習内容だった。また,増田(1997)は「編むという手仕事は,人が衣服を体に付け始めたころには発生していたとみられ,長い歴史を持っている」文化的な生活の技術であることを述べている。そこで,本報告は中学校「技術・家庭科」の「手芸」における「編み物」教材で育成しようとした能力観とその課題について明らかにすることを目的とする。
著者
日影 弥生 中屋 紀子 渡瀬 典子 長澤由喜子 浜島 京子 黒川 衣代 高木 直 砂上 史子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.5, 2003

1.はじめに 第3報では、『家庭生活についてのアンケート』中の母親と父親の職業の視点から全国と東北のデータについて比較分析することを目的とした。2.方法(1)調査対象および調査時期対象者は全国では6959名(小4;1484名、小6;1514名、中21;1870名、高2;2091名)、東北では3070名(小4;621名、小6;792名、中2;686名、高2;971名)とした。なお、この人数はアンケートの全ての項目に回答した者としたため、第1報および3報とは異なる結果となった。(2)調査時期およびアンケート項目、これらは全国調査と同じであるため省略した。(3)分析方法アンケート項目の「あなたのお母さん(またはお父さん)はどのような仕事をしていますか。」の回答と他の項目とをクロス集計し、検定により有意差を調べた。3.結果および考察(1)母親と父親の就労の有無とその形態a)労働をしている母親と父親の割合母親と父親が労働してるかどうかの観点から、その割合をみた。その結果、両親が働いている家庭は全国S8.1%、東北61.7%、母親だけが働いている家庭は全国 3.0%、東北 4.9%、父親だけが働いている家庭は全国20.6%、東北18.6%となり、両親と母親だけが働いている家庭は東北の方が多く、父親だけが働いている家庭は全国の方が多い結果となった。この傾向は、各学年でもほぼ同様となったが、中学2年生の両親が働いている家庭は全国79.0%と東北62.8%となり、他と異なる結果となった。b)母親と父親の就労形態 両親ともフルタイム就労家庭は全国21.4%、東北29.3%、母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労の家庭は全国23.4%、東北17.1%、母親が無聯で父親がフルタイム就労の家庭は全国17.0%、東北14.3%となり、全国に比べて東北では両親ともフルタイム就労の家庭が多く、母親がパートタイム就労や無職の家庭は少ないことがわかった。(2)母親と父親の就労職業からみた子ども達の生活実態両覿の就労形態のうち代表的と思われる「両親がフルタイム就労」、「母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労」、「母親が無職で父親がフルタイム就労」の3つの形態の家庭について子ども達の生活実態を分析した以下は、t検定の結果、有意差がみられたものについて示した。「両親がフルタイム就労」では、東北の方が、朝ごはんを家族みんなと一緒に食べている家庭が多いこと、洗濯機で衣服の洗濯をし、とれたボタンつけをいつもする子どもが多いことがわかった。「母親がパートタイム就労で父親がフルタイム就労」では、朝ごはんの食べ方は全国では大人の誰かと一緒に食べている家庭が多いが、東北では家族みんなと一緒に食べている家庭が多いこと、また、全国の方が食事の用意をする母親が多いことがわかった。これらは、家族の人数や両親の通勤に要する時間などと関連することが推測された。
著者
渡瀬 典子 長澤 由喜子 菊地 尚子 川越 浩子 羽澤 美紀
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-8, 2010-02

