著者
実積 寿也
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.13-27, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
50

情報通信技術(ICT)の急速な進歩を背景に、コンテンツ産業は、日本の持続的成長・発展を支える基盤産業としての貢献が期待されている。そのため、同産業に対して何らかの成長阻害要因が予見される場合は、相応の政策的対処を検討し、望ましい産業組織を育成する必要がある。近年のインターネットプロトコル(IP)技術の高度化は、ネットワーク産業とコンテンツ産業を垂直統合した新しいプレイヤーを生みつつあり、これら新型プレイヤーは、独占力のレバレッジを通じて競争政策上の新たな課題をもたらす懸念がある。具体的には、モバイルブロードバンド(BB)が主流になるにつれ、プロバイダ市場の寡占化が進み、コンテンツ・ディストリビューションの効率的確保が阻害される可能性がある。そのため、モバイル BB 事業者に対し一定の規律を与えることは、BB 市場の効率性改善の観点のみならず、コンテンツ産業育成の観点からも重要である。米国のネット中立性規制は、その際、良い参照例となろう。
著者
実積 寿也
出版者
情報法制学会
雑誌
情報法制研究 (ISSN:24330264)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.29-40, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
20

Net neutrality has been one of the most debated issues in the telecommunications policy arena since the 2000s. Japan is no exception, with the Japanese telecommunications authority working very hard to draft rules for net neutrality. In order to design optimal rules, we need to establish a clear and unambiguous definition of net neutrality in the Japanese context as well as policy measures to evaluate the optimality of the proposed policy package. To date, however, there is still no definition of net neutrality in the official document. There are only naïve applications of this concept that appear inconsistent with the articles of the Telecommunications Business Act of Japan, which aims to “ensure sound development of telecommunications and convenience for citizens and to promote the public welfare” (Article 1). In addition, because net neutrality rules have to provide solutions to the problems of the domestic market, there is no one-size-fits-all definition, i.e., the Japanese telecommunications authority must come up with its own unique version. In this article, the author proposes a definition of Japanese net neutrality. It discusses who should be responsible for securing net neutrality in the broadband market, how to measure the degree of neutrality, and how we should deal with the issue of fair pricing to help policymakers design an optimal policy package.
著者
実積 寿也
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.13-27, 2015

情報通信技術(ICT)の急速な進歩を背景に、コンテンツ産業は、日本の持続的成長・発展を支える基盤産業としての貢献が期待されている。そのため、同産業に対して何らかの成長阻害要因が予見される場合は、相応の政策的対処を検討し、望ましい産業組織を育成する必要がある。近年のインターネットプロトコル(IP)技術の高度化は、ネットワーク産業とコンテンツ産業を垂直統合した新しいプレイヤーを生みつつあり、これら新型プレイヤーは、独占力のレバレッジを通じて競争政策上の新たな課題をもたらす懸念がある。具体的には、モバイルブロードバンド(BB)が主流になるにつれ、プロバイダ市場の寡占化が進み、コンテンツ・ディストリビューションの効率的確保が阻害される可能性がある。そのため、モバイル BB 事業者に対し一定の規律を与えることは、BB 市場の効率性改善の観点のみならず、コンテンツ産業育成の観点からも重要である。米国のネット中立性規制は、その際、良い参照例となろう。
著者
実積 寿也
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
22

インターネット政策声明を執行可能なルールとすることを目指した連邦通信委員会(FCC)の努力は、Comcast事件とその後の控訴審判決での敗訴の経験を経て、2010年12月にオープンインターネット命令として結実した。ブロードバンド事業者が遵守すべき開示義務、公平義務および接続義務を定める本命令は、ビジネスの自由を求めるプロバイダにとっては行動の自由の制約に他ならない。本命令の有効性に関し、2014年1月14日に巡回控訴裁判所が下した結論は、開示義務以外の有効性を否定しており、一見すると、プロバイダ側の主張が全面的に認められFCCの努力が無に帰したかのように見える判決ではある。しかしながら、詳細に評価してみると、ネットワーク中立性問題に対する規制権限を確立し、しかも命令が本来実現しようとしていたはずの効果にはほとんど影響がないという、FCCにとっては実質的な勝訴に他ならず、むしろプロバイダ側にとっては何の問題解決にもならなかった可能性がある。
著者
三友 仁志 鬼木 甫 樋口 清秀 太田 耕史郎 実積 寿也 田尻 信行
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、わが国企業の情報化投資が当該企業あるいは産業のみならず、市場メカニズムを通じて消費者に対して及ぼす影響を理論的に解明し、併せて実証的統計的に分析することにある。平成17年度~19年度の研究期間を通じて、内外の研究動向の把握、専門家との意見交換、分析のための仮説モデルの構築、実証分析に用いるためのデータ収集、実証分析による仮説の検証、実証研究からのインプリケーションの抽出を遂行した。研究の遂行に当たっては、具体的には以下のようなテーマを取り上げた。(1)情報化が企業に与える便益のメカニズムの解明に関する研究の総括(2)情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明に関する実証研究(3)情報化と消費者保護に関する研究(4)通信と放送の融合にともなう市場メカニズムの変化に関する研究(1)については、企業部門における情報化投資メカニズムに関する研究の成果のまとめと総括を行い、情報化が消費者に与える影響の研究との関連を明らかにした。(2)については、情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明について、特に行動経済学から得られる知見を用いてこれまでの伝統的なミクロ経済学では分析しえなかった消費者行動(たとえば定額料金制度に対する選好など)に関する分析を行った。(3)については、情報化時代における消費者保護の問題について、主として個人情報保護法下における情報通信技術の活用とセキュリティ対策について研究を行った。(4)については、2011年に実施されるアナログ放送の停波とそれに伴うデジタルテレビへの移行に関して、企業並びに消費者に与える影響について研究を行った。
著者
三友 仁志 樋口 清秀 太田 耕史郎 実積 寿也 フィリップ 須貝 大塚 時雄 鬼木 甫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、地球環境問題を軽減するための方策として、情報通信ネットワークの活用の可能性への着目し、その方向性を見出すことを目的とする。直接的な規制や経済学的な方法に加え、情報を適切に提供することによって人々を啓蒙し、より環境にやさしい行動をとることが可能となる。他方、これによって環境問題を認知するものの、行動に移らない可能性も指摘される。本研究では以下の3つのプロセスを通じて、かかる課題の解決を試みた:(1)情報通信の普及効果を把握するための評価モデルの確立;(2)情報通信の普及段階に応じた環境対応型産業政策とそれに呼応した企業戦略の明示;(3)従来の経済理論分析の下では十分に探索されてこなかった問題の検討。
著者
森田 浩 刀根 薫 福山 博文 上田 徹 廣津 信義 関谷 和之 実積 寿也 刀根 薫 福山 博文 上田 徹 廣津 信義 実積 寿也 関谷 和之 高橋 新吾 篠原 正明
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

DEAにおける理論と応用の両面からの展開とその融合研究を行った。ネットワークDEAや不確実性下のDEA、評価指標の開発などの理論的貢献とこれらの成果の多様な分野への適用による事例研究における応用面での貢献を得ることができた。さらに、国際シンポジウムの開催や外国人研究者の招へいなどによる国際交流の活性化および国内におけるDEA研究の中心的役割を果たすことができた。