著者
谷川 忍 植竹 敦子 土谷 智子 高橋 絵理子 阿部 聖子 林 明子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.21-28, 2002-02-05

函館市立柏野小学校では,4月に「たんぽぽ」「ひまわり」の知的障害児学級2学級に加えて,新たに情緒障害児学級「なのはな」が開設され,児童数12名,スタッフ5名という数字的には大変恵まれた体制となった。本学級では本紀要19号20号で報告してきたように,保護者そして児童のニーズに応えるべくIEP ・ TEACCHの手法に学んだ実践により,ようやく学級のカラーが出来上がってきたと自負していたところであったが,今年度はなかなか思うように進まず,自閉症センター「あおいそら」のアドバイスも得ながら,子どもたちへの対応を見直してきた。また保護者へのインフォームドコンセントとアカウンタビリティーの充実を図るために,IEPについても見直しを図ってきた。 IEP・TEACCHに学んで,子どもたちの指導の最適化を目指した学級づくりも3年がたとうとしている。日々試行錯誤の毎日であるが,少しずつ子どもたちも落ち着き,変容が見られてきた。
著者
前田 裕文
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.125-128, 1986-03-15

わが国における少年非行は,昭和26年をピークとする第1の波,39年をピークとする第2の波,そして現在は第3の波である。この第3の波は,非行事実の量,質ともに最高を記録した。今日の非行には,いくつかの特色があり,本研究はそのなかの初発型非行について着目したものである。初発型非行は,今日の非行の約3分の2を占めるといわれ,その動機は単純で,内容はささいであるが,そのままにしておけば重大な犯罪につながる可能性の高い非行形態である。本研究は,昭和56年度に旭川地方でみられた少年非行( 193件)を調査し,その概略をつかんだ。さらに,そのなかから初発型非行と考えられ,資料が豊富な5人の児童から事例研究によって個人の内面にせまり,少年非行対策のひとつの手がかりを見出すことを意図し,研究をすすめた。その結果,旭川地方における非行は,中心都市である旭川市に集中し,万引・自転車盗・不良交遊など典型的な初発型非行が多く,また一過性のものであった。非行年齢は,13歳と14歳に集中し,中学生によるものが非常に多かった。非行要因はさまざまであるが,欠損家庭,共働きによる母親不在,監護教育の欠如などの家庭での問題,学業不振,児童・生徒と教師間の相互障害状況などの学校での問題,情報化社会,非行文化の氾濫などの社会での問題が考えられた。以上から,旭川地方の家庭,学校,地域総ぐるみの非行対応策が望まれる。
著者
鳴川 啓子 笠井 茂美
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.153-158, 2002-02-05

I子と出会って,数回目の家庭訪問のとき,彼女の口から出たことばに,返答に詰まった。彼女の傷ついた心の叫びがあった。「つらかったね」と言うのが精一杯であった。学校での友達や先生の事,色々な事が彼女に降りかかっていたのだろう。不登校という信号を出し,何かを訴えている彼女に周りにいる私たちは何をサポートしなければならないのか。ここに,学校が組織体制を組み一体となり,I子の支援に取り組んだ実践事例を紹介する。
著者
清水 亜矢子 長 和彦
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.145-152, 2002-02-05

本論は,最近注目を集めている「ひきこもり」について,どういった現象であるかを文献を通して紹介し,また,中学1年時から卒業までの約2年半「ひきこもって」いたA君とのかかわりから,A君の自分の内から外へと変容した経過と,清水のかかわりの変容を検討したものである。A君は出会った当初から「変わろう」という気持ちを持っており,この7カ月半の間に別人のように変わった。しかし,一方で清水は,「何もしなかった」という表現がふさわしいかかわりをしてきた。これは,自然体で向き合ってきたということを意味し,このかかわりがA君にとって丁度良い間合いとなり,清水の「いつでも側にいる」,「いつでも力になる」という態度となって現れ,更に専攻科の人々がA君をあたたかく受け入れてくれたことが加わわったことで,A君は明るく,積極的な対人関係や活動の広がりを見せていった。また,「ひきこもり」者の積極性や努力をサポートする体制の必要性も感じた。
著者
高杉 誠一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.58-60, 2000-02-10

運動会への参加についての特殊学級と通常学級の交流を,学級通信に載せられた学級児童の生の声をとおして述べた。子ども達自身が思いやりの心を学び取っていた。
著者
熊谷 由美子 紙谷 恒 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.127-132, 1999-02-10

本報告は,旭川市内の小学校特殊学級に在席する,自閉症児Aちゃんとの個別指導の取り組みについて述べたものである。これまで行ってきたひらがなの一文字一文字の読み指導と併行し,単語は文字の集合体として成り立ち,意味を持っていることを知らせるための取り組みを行った。文字カードを読んで絵カードを選ぶ課題では,単語を構成している一文字一文字のそれぞれに対応する絵カードを選んでしまっていたが,横書きから縦書きの形に変えることでそれが「気付き」となり,すぐに改善できた。また,絵本の書き写しや歌詞カード作りなど,Aちゃんの好きなことを取り入れた活動を行う中で,歌詞を指差しながら確認するなどの成果が見られるようになった。