著者
安野 史子 西村 圭一 浪川 幸彦
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.46-59, 2021-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
15

本稿は,ドイツの「PISAショック」以降の教育改革を概観し,ブランデンブルグ州にあるヴォルテール総合制学校での学習管理システム(LMS)の利用を中心に,ICTを活用した数学の授業の一端を紹介する.学習指導要領の改訂を受け,数学科の教員が分担して作成したLMSのデジタルコンテンツ,紙媒体のプリント等を活用した指導方法に更新し,それによる教育効果を得ている.その教育は,生徒の多様な学び方を尊重し,「自律性」を育む教育となっている.また,新型コロナウイルス感染拡大禍においても,中断することのない,継続的な学びに繋げている.本稿は,これらの方法を概観し,日本の数学教育への示唆を得ることを目的とする.
著者
鈴木 彬
出版者
公益社団法人日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, 2003-01-01

この基調発表は,日本数学教育学会の研究活動の1つとして,本学会の前年度までの全国大会での研究発表や協議内容を中心にして,数学教育研究の基調となる課題や指針について研究部中学校部会で考察検討したものです.項目・内容は,各分科会の研究発表・協議の課題を明確にするという立場で,1. 本分科会の位置(性格) 2. これまでの研究経過 3. 問題点と今後の課題として述べてあります.大会の分科会構成はその都度便宜的に区分けするもので,この基調発表の領域とは必ずしも一致していない場合もあり,研究の内容等はいくつかの領域に関連共通したり重複したりしているものもあります.新学習指導要領での教育課程がはじまり,各学校現場で創意工夫と自主的で意欲的な実践活動が一層期待されます.特に,「数学的活動を楽しむ.」という目標を踏まえて,これまで以上に生徒が自ら学び,自ら考える力を育てることが期待されています.さらに,21世紀に向って,これまでの数学教育をどう改善していけばよいか,問題提起や提案が活発になり,一層研究が深まることが期待されます.新学習指導要領の特徴は,授業内容,授業時数の削減,総合的な学習の時間や選択教科の時間の設置,絶対評価の導入など承知のことですが,さらに,学習指導要領の枠組の基準は最低とされ,選択の内容を現場に委ね,内容の上限撤廃なども挙げられ,新しい教育改革が進んでいます.そして,選択の内容が現場に委ねられたということから,選択でどのような数学の内容を取り扱うのがより効果的であるかの研究も大いに期待されます.評価については,絶対評価の実施により評価規準をどう作っていくか.毎日直面することに対しての評価規準の研究も,より一層取り組んでいくことが期待されます.国際交流も年々盛んになる昨今,数学の学力や学び方など数学教育について国際的視野に立った研究も望まれます.本学会が,日本の数学教育研究の根幹をなす学会であり,研究大会はその成果や進むべき方向を確認し,数学教育の在り方を追求していくものです.この基調発表は,学会誌「数学教育」(原則として毎年毎卷の第1号)と全国大会総会特集号に掲載します.日頃の研究活動や全国大会の分科会で,ここに示した当面する課題を十分に念頭に入れて,先行研究や研究の積み上げに留意して,広くかつ継続的な視点を失わないよう実践的な追求をしていくように期待するものです.