2005(平成17)年に成立した「食育基本法」では、食育を「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」ものとし、国民運動として推進することが明記されている。また、同法の第5,11,20条等では、学校が家庭、地域の諸機関とともに、子どもへの「食育」を推進する役割・責務を負うことが述べられている。学校教育における“食育”は、その呼称は異なるものの、食生活改善をはじめとする様々な実践が積み上げられてきた。その中で、「りんごの皮が適切にむける(注1)児童は28.6%」(文部省 1984)等の基本的な生活技術の定着に関わる課題が高度経済成長期以降、顕著に指摘されるようになった。同じ時期に、東北地区の家庭科教育学会では、家庭科教育において「生活の機械化や社会化をどう受け止めるか」、「子どもの心身発達を支えるための生活技術教育をどう捉えるか」を課題とし(壁谷沢 1985)、1985(昭和60)年に児童・生徒の食生活領域を含む「家庭生活技術の実技調査」が実施された(以後、「 年調査」と記述)。この中で用いられる「生活技術」という用語について、本研究では、「人間が日常生活を主体的に営むために生活環境に働きかける方法、手段であり、総合生活技術、情報による技術、家族関係を調整する技術、精神的な技術など、無形なもの、意思決定にかかわる領域も含む広範なもの」(中間 1987)と捉える。 この「生活技術」について1985年調査当時の『小学校学習指導要領家庭編(1977年改訂)』、現行学習指導要領(1998年改訂)、新学習指導要領(2008年改訂)の食生活に関する記述を見ると、基礎的な「調理技術力」と「献立作成力」が抽出される。具体的には、「食品を組み合わせて取る必要があることを知る」、「1食分の献立(注2)」、「調理に必要な材料の分量がわかり、手順を考えて調理計画を立てる」という「献立作成力」と、「調理に必要な用具及び食器の安全で衛生的な取扱い(並びに燃料(注3))及びこんろの安全な取扱いができること」、「ゆでたり、いためたりする」調理、「米飯、みそ汁の調理」、「盛り付けや配膳」といった「調理技術力」に関わるところであり、これらは一貫して、その「内容」に挙げられてきた。 そこで本研究は、現代の小学生が1食分の献立を整えるために、食材をどのように選び、調理できるかという献立作成力と基礎的な調理技術力に注目し、25年前の「 年調査」と比べ、どの点で技能の定着・応用に課題があるのかを明らかにする。また、ここで得られた示唆をもとに、小学生の「献立作成力」「調理技術力」を高めるための学習課題について検討する。
著者
渡瀬 典子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<目的>近代の女子教育では「裁縫」に多くの時間が割かれ、余暇活動としてこれらの行為を行うことも奨励された。「社会生活基本調査」によれば「趣味・娯楽」として「編物・手芸」をする女性は32.4%(昭和61年)&rarr;19.3%(平成23年)、「和裁・洋裁」は28.7%&rarr;12.1%と減少している。しかし、昭和51年の同調査で「和裁・洋裁・手芸」を余暇活動に挙げた女性が9.0%だったことを考慮すると、バブル期前後にこれら行為を「余暇活動」として日常生活で楽しむ状況が生まれたと考えられる。本報告はNHK「婦人百科」(現在は「すてきにハンドメイド」)に焦点を当て、バブル期前後にあたる10年間に取り上げられたテーマと記事に付されたキャプションに注目し、「手芸」の意味付けについて考察する。「婦人百科」を分析対象としたのは80年以上に渡り手づくりに関する情報を提供してきたからである。<方法>「婦人百科」[No.241~336:1985年4月~1993年3月],「おしゃれ工房」[No.337~372:1993年4月~1996年3月]の記事にある「和裁・洋裁・手芸」のテーマ、各テーマについて付されたキャプションの内容分析を行った。<結果>「家族」のためだけではなく「自分」のため、「社会」のための手づくりという視点が見える。また、工程が複雑、高度な技術が必要な時間がかかる作品から「手軽に」作ることができるものへと変化している。
著者
渡瀬 典子 WATASE Noriko
出版者
日本家庭科教育学会東北地区会
雑誌
東北家庭科教育研究 (ISSN:1347331X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-6, 2006-10-01

