著者
石崎 俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.404-408, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

専門分野の用語(ターミノロジー)は多分野との情報流通のために必要であり,今後ますます重要になるので,国内外での情報流通のための専門用語の管理や概念体系の作成などの活動の概要を説明する。情報流通の重要な手段としては,国内外における用語の標準化活動があるので,過去の経緯や現在の課題,今後の可能性などについて概要をまとめる。まず情報技術の標準化を担当するISO/IEC/JTC 1における用語の標準化について概要を説明し,次いで,言語と用語の標準化を担当するISO/TC 37における翻訳・通訳も含めた用語の標準化の概要を説明する。JIS法が産業標準化法に改正されることに伴って,翻訳サービスなどに用いる用語のJIS化の動きについても概要も説明する。
著者
稲垣 理美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.403, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

2019年9月号の特集は「用語管理と標準化」です。専門的な分野の概念をあらわす用語の取扱いには高い精度が求められ,「ターミノロジー学」として研究も行われてきました。特に用語管理や標準化については,知識の伝達,交換といった人間の行動を助けたり解明したりする上で大きな役割があると考えられます。また情報のハンドリングを目的に,異なる分野との意味のマッピングなども試みられています。さらに,情報通信技術の高度化や人工知能の研究・実用が進んだ現在において,用語活用の可能性が高まっています。そこで今回の特集では,用語の取扱いやその標準化の変遷と現在の取組みについて実例に基づき紹介することに焦点を当てました。はじめに石崎俊氏に専門用語管理や概念体系の作成といった活動が情報流通において果たす役割とその重要性,ISOにおけるターミノロジー活動について概説していただきました。続いて,山本明氏に用語定義をいかに曖昧なく記述するかという点から,用語の定義についてご執筆いただきました。具体的な活用事例として,山本ゆうじ氏に翻訳における用語の標準化活動について,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定された用語集形式UTXを取り上げてご執筆いただきました。また竹内孔一氏に認知言語学を基に構築された概念体系について,専門用語の整理や自然言語処理への活用例も含めてご執筆いただきました。最後に,様々なデータ連携を目指した横断的なデータ活用基盤として整備されている情報共有基盤(IMI)について,その取組みと「法人インフォ」における活用事例を情報処理推進機構の斉藤浩氏,清水響子氏にご執筆いただきました。今後,用語管理や標準化をどのように活用していくことができるか,知識の伝達を行う多くの皆様のご参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:稲垣理美(主査),野村紀匡,光森奈美子,南山泰之)
著者
山本 和雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.556-564, 2001
参考文献数
5

公務は法令を遵守して執り行われねばならない。図書館についても例外ではなく, 公的機関の図書館活動もまた合法に行われる必要がある。一方, 法は過去の蓄積に他ならないため, 電子ジャーナルのような新たな事象については必然的に法令適用の妥当性が問われることになる。本稿では, 電子出版物, 特に電子ジャーナルを公的機関に導入する際に関連する法規や解釈の近況について概括する。
著者
國谷 実
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.376-381, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

日本の近代博物館の歴史,特に戦前の歴史をたどり,①殖産博物館,②集古博物館,③教育博物館,④通俗教育館(社会と科学の博物館),⑤科学博物館に分類する。これに対し,戦後の博物館は,社会教育法に基づく社会教育のための博物館に位置付けられており,特に②と⑤に特化している。しかし,戦後の博物館,――特にそのうちの科学博物館(科学館)は400~500館あると言われているが,近年,資金不足と老朽化や陳腐化によりその多くが転機に立たされている。今後,戦前の博物館の多様性を取り戻すことが重要であり,特に新しいイノベーションに貢献する科学館への方策を提言する。
著者
周 少丹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.371-375, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

本稿は,中国政府の科学技術政策の流れを追いかけ,「新しい研究開発システムの構築」「自立的発展方針の確立からナショナル・イノベーション・システムの構築へ」「全面的イノベーション駆動発展戦略の実施」を三つの段階に分けて概観したものである。わずか数十年で米国と肩を並べる科学技術大国にまでに発展してきた中国の科学技術をどのように把握すればよいのかが大きな課題である。中国の科学技術はボリュームが大きく,欧米との間の人員流動も激しく,中国の指導部ですら把握していない部分もある。そのため,本稿にて提示した中国の科学技術政策のターニングポイントをよく知ることは,中国を理解する重要なツールとなると考えている。
著者
遠藤 悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.364-370, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

