著者
槌野 正裕 荒川 広宣 山下 佳代 石井 郁江 山田 一隆 高野 正博
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.23-28, 2015 (Released:2020-07-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】排便に適した姿勢に関して、排便姿勢の違いが肛門直腸角(ARA:anorectal angle)と疑似便の排出量に及ぼす影響について検討したので報告する。【対象と方法】Defecographyを行った症例の中で、前屈座位と伸展座位によるARA、仙骨の傾きを撮影された静止画像から計測し、排便困難例では疑似便の排出量を比較した。【結果】ARAは伸展座位で114.1°±21.0°、前屈座位で134.6°±16.8°、仙骨の傾きは84.9°±10.8°、92.4°±10.7°、排出量は90.1g±82.0g、140.7g±93.3gであり、有意に前屈座位の方がARAと仙骨の傾きが大きく、排出量が多かった。【考察】前屈座位は骨盤が後傾し、仙骨はうなずくため、排出時にARAが鈍化し、排出量が多くなるため、排便に適した姿勢であると考えられる。
著者
槌野 正裕 山下 佳代 坊田 友子 甲斐 由美 高野 正太 高野 正博
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.34-38, 2008 (Released:2021-10-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

排泄リハビリテーション領域では日常生活動作訓練の一環としての起居からトイレへの移動など、一連の動作としてのアプローチがほとんどであり、排泄そのものに目を向けた直接的アプローチは皆無に等しい。 今回、直腸性便秘のため当院にて排泄訓練を行った10例に対し、ポータブルトイレでの排便姿勢の評価に加えて、排便時の直腸と肛門の怒責圧測定を行った。 結果排便時姿勢不良例では直腸圧が低く、肛門圧が高い値を示しており、排泄を困難にさせていた。また、排便姿勢不良例に対して姿勢指導を行うことで、直腸圧が上昇し肛門圧は低下した。排便姿勢の変化により骨盤機能が改善し、腹圧が加わりやすくなりスムーズな排便が可能となったと考える。
著者
藤田 あけみ
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.49-59, 2018 (Released:2019-12-05)
参考文献数
17

本研究の目的は、直腸がん肛門温存手術(ISR、LAR)患者の術後の排便障害と対処法を明らかにし、看護介入を検討することである。対象者は、直腸がんのためISRとLARを施行した外来受診患者91名であった。肛門温存手術後の排便障害に応じて、食生活に関する対処法として、「辛い味は控える」 「繊維食は控える」や肛門局所に関する対処法として、肛門の洗浄・清拭」 「肛門部の軟膏」 「パット・オムツをあてる」が多く行われていた。その他に、「骨盤底筋運動」 「規則正しい生活」 「腹部腰部のマッサージ」 「整腸剤内服」の対処法が多く行われていた。性別では女性に、就業状況では、術後は楽な仕事に移行した人や術後は無職となった人に、食生活に関する対処法が多かった。排便障害に応じて食生活の対処法を指導する際は、性別、就業状況などを把握し詳細に指導する必要がある。また、肛門局所の対処法である「パット・オムツをあてる」を指導する際は、パットやオムツの使い方、自尊感情を支える支援が必要である。 排便障害のある患者への看護介人として、自己のセルフ・ケア能力を発揮して対処行動がとれるよう排便障害の症状や経過を説明し、自己の状況を受容し目標をもてるように働きかけることが重要であると考えられた。
著者
国武 ひかり 佐藤 郷子 野明 俊裕 荒木 靖三 高野 正博
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.72-82, 2015 (Released:2020-07-17)
参考文献数
20

高齢者を中心とした2,250名を対象として、WexnerスコアやConstipation Scoring System(以下、CSS)スコアを参考に質問票を作成し、排便に関連したアンケート調査を実施した。アンケート回答者のうち、60歳以上の1,709名から得られた結果を分析した。その結果、便失禁、尿失禁、ガス失禁の有症率はそれぞれ、5.3%、20.5%、29.8%であった。便失禁に着目して分析した結果、便失禁の有症率は、男性では尿失禁がある場合20.1倍、女性では尿失禁がある場合は5.8倍、ガス失禁がある場合は5.0倍になることが分かった。
著者
西口 幸雄
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.83-90, 2015

<p> 研究会、講習会は、各地域で非常に苦労して組織化し、またその組織の維持についてもかなり苦労を強いられる。関西では非常にうまく現在組織化されているので、これまでの経過について述べる。</p><p> 研究会は昭和56年10月に第1回目が開催された。おそらく大阪大学の進藤先生や安富先生や堂本さんたちが中心になって初期の組織を作られたのだろう。その後は研究会は年に1-2回定期的に行われ、現在は年に1回6月に開催されている。研究会は世話人により運営され、世話人には関西の主な施設と大学病院での代表者が就任し、認定看護獅も活発な活動を行っているものは世話人に就任してもらっている。現在は世話人27人が年に1回研究会の開催時に会議を行い、予算・決算の承認のほか、雑誌STOMA発刊の報告なども行っている。この組織は人員の入れ替えは適宜おこない、大阪市都島区にある事務所で秘書が常駐し、研究会組織および事業の管理を行っている。費用はすべて会員の年会費で賄われている。</p><p> 講習会は昭和57年7月に第1回目が開催された。これも大阪大学の進藤先生たちを中心とした有志ではじめられたと聞く。その後現在まで毎年開催されているが、現在は、研究会の事業としての講習会で、講習会の実行委員によって運営されている。実行委員は153人で、それにボランティアが加わり、運営されている。実行委員は毎年少しずつ入れ替わりがあり、新しい認定看護師も毎年ボランティアとして参加している。</p><p> 関西では、研究会も講習会もまず会員になることから始まる。会員の中で研究会の中心となる人物を世話人として選び、講習会は会員の中から実行委員を選ぶ。研究会という組織を予算を含めて固めておけばそれに見合った活動ができる。研究会の事業として講習会の開催、雑誌STOMAの発刊を行っているが、余裕が出てくればそのほかいろいろな事業の提案も受け入れたいと考えている。</p>
著者
平井 菜穂 角田 明良
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 (ISSN:18820115)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.106-113, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
15

【目的】骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害(骨盤底筋協協調運動障害)に対する肛門筋電計を使用したバイオフィードバック療法(Biofeedback Treatment,BFT)の介入効果を検証する。 【方法】対象は2016年7月~2019年5月に骨盤底筋協調運動障害と診断されBFTを行った患者。BFT施行回数は原則1ヵ月に1回計5回行った。治療効果の評価には、Constipation Scoring System(0-30)(CSS) スコア、Obstructed Defecation Syndrome (ODS) スコア、Patient Assessment ofConstipation Quality of Life(PAC-QOL)調査票を使用した。 【結果】対象者14例の年齢は73歳(58-85歳)で、男性が12例、女性2例であった。脱落例1例を除き13例で効果の検討を行った。CSSスコアはBFT前14(4-18)からBFT後8(3-15)と有意に改善し(p=0.007)、ODSスコアはBFT前16 (7-21)からBFT後7 (0-17)と有意に改善した(p=0.002)。PAC-QOLのOverallはBFT前1.9(1.0-3.6)からBFT後0.8(0.2-2.5)と有意に改善した(p=0.002)。 【結論】骨盤底筋協調運動障害患者を呈する便排出障害には、肛門筋電計を用いたバイオフィードバック療法が、便秘症状ならびに生活の質を有意に改善するため有用である。