2004(平成16)年度の「学校基本調査」(文部科学省)では,公立の小・中・高等学校,盲・聾・養護学校に在籍する外国人児童生徒数は約7万人で,バブル期を境にその全体数は減少傾向にある。その一方で,日本語を第一言語とせず,出身国の文化を背景に持つ子どもの数は増加傾向にあり,彼らの文化を尊重しつつ,日本の生活・日本語理解に関する指導が課題となっている。日本国内で生活し,他国の文化を持つ児童生徒を対象とする研究は,教育社会学によるアプローチが主流であり,教科教育研究はあまり見られない。この背景には,日本以外の国で長く暮らした帰国子女あるいはニューカマー(1980年代以降に来日し,定住した外国人)の児童生徒が大都市圏や一部の地域に眼定されており,全国共通のカリキュラム課題という認識をもちにくいことが挙げられる。一方,諸外国に目を転じると,多民族国家である北米・ヨーロッパ諸国では,大量の難民・移民の流入によって国民の民族構成に大きな変動が起こっている。例えば,多文化主義(国家を形成する各民族の文化を尊重し,民族の違いで自由,平等,正義,公正,人間の尊厳を妨げない考え方)をとり,移民の受け入れにも比較的寛容だったカナダでは1990年代以降トロント,バンクーバー等の大都市を中心にアジア系移民が急増した。2003年のカナダ市民権・移民省(Citizenship and Immigration Canada) の統計によると,今世紀に入り毎年20~25万人の移民者を受け入れており,2001年の国勢調査値ではバンクーバー(全人口約200万人)に居住する移民者74万人のうち約6割がアジア系移民である。これらの都市には,各民族が持つ生活文化を維持できるようなコミュニティ,生活資源の供給システムが構築されてきた。ここで多文化主義国家における多文化教育について若干の説明を加えたい。「多文化」を構成する軸には「民族・人種,国籍」のほかに,ジェンダー,障害の有無,地域,年齢等の要素がある。そしてそれぞれの軸が,ある社会の中で複合的に関わりあい,存在している。恒吉はこのような状況の中で,多文化教育を「多文化の共存する社会(世界)において,文化的多様性を肯定し,教育のプロセス,かくれたカリキュラム,学校の権力構造,既存のカリキュラム,教材,教育理念や教育の実践や方法などを見直し,少数者を含む全ての学習者の学習を保障し,より公正な多文化社会の実現に向けた資質を育成,改革するプロセス,全ての学習者を射程に入れた教育」と捉えている。多文化教育は多様な文化背景を持つ人々で構成される多文化(主義)国家で危急の教育課題といえるが,2002年にイタリアのベラジオで開催されたベラジオ会議では多文化的市民教育への(基本)原則と概念が提示されるに至っている。日本では,急激な少子高齢化に伴い,将来的な労働力の確保という観点で移民の受け入れを積極的に進めようという意見もある。そのほか,グローバリゼーションの進展に伴い,私たちは日本国内に居ながらにして様々な文化に触れる機会が増えている。家庭科教育は児童・生徒の生活に関わるモノ・ヒト・コトを学習対象とし,その学習内容は多岐にわたる。また,学習内容の選定において国・地域社会さらには児童生徒の文北・制度的背景も大きく影響を与えるため,多文化主義下での家庭科教育実践を見ることは,将来の日本の教育を考える上でも示唆に富むと考えられる。
著者
長澤 由喜子 渡瀬 典子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>目的</b>&nbsp; &nbsp;平成19年改正学校教育法に規定され,現学習指導要領で育成が求められる「思考力・判断力・表現力等の活用する力」は,法的な縛りをもって登場していることから,学習指導要領の次期改訂においても現行より踏み込んだかたちで提示されることが想定される。家庭科においては評価規準の設定例においても,「思考力・判断力・表現力等の活用する力」として,学習内容のまとまりABCDの指導事項ごとに育成したい力が具体的に示されているわけではない。このことが,基礎的・基本的な学びが教科目標の実践力につながりにくい状況に少なからずかかわっていると考えられる。<br>&nbsp; &nbsp;そこで本研究では,「思考力・判断力・表現力等の活用する力」に着目し,授業実践を通して学習内容のまとまりABCDごとの活用力の具体化について検討することを目的とする。<br><b>方法</b>&nbsp; &nbsp;岩手大学教育学部附属小学校における平成25年度家庭科年間指導計画に基づく題材の中で,研究目的に即して適切な分析が可能な学習題材を検討した結果,「C快適な衣服と住まい」は生活経験を活かしやすく,「D身近な消費生活と環境」との関連も図りやすいことから,Cの題材を取り上げることとした。具体的には,C(2)イ「季節に変化に合わせた生活の大切さが分かり,快適な住まい方を工夫できること」に係る住生活題材を実践対象とした。自然の力を活用する力の見取りには夏季・冬季ともに「ダンボールルームの計画」の学習シートを用いた。夏季・冬季共通に分析対象とした児童は6年生の28名(男子13名,女子15名),実践期日は夏季2013年5月,冬季11月~12月である。 <br><b>結果</b>&nbsp; &nbsp;今回改訂の学習指導要領において住生活分野の対象題材で活用力として問われているのは,「日光や風などの自然の力をいかに活かして住まい方を工夫できるか」である。夏季・冬季それぞれの学習シートに書き込まれた表現から読み取った快適エレメントに係る分析結果及び活用力に係る考察は以下に要約される。 <br>(1)活用力をみる上で前提となる基礎的・基本的な知識・理解の実現状況についてみると,夏季の場合は28名中11名,冬季の場合は16名が基礎的・基本的な知識・理解が十分とは言えなかった。<br>(2)夏季で基礎基本が十分ではなかった11名について冬季における位置づけを検討すると, 11名中,冬季にも同じく基礎的・基本的な知識・理解が十分ではない判断された児童は8名であった。<br>(3)夏季に日射しのコントロールの記述がない児童は,冬季においても日射しの暖かさの利用に目が向いていなかった。<br>(4)夏季に風通しの記述がなかった7名のうち5名は,冬季においても換気に係る記述が見られず,気泡断熱シートや目貼りテープ等の隙間風防止の手段を例外なく用いていた。<br>(5)実践題材の学習シートから活用力として読み取らなければならないのは,「課題解決的な要素として何を対象としているか」及び「解決策をどうデザインしているか」であり,「基礎基本の要素に係るデザイン」をいかに見取るか,その具体的な視点を活用力として明示する必要がある。<br>(6) &nbsp;上記(1)(2)に示すように,活用の前段としての基礎基本が整わない状況で,課題解決としての家庭実践に実践題材における活用力を求めることができないことから,「ダンボールルーム」の学習シートを用いた効果的な活用力の育成について,上記(3)(4)(5)の結果を踏まえ,見直しの視点を示した。 <br>&nbsp; &nbsp; 以上,今回は「快適な衣服と住まい」の住生活題材に着目したが,内容のまとまりABCDそれぞれに検討が必要である。今後,ABCDそれぞれの実践課題を踏まえた上で,さらに分野ごとに効果的な活用力の育成について実践的な検討を重ねたい。
著者
宮川 洋一 山崎 浩二 名越 利幸 渡瀬 典子 ホール ジェームズ 土屋 明広 田中 吉兵衛 立花 正男 山本 奬 今野 日出晴 川口 明子 田代 高章 藤井 知弘 長澤 由喜子 遠藤 孝夫 MIYAGAWA Yoichi YAMAZAKI Kouji NAGOSHI Toshiyuki WATASE Noriko James M HALL TSUCHIYA Akihiro TANAKA Kichibei TACHIBANA Masao YAMAMOTO Susumu KONNO Hideharu KAWAGUCHI Akiko TASHIRO Takaaki FUJII Tomohiro NAGASAWA Yukiko ENDOU Takao
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.14, pp.219-230, 2015

本研究の目的は,4年次後期に必修となった教職実践演習における模擬授業のあり方を検討し,評価基準を策定することにある。そのうえで,ICTを活用して,組織的に評価を行うシステムを構築し,試験的運用を行うことである。「教職実践演習」は,「教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令」により,平成22年(2010)年度入学生から導入される教員免許必修科目であり,学生が最終的に身につけた資質能力を,大学が自らの養成教員像や到達目標に照らして最終的に確認することを目的としている。中教審による「今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)」(2006)によると,教職実践演習の授業内容は,①使命感や責任感,教育的愛情に関する事項,②社会性や対人関係能力に関する事項,③幼児児童生徒理解や学級経営に関する事項,④教科・保育内容等の指導力に関する事項を含めること,が適当であるとされている。そして,教職実践演習の実施にあたっての留意事項として,授業の方法は演習を中心とすること,役割演技(ロールプレーイング),事例研究,現地調査(フィールドワーク),模擬授業等も積極的に取り入れることが望ましいこと等が示されており1),極めて実践的・実務的色彩の強い内容となっている。