米国,ドイツ,英国の科学技術政策は,それぞれの国の政治システムの相違に加え,各国の研究活動の様態やアカデミックコミュニティーが果たす役割等により異なる特徴が見られる。本稿においては,各国の最近の科学技術政策の動向を具体的な事例とともに紹介する。米国についてはトランプ政権の科学技術政策についてその歴史的背景とともに概観する。ドイツについては連邦政府と州との関係を通した研究活動高度化の取り組みについて整理する。英国については高等教育・研究法の成立に至る政策決定へのアカデミックコミュニティーの関与について報告する。そしてこれらの事例から,日本の科学技術政策への示唆について考える。
著者
渋谷 亮介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.357, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

2019年8月号の特集は「世界の科学技術政策の動向」です。従来,伝統的な学問分野の体系に即して研究が多く行われてきましたが,科学技術の発展や災害対応の要請もあり,学際分野研究と呼ばれるような異分野に跨がる新たな学問分野の研究が盛んになっています。また情報技術の発展に伴ってオープンサイエンスが進化し,異業種・異分野の専門家が協業した研究も珍しいことではなくなりました。これらの変化を踏まえますと,インフォプロは担当分野の情報だけではなく,近接分野の動向も把握する必要が出てきており,今後の科学技術の方向性を知ることは重要です。そこで今回の特集では,国内外の科学技術政策の動向と,それに基づいて科学館・博物館に求められる役割に焦点を当てました。はじめに文部科学省科学技術・学術政策研究所の赤池伸一氏には,日本の科学技術政策の基本ともいえる科学技術基本計画の歴史,現在の科学技術政策の概要と今後の課題について解説していただきました。次に,米国の科学政策の動向をレポートするウェブサイト「米国の科学技術」を運営されている遠藤悟氏には,米国,英国,ドイツの科学技術政策の動向と,各国におけるアカデミックコミュニティーによる政策への関与度の違いについて,事例を挙げてご執筆いただきました。続いて,昨今,科学技術の発展が目覚ましい中国について,国立研究開発法人科学技術振興機構の周少丹氏には,中国の科学技術政策の特徴と,科学技術の発展の礎となったターニングポイントについてご執筆いただきました。また日本では,イノベーション人材の育成の場として科学館・博物館が注目されています。そこで,一般財団法人日本宇宙フォーラムの國谷実氏には,科学館・博物館の設立の歴史と,役目の変化,イノベーション型博物館としての今後の役割についてご執筆いただきました。日本を含め各国の科学技術政策は,科学技術の進展や時流に応じて変わっていきます。そこで,国立国会図書館の榎孝浩氏には,日本,米国,欧州,中国の科学技術政策を調べる上で便利な資料をご紹介いただきました。1つの国の科学技術政策を採り上げるだけでも大きなボリュームがありますが,重要なポイントに絞って分かりやすくご執筆いただきました。本特集が,皆様の日々の活動において一助となることを願っています。(会誌編集担当委員:渋谷亮介(主査),大橋拓真,當舎夕希子,野村紀匡)
著者
バゼル山本 登紀子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.658-663, 1997
参考文献数
14

20年の歳月を経て, 日本にもようやく 「情報公開法」が制定されようとしている。米国で情報自由法が制定されたのは, 今から30年前である。しかし, 市民の知る権利を守る精神と法律は, 公開法成立を見る100年以上も前から始まり, 現在までたゆまぬ努力がなされている。市民の知る権利を確実なものにするために生み出された寄託図書館制度は, その長い伝統を保ちながらも, 今, 21世紀の新情報時代に向けて, 新たな変化を遂げつつある。
著者
浅野 敬司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.316-323, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

欧州特許庁(EPO)ウィーン支局が毎年開催している,EPOが提供するデータ購入者のためのフォーラムである,「Patent Data Day」に参加した。このイベントは,ユーザーであるデータ購入者とEPOのデータエキスパートとが直接会って,EPOが計画するデータの最新動向およびユーザーからのニーズを議論する重要な場である。本稿では今年のPatent Data Dayの内容,オーストリア特許庁および,EPOハーグ支局へ訪問の様子を報告する。
著者
木村 直也 早麻 里穂
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.310-315, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

IPランドスケープは「自社,競合他社,市場の研究開発,経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み,自社の市場ポジションについての現状の俯瞰・将来の展望等」と定義され,その最終的なステップは「戦略を経営層へ提言すること」とされている。当社では自社経営層へ戦略検討・提言をする立場にあるお客様から調査を請負い,実施している。本稿では,IPランドスケープのための技術調査の具体的な進め方を,実際の流れに沿って紹介する。いくつかのアウトプットの例示にあたっては3Dプリンタを取り上げた。
著者
佐藤 貢司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.305-309, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

