著者
岸 真由美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.504-509, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

アジア経済研究所は2016年度に研究成果発信の新たな方針を策定し,外部出版社を通じた出版以外の研究成果については有料出版物を廃止し,原則オープンアクセスで社会に提供することとした。この方針にもとづき,2018年度からは和文の定期刊行物5誌をJ-STAGEで電子出版している。本稿では,アジア経済研究所がJ-STAGEを採用した経緯を報告するとともに,J-STAGEの利点について確認したい。方針策定以前にすでに海外商業出版社との提携を開始した英文ジャーナルについては,当時検討したポイントを紹介する。さらに,研究成果の発信媒体として,冊子体を廃止し電子出版のみとする場合の課題についても触れたい。
著者
村上 絵美 大井 喜久子 宮川 謹至 藤田 隆 和田 光俊 重松 麦穂 小田島 亙 木下 健太郎 大形 英男 松邑 勝治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.497-503, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルプラットフォーム「J-STAGE」は,1999年10月に運用を開始し,2019年10月に20周年を迎える。運用開始当時の登載誌はわずか3誌のみであったが,現在,登載数は2,900を超えている。わが国の約半数の学協会が利用する電子ジャーナルプラットフォームへと成長したJ-STAGEだが,近年の学術コミュニケーションや研究フローの変化に伴い,新たな課題が浮き彫りとなってきている。本記事では,J-STAGEの最新の公開状況やサービス内容を解説するとともに,新たな課題,特に,オープンアクセス推進に向けた取り組みなどを紹介する。
著者
芳賀 日向 山内 民興
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.615-621, 1992

フォトライブラリーという業界がある。20万〜100万枚にわたる大量の写真をストックして出版社や広告代理店等に印刷物に掲載されるための写真を貸出している。使用した写真は写真使用料という形で著作権使用料がフォトライブラリーを通じ写真家へ支払われる仕組みになっている。写真の使用料金は使用媒体の露出頻度による料金が設定されている。通常の1媒体当りの使用料金は3万円〜5万円程である。このフォトライブラリーは全国で約250社ほどある。JPRC((株)日本フォトリサーチセンター)はフォトライブラリーの中でも,動物,スポーツ,人物など専門ジャンルを扱っている日本を代表する会社10社により1986年に設立された。設立の目的は,異種のジャンルの集合体により,より幅が広く奥が深い高品質の写真を提供することである。現在は50社のフォトライプラリ一および200名の個人写真家が加盟している。このJPRCより開発されたのがフォトディスク・ライブラリーである。2枚のレーザーディスクに合計8万3千枚の厳選された写真を収録し,独自の検索方法で写真を検索する。ユーザーは自分の場所に居ながら,希望の写真を探し出すことができ,しかも注文した写真は翌日までに,高品質のデュープ・フィルムで配送されるシステムとなっている。ユーザーは写真を使用した場合のみ写真使用料をJPRCへ支払えば良い。このシステムは日本全国50ヵ所および海外2ヵ所において活躍している。現在JPRCが取り組んでいるテーマは,(1)その独特の写真検索技術を応用し,汎用性があり,なおかつユーザーの創意が反映され自由にファイリングできるソフトを開発すること,(2)高解像度の画像収録,修正,出力のためのシステムを付随すること,である。(株)ピアス社の協力を得て,このシステムへの実現へと踏み出しているその過程を発表する。
著者
青木 博通
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.471-479, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

世界の商標制度の基本構造,欧州連合商標制度,中国商標制度,米国商標制度,商標の国際登録制度(マドリッド協定議定書),各国の特異な制度に分けて,世界の商標制度の現状について解説する。
著者
山崎 理恵 森 有希
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.465-470, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

世界的にデザインへの注目が高まる中,2015年以降,米国や日本,ロシアが次々に意匠の国際登録出願制度(ハーグ協定のジュネーブ改正協定)に加盟し,また我が国では,100年に一度といわれる意匠法の大改正が行われ(2020年施行予定),意匠制度の活用方法を見直す好機を迎えている。本稿では,日本を中心に,中国,欧州共同体(EU),米国の意匠制度について紹介するとともに,画像,空間,部品の分野別の登録例を紹介する。また,日本の意匠法改正のポイントについても言及する。
著者
野仲 松男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.459-464, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

本稿では,世界の特許制度の動きについて概観したのち,主要特許庁の出願動向や国際協力について解説し,実用新案制度についても簡単に触れる。各国・各地域の特許制度は独立であるが,制度調和の取組が続けられており,特許制度の基本的枠組みは共通化されている。特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願の利用は年々伸びており,欧州では,Brexitによる先行きの不透明さはあるものの,統一特許制度の実現が目前に迫っている。特許出願動向では中国の台頭が著しく,国際協力の中心は日米欧の三極特許庁から日米欧中韓の五大特許庁に移り,様々な協力プロジェクトが積極的に推進されている。
著者
山口 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.453-458, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

