著者
Rafiqul Islam Promsuk Jutabha Arthit Chairoungdua 平田 拓 安西 尚彦 金井 好克 遠藤 仁
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-06-08)

アミノ酸輸送系B0は、中性アミノ酸の経上皮輸送を担当するトランスポーターであり、小腸及び腎近位尿細管の管腔側膜に存在するNa+依存性トランスポーターである。水俣病の起因物質であるメチル水銀は、生体内においてシステインと非酵素的に容易に反応し、メチオニンと類似構造をもつ化合物を生成するため、アミノ酸トランスポーターを介して吸収され、血液組織関門を通過すると考えられている。われわれはすでに、輸送系Lアミノ酸トランスポーターLAT1及びLAT2が、血液・脳関門、胎盤関門に存在し、メチル水銀輸送を媒介することを明らかにした。本研究は、メチル水銀の腸管吸収の分子機序を明らかにするために、最近同定された輸送系B0トランスポーターB0AT1をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、メチル水銀輸送活性を検討した。B0AT1によるロイシンの取り込みは、メチル水銀-システイン抱合体により濃度依存的に抑制され、そのIC50値はアミノ酸輸送のKm値に比して有意に低く、B0AT1はメチル水銀-システイン抱合体を高親和性に受け入れることが明らかとなった。B0AT1によるメチル水銀-システイン抱合体輸送を確認する目的で、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたB0AT1において、14C-メチル水銀の輸送活性を測定した。その結果、14C-メチル水銀単独では輸送されないが、システイン存在下で14C-メチル水銀がB0AT1によって輸送されることが示された。このシステイン存在下でのメチル水銀のB0AT1を介する輸送は、B0を抑制するインヒビターであるBCH(2-aminobicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid)により有意に抑制され、システイン存在下での14C-メチル水銀のB0AT1を介する輸送が確認された。本研究によりメチル水銀がシステイン抱合体としてB0AT1を介して小腸から吸収されることが示唆された。
著者
平田 拓
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.4, pp.146-150, 2012 (Released:2012-10-10)
参考文献数
10

不対電子のエネルギー吸収を特異的に検出することができる電子常磁性共鳴(EPR)分光(電子スピン共鳴,ESRとも呼ばれる)は,フリーラジカル分子の研究において強力な計測手法となっている.EPR分光は,核磁気共鳴(NMR)とは兄弟関係にある磁気共鳴分光法であり,NMRイメージング(核スピンの可視化)同様に電子スピンの分布を可視化するイメージング法も30年来研究されてきた.近年になり,短時間で電子スピンの3次元空間分布を計測する技術が開発された.本稿では,高速EPRイメージングを用いて,生体内の酸化還元状態を可視化する,レドックス計測について紹介する.電子スピンの緩和時間は,ナノ秒からマイクロ秒のオーダーであり,NMRと同様のパルス法による計測は容易ではない.特に,生体を対象とする低周波・低磁場のEPR計測では,連続波を用いた計測が主に用いられている.高速に磁場を掃引するEPRイメージング装置の開発により,生体内で寿命が短いフリーラジカル種の検出,測定が可能になった.また,ニトロキシルラジカルの寿命は溶液または生体中の還元作用の強さを反映するため,ニトロキシルラジカルの信号の消失速度を測定することにより,酸化還元状態(レドックス)をマッピングする方法を説明する.通常,3次元画像計測は長い計測時間が必要とされ,生体内でのレドックスマップを得ることは容易ではなかったが,計測技術の進歩により新しい生体計測への応用も可能になった.
著者
平田 拓 藤井 博匡 伊藤 康一 藤井 博匡 伊藤 康一 赤羽 英夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

実験小動物として用いられるマウスを対象として、電子スピン共鳴(ESR)イメージング法の研究を行った。マウス頭部を計測する650MHzのマイクロ波共振器を作製し、ESR分光装置を改良した。また、スライス選択ESR画像を取得するイメージング法を開発した。さらに、データ取得を高速化することにより、マウス頭部において、半減時が短い六員環のナイトロキシルラジカルを可視化することに成功した。
著者
小野 光弘 塙 政利 平田 拓 下山 雄平
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

生体のin vivo(生きたままでの)電子常磁性共鳴(EPR)計測、とりわけラットのホールボディ計測の実現を目標として、350MHzパルスEPR装置の開発を行った。本研究で得られた成果をまとめると次の様になる。(1) 数値解析により、最適なパルス幅と共振器の共振尖鋭度Qは、緩和時定数T_2=10〜100nsの生体ラジカルに対して夫々10〜68ns、10〜60、T_2=100〜800nsの固体のラジカルに対して夫々68〜158ns、60〜280であることが分かった。(2) 試作した350MHzパルスEPR装置を用いて、γ線照射クオーツ粉末37.5gの電子スピンエコー(ESE)信号の受信に成功した。受信信号電圧はパルス間隔が1400〜1600nsにおいて3〜5mVであった。(3) 本研究で得たESE信号から、γ線照射クオーツの緩和時定数はT_2=778nsと推定される。これは我々の研究室で既に開発した1.3GHzパルスEPR装置による測定結果T_2=759nsに極めて近い値である。(4) 生体計測を行うために、今後共振器のQを更に下げる必要がある。
著者
平田 拓也 舩津 敏之 毛戸 祥博 阿久沢 忍 秋保 啓 西田 明登 笹又 理央 宮田 桂司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.5, pp.281-291, 2009 (Released:2009-05-14)
参考文献数
35

イリボー®錠(ラモセトロン塩酸塩)は,男性における下痢型過敏性腸症候群(IBS)治療薬として2008年に上市された,強力かつ選択的なセロトニン5-HT3受容体拮抗薬である.ラットを用いた薬理試験において,ラモセトロンは恐怖条件付けストレス(CFS)およびコルチコトロピン放出因子(CRF)により惹起される排便亢進を用量依存的に抑制し,その効力は他の5-HT3受容体拮抗薬や既存のIBS治療薬よりも強力であった.また,これらの排便異常を抑制する用量とほぼ同じ用量範囲で,ラモセトロンはCFSによる大腸輸送能亢進およびCRFによる大腸水分輸送異常に対しても有意な改善効果を示したことから,その排便異常抑制作用には,ストレスによる大腸輸送能および水分輸送の異常に対する改善作用が寄与していると考えられた.さらに,ラモセトロンは拘束ストレスによる下痢および大腸痛覚閾値低下をほぼ同じ用量範囲で有意に抑制したことから,ストレスによる排便異常および大腸痛覚過敏のいずれにも有効であることが明らかとなった.一方,臨床においては,RomeII基準に合致した下痢型IBS患者を対象に,第II相および第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した.その結果,ラモセトロン5μgの1日1回12週間投与は,全般症状,腹痛・腹部不快感および便通異常のいずれに対しても優れた改善効果を示し,プラセボに対する優越性が確認された.また,同じく下痢型IBS患者を対象に実施した長期投与試験の結果から,ラモセトロンの治療効果が長期間持続するとともに,効果や副作用の発現に応じて用量を適宜増減することで,より高い有効性と安全性が得られることが明らかとなった.以上,非臨床薬理試験および臨床試験の結果から,ラモセトロンは下痢型IBS患者において便通異常と腹痛をともに抑制し,その症状の寛解に極めて有効な薬剤であると考えられる.