- 著者
-
斉藤 邦史
- 出版者
- 公益財団法人 情報通信学会
- 雑誌
- 情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.2, pp.127-138, 2018 (Released:2018-11-08)
本稿では,私人間におけるプライバシーの法的保護を再検討することにより,以下の考察を得た。第一に,信頼関係に基づく情報の分配状況は,個人の自律的な選択により実現する状態としてのプライバシーそのものなのであり,米国では信認義務の法理による保護の拡張が模索されている。第二に,私人間でプライバシー外延情報の「適切な管理についての合理的な期待」を保護する日本の判例法理は,当事者間の信頼関係に基づく情報の分配状況を保護法益と捉えるものであり,信認義務の法理と共通する側面がある。第三に,情報の「適切な管理」に関する事業者の義務を,信義則に基づくものと理解するならば,秘密保持義務だけでなく,情報開示義務をも基礎付けることができる。