著者
西巻 明彦
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.267-272, 2013-11

『平治物語絵巻』は,現存するものが三条殿焼打巻,信西巻,六波羅行幸巻である.この中で,信西巻は,第三段,第四段が詞書が陽明文庫本に近似しているが,絵画は金刀比羅本に近似した描写がなされている.信西の首は,斬首されて後閉口しているが,京大路をわたしている時は開口し,信頼,義朝にのろいをかけている.このことは,口腔が物語の場面を変換させる機能を持って描写されている点が注目される.
著者
鈴木 長明
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.378-387, 2014-09

青森県,岩手県,秋田県の民話,昔話,伝説を資料として,病気治療例を収集し分析した.収集できた症例は54例であった.病人あるいは悩める人は59例で,そのうち一般人は29例であった.症状あるいは悩みは57例であった.効果がなかった治療歴では医者が14例,宗教等関連者が16例であった.治療担当者あるいは相談者では宗教等関連者が17例,本人を含む一般人が35例であった.診断法あるいは本人の願い成就法は占い,祈願,八卦,その他であった.病因あるいは病名は崇りあるいは邪気が最も多く,医学的には蛇による咬傷,恋わずらい,その他であった.治療法では娘による介抱,湧き水を飲む,温泉などの医学的療法,呪文,崇りを除くなどの宗教的療法であった.治療効果は成功例が44例,死亡例が1例であった.治療効果には心理的要因が大きく関与しておりそれは現代医学の心理療法の原点になっているのではないかと考えられる.
著者
米長 悦也 渋谷 鉱 石橋 肇 谷津 三雄
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.294-300, 1988-08-25

遠山椿吉氏主管の東京顕微鏡院発行の雑誌「顕微鏡」第1号から第50号までの中から,東京歯科医学院を中心とした歯科に関する記載について摘録した.歯科に関する記載は,明治29年6月発行の雑誌「顕微鏡」第11号から明治35年3月発行の第46号までに認められた.特に,東京歯科医学院の院外生のための「歯科講義録」第1号は,明治33年3月25日に発行されたものであり,しかもその広告が5日後に発行された雑誌「顕微鏡」第33号,第34号合巻に掲載されたことから東京歯科医学院と東京顕微鏡院の両者間に互いに利益をもたらしたものと思われた.さらに雑誌「顕微鏡」第38号に掲載された東京顕微鏡院の講堂の写真と,第35号に掲載された東京歯科医学院の卒業式の記事とを合わせ考えると,東京歯科医学院の第1回の卒業式が,この写真の講堂で明治33年4月21日に行われたものと考えられ,顕微鏡雑誌局発行の雑誌「顕微鏡」は,東京歯科大学史上貴重な資料を提供する雑誌である.
著者
湯浅,高之
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1992-09-20

神農を医薬祖として奉祀している神社や祠は,日本各地に存在すると思われるが詳細は定かでない.また,これらの神社で神農を奉讃する神農祭を執行しているか否かも判然としない.しかしその中で,東京都文京区湯島聖堂の「神農祭」と大阪市東区道修町(どしようまち)の少彦名(すくなひこな)神社の「神農さんのお祭り」は,古い伝統をひき継ぎながら現在でも綿綿として統けられている.この両地の神農祭は,医薬祖である神農を祭神としていることでは同一であるが,その祭りの様式と内容が異なっている.湯島聖堂の「神農祭」は,日本漢方の医学者が主体の「医学祭」的色彩が濃く,少彦名神社の「神農さんのお祭り」は,町の庶民が主体の「商業祭」的様相を呈する.神農という同一神を祭神としながら,祭りの発展過程で,祭りを司る人々と地域性の相違から,内容が変化し,東京と大阪では異なる形として現われていったものと思われる.
著者
丹羽,源男
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, 1995-09-30

歯科をはじめ,今日の生活に広く活用されているフッ素は,発見がたいへん困難で「化学者泣かせ」だった.フッ素を人類にもたらした3人の化学者を紹介する.
著者
齊藤,力
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, 2000-10-01

北原白秋は詩人・歌人で,童謡,歌曲,器楽曲,合唱曲,管弦楽曲などの作詞を多数行ったことで,あまりにも高名であるが,校歌,団歌,社歌,市町村歌,地力民謡・音頭,軍歌なども数多くつくっていたことは余り知られていない.これらの中に歯学,医学に関連する学校の校歌,および団歌などをいくつかみることができる。そこで,これらの歌に関して調査するとともに,その歌詞について若干の考察を行った.北原白秋作詞による歯学,医学関係の歌にみられる主な共通語句は「国手」,「醫」,「窮」,「済」,「仁」などであった.これらの歌詞は北原白秋の医学,医療に対する考え方,すなわち医の社会性,平等性,奉仕の精神の重要性,愛の心の必要性などを表現しているものと思われた.