著者
佐仲 雅樹 瓜田 純久 中西 員茂 中嶋 均
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 = An official journal of the Japan Primary Care Association (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.299-305, 2012-12-21
参考文献数
46

<b>要 旨</b><br> 経験豊富な医師や看護師は, 一見軽症と映る患者に対して直感的に「重症感」を抱くことがある. このような直感的判断の重要性は広く認識されているが, いまだ経験則と言わざるを得ない. そこで我々は本稿において, 「重症感」の具体的意味を考察し, 1つの病態生理学的/症候学的モデルを提唱した. このモデルに基づいて言語化すれば, 重症感とは, 病態生理学的には「生体のホメオスタシスが破綻する前兆」であり, 症候学的には「急性に発症する全身性自律神経反応とacute sickness behavior」である. 重症感という直感を言語化し, 研修医や新人看護師に伝えることは, 「危険な患者」の見逃し防止につながると考えられる.
著者
若林 崇雄 宮田 靖志 山上 実紀 山本 和利
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 = An official journal of the Japan Primary Care Association (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.360-367, 2010-12-15
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

【目的】<br> 内科医撤退を経験した基幹病院を利用する患者・住民が, 医師・医療についてどのような想いを抱いているのかを明らかにする. <br>【方法】<br> 一時内科医が撤退し, 現在は診療を再開しているA市の基幹病院を利用する患者・住民を対象とした. <br>1. 質問紙作成<br>2回のフォーカス・グループ・インタビューをもとにテーマとサブテーマを抽出する質的な手法により質問項目を作成した. <br>2. 質問紙調査<br> A市基幹病院を利用する患者を対象とした. <br>【結果】<br> 有効回答は399名. 内科医師撤退の原因として, 81%の患者が大学, 79%が国の制度, また72%が病院と回答した. 内科医師が撤退したことは医師の身勝手かどうかについては50%ずつに意見が分かれた. また74%の患者は内科医師撤退が患者に不信感を与えたと回答した. 88%の患者は医師が患者に尽くしていると回答し, 88%が勤務条件で病院を移ることは仕方ないと回答したが, 96%の患者は医師に患者のために尽くすことを求めていた. 85%の患者は医師を信頼できると考えていた. <br>【結論】<br> 医師撤退を経験した患者は撤退により現実的に困っており, これは患者の利便性が損なわれるため当然と考えた. また撤退の原因として医療に関する組織に対し不信感を持っていることが示唆された一方で, 医師個人に対しての感情は複雑であった. 多数の患者は医師を聖職と考え, 医師撤退を経て尚, 医師の人間性やコミュニケーションへ期待し信頼していると考えられたが, 医師をサービス業と捉える患者も見られ, 信頼の構造に変化がある可能性も示唆された.
著者
遠藤 淑美
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 = An official journal of the Japan Primary Care Association (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.360-362, 2012-12-21
参考文献数
7

<b>要&emsp;旨</b><br>&emsp;本稿は, 「語り」による新人看護師研修にファシリテーターの一人として参加している私の体験を通して, 新人看護師教育におけるナラティブとリフレクションの意味を考えてみようとするものである. はじめに, 新人看護師と熟練看護師の差の1つに状況対応能力があり, その能力の獲得のために, リフレクションがかかせないこと, リフレクションするには, 状況に没入する自分ともう一人の自分が必要であり, 研修はその両者を育てる機会になっていることを述べた. 次に, ここでの他者の存在は, リフレクションの特徴である新人看護師自身の気づきを導き, 生み出すためになくてはならないことを述べた. 最後に, リフレクションの過程におけるナラティブ (語り) の意味について, 声に出して「語る」ことの意味を体験の身体化の側面から, 「聴く」ことの意味を, 「行為の中の省察」へつながる行為として, また, 看護の伝承という側面から考察した.
著者
長田 孝司 鈴木 弘誉 山田 重行 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 = An official journal of the Japan Primary Care Association (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.400-407, 2010-12-15

【目的】<br>平成21 (2009) 年6月1日より改正薬事法が施行され, 薬剤師は第1類医薬品を購入する顧客に対して安全かつ適正な使用ができるよう情報提供を行うことが義務付けられた. 第1類医薬品に関する適切な情報を提供するために顧客の健康ニーズをアンケート調査した. <br>【方法】<br>愛知県, 岐阜県, 三重県のドラッグスギヤマにおいて第1類医薬品を購入した顧客を対象とし, 薬剤師が購入した第1類医薬品に関する情報提供を行った後, アンケート用紙を配布した. 記入したアンケート用紙は, 郵便にて直接, 当研究室で回収した. <br>【結果】<br>第1類医薬品の顧客のうち66.4%が購入を繰り返し, 77.6%が「満足」と回答した. また, 90%以上の顧客は, 購入時の薬剤師の説明について「分かりやすい」と感じているが, 64.2%の顧客が薬剤師の説明がないと買えないのは不便と思っていることも明らかとなった. そして, 今回アンケートに回答した顧客の6.0%に一般用医薬品使用後に調子が悪くなった経験があった. <br>【結論】<br>添付文書を読まない顧客に対する薬剤師の説明や相談を丁寧でわかりやすいものにすることで, 第1類医薬品購入時の利便性意識を向上し, 安全で有効なセルフメディケーションの推進を加速すると考えられた.