著者
実積 寿也
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
22

インターネット政策声明を執行可能なルールとすることを目指した連邦通信委員会(FCC)の努力は、Comcast事件とその後の控訴審判決での敗訴の経験を経て、2010年12月にオープンインターネット命令として結実した。ブロードバンド事業者が遵守すべき開示義務、公平義務および接続義務を定める本命令は、ビジネスの自由を求めるプロバイダにとっては行動の自由の制約に他ならない。本命令の有効性に関し、2014年1月14日に巡回控訴裁判所が下した結論は、開示義務以外の有効性を否定しており、一見すると、プロバイダ側の主張が全面的に認められFCCの努力が無に帰したかのように見える判決ではある。しかしながら、詳細に評価してみると、ネットワーク中立性問題に対する規制権限を確立し、しかも命令が本来実現しようとしていたはずの効果にはほとんど影響がないという、FCCにとっては実質的な勝訴に他ならず、むしろプロバイダ側にとっては何の問題解決にもならなかった可能性がある。
著者
松原 聡 山口 翔 岡山 将也 池田 敬二
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.77-87, 2012-12-25

2010年代に入り、日本でも、電子書籍が普及し始めた。電子書籍では、コンピュータによる音声読み上げ技術 (TTS) を使うことで、音声で書籍の内容を聞くことが可能になる。このことは、視覚障害者に、読書の道が開かれることを意味する。しかし、日本においては、音声読み上げ対応の電子書籍はまだわずかしかない。<br>紙の書籍による読書が困難なのは、視覚障害者だけではない。読字障害者 (ディスレクシア)、身体障害者などの読書障害者ともいうべき者や、健常者であっても、指先をケガしてページをめくれない者、老眼が進んだ者なども含んだ読書困難者、さらには満員電車の中で、イヤフォンで読書をしたいというニーズもある。<br>こういった広範なニーズを踏まえて、政府は、すでに発足した出版デジタル機構などを通じて、積極的に、音声読み上げ対応の電子書籍の普及に取り組む必要がある。
著者
池末 成明 由良 栄士
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-65, 2011-09-25

本稿では、(1)欧米の周波数オークションやM&A戦略を振り返り、(2)その会計的な側面を整理した後、(3)通信キャリアの会計の比較を行なった。その結果、M&Aと周波数オークションによる無形資産の価値が巨額であることがわかった。国際財務報告基準いわゆるIFRS(International Financial Reporting Standards)は、M&Aや周波数オークションにおける事業計画上も大きな影響を与える。セグメント会計の管理が、その影響の解決方法のひとつとなるだろう。
著者
上野 大樹 樋口 文人 安村 通晃
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_57-2_65, 2012 (Released:2012-12-25)
参考文献数
17

近年、Webのソーシャル化に伴い、一部のWeb情報が急激に流行る傾向がでてきた。例えば、Twitterやソーシャルブックマークサービスなどの影響により、情報が一気に伝搬して流行ることが多くなってきた。こういった情報の中には、流行りが過ぎてしまうと、あまり有用ではなくなるものも多く、賞味期限の短い情報もどんどん増加してきている。そのため、筆者らはその情報がどれだけ長期間利用されているかの指標、いわば情報の長期度のような指標が重要になってきたのではないかと考える。そこで、本研究では長期度の計算手法を提案し、長期間利用され続けている情報を取得するためのシステムを提案する。そして、検索キーワードがどれだけ長期間に渡って、検索され続けているかという時系列情報を利用して、Web上で長期間利用される検索キーワード一覧を取得するシステムを開発した。
著者
張 永祺 石井 健一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.47-59, 2012-03-25

中国で最も使われているマイクロブログの新浪微博の発言を分析対象とし、Twitterの日本語利用者の発言と比較しながら、中国のマイクロブログの情報伝播過程の特徴を明らかにした。分析には、「昆布の噂」に関する発言と無作為に抽出した発言の二種類のデータを用いた。結果によると、マイクロブログにおいて日本人の方がフォローの相互性が高く、個人間のやりとりに使う傾向がみられるのに対して、中国ではリツイートの利用率が高く、リツイート回数も日本より多い。また、中国ではマイクロブログにおいて情報が影響力の高い人から低い人へと伝わる。このため、中国では人気のある発言がリツイートによって短時間で多くの人に伝達される。一方、日本では、情報は水平的に伝わる傾向がある。ロジスティック回帰分析の結果では、中国のマイクロブログにおいて画像があることと個人体験的な内容ではないことがリツイートを有意に促進していた。