国際的なビジネスの展開には,日本だけでなく外国においても特許権,実用新案権,意匠権及び商標権からなる産業財産権を取得することが重要となる。しかしながら,産業財産権の分野において「国際特許」や「世界特許」と呼べる形で国際的に単一の権利が付与されて活用できる制度は存在せず,日本で出願し取得した権利は日本でのみ効力を有するものとなっている。そのため,産業財産権が必要な国々で別々に出願することで権利を取得し,活用することが原則となっているが,その過程で生じる負担や諸問題を緩和するために様々な国際条約が締結されている。そこで,本稿では,初学者が知っておきたい条約を中心に概要を紹介する。
著者
青山 高美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.446-452, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

今では居ながらにして世界中の人と動画を見ながら話ができる。この豊かな生活を可能にしたのは,他ならぬ人の知恵や工夫など人の知的創作物のお蔭である。こうした人の知的創作物を総称して知的財産と呼ぶ。企業はその存続とさらなる発展のためにより優れた商品・サービスの開発にしのぎを削っており,その源泉である知的財産は企業の重要な財産であると同時に,知的財産権は競争の武器でもある。従って,画期的な知的財産の創出と有効な保護,効果的活用は企業の重要な戦略でもある。企業の盛衰は,国家の経済にとっても重要な要素であるので,近年,知的財産が国家戦略としても話題になることが多い。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.445, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

2019年10月号の特集は「世界の産業財産権のいま」です。産業財産権には特許権,実用新案権,意匠権及び商標権があります。以前は「工業所有権」とも呼ばれていましたが,2002年に策定された知的財産戦略大綱にて「産業財産権」に用語が統一されました。似たような言葉で「知的財産権」というものがありますが,産業財産権に馴染みのない方にとって,これらの言葉の関係は結構あいまいなものではないでしょうか。またサーチャーにとっては,調査対象として馴染みはあるものの,その歴史や制度に関してはそれほど詳しくないという方もいるのではないでしょうか。本特集では産業財産権の概要を理解する入門編的位置づけとして,その歴史や制度,最近のトピックスについて5人の方々から解説をいただきました。総論では株式会社ワイゼルの青山高美氏に特許の事例や知的財産権と産業財産権の関係を含め,広く知的財産制度について概説していただきました。山口和弘氏には,産業財産権と関わりの深い国際条約について,知的財産に関する条約の多くを管理する世界知的所有権機関(WIPO)を中心に解説をいただきました。特許庁の野仲松男氏には,世界の特許制度の動き,主要特許庁や国際出願による出願動向を中心に解説をいただきました。オンダ国際特許事務所の山崎理恵氏,森有希氏には,日中欧米の意匠制度の比較を中心に,日本の意匠法改正のポイントも含めて解説をいただきました。ユアサハラ法律特許事務所の青木博通氏には,世界の商標制度の基本構造や欧中米の比較,国際登録制度,及び各国の制度の特異性について解説をいただきました。いずれの方々からも分かりやすく解説をいただき,本特集記事を通読することで,産業財産権制度に馴染みのない方々にとって,広く知識を得ることができるものと考えています。また本特集が,産業財産権制度により深く興味を持つためのきっかけとなれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),渋谷亮介,寺島久美子,南山泰之,野村紀匡)
著者
竹内 孔一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.421-426, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

近年,認知言語学を基に構築されている概念体系を利用した用語整理手法が提案されており,概念体系の構築と利用について期待が高まりつつあると考えられる。著者は複合名詞内の係り関係を分析した語彙概念構造を発展させて,意味役割と述語の概念をシソーラス状に体系化した述語項構造シソーラスを構築して公開している。そこで,本稿では,構築している述語項構造シソーラスの基本的な設計方針と,データ構造の説明,および最近の発展について説明する。さらに,概念体系データが専門用語の整理や自然言語処理で使われた例について説明し,概念体系データの今後の展望について述べる。
著者
山本 ゆうじ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.415-420, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

体系的翻訳,特に用語管理の側面は,用語が企業・組織の翻訳資産として重要であるにもかかわらず軽視されていることも多い。用語管理は,ニューラル機械翻訳の時代で意義を失ったかのように考えられることもあるが,これは誤解であり,むしろさらに重要性を増している。本稿では,組織での体系的翻訳における用語管理の概要を述べる。体系的翻訳での現状の課題を分析し,翻訳品質と,用語管理の専門性について説明する。その後,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定されたシンプルな用語集形式UTXによる用語管理の概要と活用例を紹介する。
著者
山本 昭
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.409-414, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

標準化活動において重要となる用語の定義について概説した。ISO 704「専門用語-原則と方法」を基に,定義文の書き方の基本を述べた。内包的定義はもっとも推奨される定義であり,外延的定義は限られた場合に有効である。不十分な定義や循環的定義など,望ましくない定義と,それを避ける方法も示した。定義文とともに提供される,注記等の項目も概説した。