近年注目を集めいているIPランドスケープにおいて知財分析は重要な要素であり,従来行われている統計的な分析に加え,より多様な観点・切り口での情報分析が求められる。本稿では筆者の営業経験に基づき心掛けている営業視点なるものを,社内でのIPランドスケープ実践においてどのように活用しているかを紹介する。具体的には,営業視点を用いた知財分析の重要性を述べると共に,被引用情報に対する5つの切り口や発明者情報を用いた研究組織の推定などの事例,更には知財分析と対で重要な「伝え方」についての事例も紹介する。
著者
菊地 修
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.298-304, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

企業が利益ある成長と事業競争力の向上を永続的に実現するためには,市場の動向や顧客のニーズを把握・分析した上で,自社のコア価値の重要度や競争優位性を検証し,それらの獲得・強化を実行し続けることが必要となる。当社では,「IPランドスケープ」を活用してグローバルな市場の環境分析を行い,その結果に基づき事業のコア価値を保護・活用する知財経営戦略を全社で推進している。そこで本稿では,当社がいかにこの知財経営戦略においてIPランドスケープを活用し,新事業創造,技術開発テーマ策定,M&A/CVC候補探索等を行い,会社の価値創造や事業成長に貢献しているかを解説する。
著者
杉光 一成
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.282-291, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

「IPランドスケープ」という単語が注目されている。しかし,この語の意味するところについては論者によって「ずれ」があり,既存概念との違いも不明確である。この点,本語の「定義」について網羅的な調査を行った先行研究あるいは文献は見当たらない。そこで,IPランドスケープの今後の研究発展に資することを目的として,文献データベースを使ってその用例等について網羅的な調査を行った。その結果を踏まえてIPランドスケープの標準的な定義を示し,既存概念との違いを明確化した。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.281, 2019-07-01 (Released:2019-07-01)

今回の特集は「IPランドスケープ」です。日本国特許庁が,2017年4月に公表した「知財人材スキル標準(Version 2.0)」に,IPランドスケープという言葉が登場し,約2年が経過しました。この「IPランドスケープ」は,経営・経済環境を踏まえた技術動向把握および将来展望の提示のため,知財情報と市場情報から自社・競合他社・市場などの分析を行い,自社と他社との市場や技術開発状況を正確に認識し,総合的な戦略を経営層へ提言する,というものですが,現実の知的財産活動において,どのような行動をすれば良いのか,ということについては,実務に関わっている方でも不明な点が多いと思います。また,知財担当者以外の方におかれましては,今回の特集で初めて「IPランドスケープ」,という言葉を目にしたという方もいらっしゃると思います。そこで本号では,知財担当者の方のみならず,情報の業務に携わる方に「IPランドスケープ」がどのようなものであるのかについて,さらには,既に,「IPランドスケープ」を実践している企業がどのような活動を行っているのかなど,事例も交えて紹介をしたいと特集を企画しました。はじめに杉光一成氏に「IPランドスケープ」とは何か,どのような定義なのか,ということを総論として,先行する文献を用いて詳細に解説いただきました。つづいて,山内明氏にはIPランドスケープを実践する際の知財情報戦略として,知財情報戦略のポイントと特許マーケティングの具体的な実践事例について論じていただきました。菊地修氏には,自社の「知的財産経営戦略におけるIPランドスケープの実践」という視点で,自社の実践の事例のみならず,情報調査解析担当者のあるべき姿勢についても提言をいただきました。佐藤貢司氏には知財分析に「営業視点」を活用することの有用性と,情報の伝え方について論じていただき,木村直也氏および早麻里穂氏には,総合的技術調査支援という観点から,3Dプリンタの調査事例を用いてどのように情報を収集し,解析と報告を行なうのかについて解説いただきました。今回の特集によって,皆様に「IPランドスケープ」というものを,身近に感じていただけたら幸甚です。(パテントドキュメンテーション委員会)
著者
千 錫烈
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.113-120, 2017

<p>図書館は不特定多数が利用する施設であり安心安全でなければならない。しかし,近年の図書館では迷惑行為や犯罪行為を行う「問題利用者」が問題となっている。本稿では①リスクマネジメントやリスクアセスメントの策定によるリスク対応の可視化,②利用規則による抑止,③図書館職員のホスピタリティを向上させるサービスコードの3つの方策を示して問題利用者の抑止策について検討していく。さらには実際に問題行動が起きた際の対応策として,遭遇する確率が高い怒った利用者を事例として挙げ,6つの対応スキルについて紹介する。</p>