著者
越後 多嘉志 竹中 哲夫 江沢 真
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.148-153, 1975-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

蜂蜜を加熱することによって生じる糖含量,酸度,色および細菌生育阻止力の変化について調べた。(1) 加熱温度,時間の増加に伴い,フラクトースとグルコースの含量比およびシュークロースとフラクトース,グルコース含量との比は小さくなる。総酸度にはほとんど変化ないが,ラクトン酸度と遊離酸度の比は大きくなる。(2) 蜂蜜を加熱するとHMFが増加し,褐変反応によって蜂蜜は着色する。この反応の1経路としてHMFを経由する反応系が考えられ,蜂蜜のような酸性液中ではグルコースよりもフラクトースが反応しやすく,容易にHMFを生成し,しかもこの反応はアミノ酸なしでも進行する。しかしHMFからの反応は進行しにくい。(3) Staphyloccus aureusに対する蜂蜜の生育阻止作用は高糖濃度,酸成分および過酸化水素によると考えられ,特に過酸化水素は蜂蜜中のグルコース・グルコースオキシダーゼ反応系によって生成している。蜂蜜を加熱して阻止作用が失われるのはグルコースオキシダーゼが失活して過酸化水素が生成しなくなるためと考えられる。(4) 上記結果の実際の裏づけとして,工場での加熱工程における蜂蜜の品質変化を調査した。
著者
宮村 英宏 竹中 陽子 竹中 哲夫
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-44, 1998-01-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
19

納豆菌でおからを発酵し, おからとは異なった風味や特性を有する食品素材を得ることを目的とし, 納豆菌発酵おから (おから納豆) を調製し, その成分, 組織ならびに物理的特性の変化について調べた。(1) おから納豆は, 遊離アミノ酸, 遊離脂肪酸, 無機リンは増加し, 食物繊維量は減少した。遊離アミノ酸では, ロイシン, フェニルアラニンが多く, 食物繊維では, ペクチンが増加し, シュウ酸塩不溶画分中のヘミセルロースが減少した。(2) 納豆菌数は発酵5時間から10時間にかけて急激に増大し, 品温は発酵15時間で50℃に達した。プロテアーゼ活性が高まるにつれて窒素分解率も増加した。また, 発酵15時間以後の生成アンモニア量は急増し, pHも急増した。発酵30時間後pHは8.2であった。(3) 走査型電子顕微鏡によるおから組織の観察で, 24時間発酵後のおから納豆では, 大豆細胞壁が完全に崩壊していることが確認された。また, 発酵時間が長くなるにつれ崩壊性が高まり, 10ミクロン以下の粒子が増加した。(4) おからを納豆発酵しても人工消化率は変化なかった。しかし, おから本来の吸水性および吸油性は損なわれず, 乳化性および乳化安定性は増加した。
著者
竹中 哲夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.858-865, 2009 (Released:2016-02-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

味噌,醤油,納豆製造時に副生する蒸煮廃液(大豆煮汁)は排水処理にコストがかかるので,その有効利用が求められている。そこで,著者は大豆煮汁に含まれるアンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害物質として,ニコチアナミンを分離・同定した。さらに,このニコチアナミンを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与して,降圧作用を認めた。したがって,大豆煮汁は脂質やタンパク質などの夾雑物が少ないので,ニコチアナミンの供給源として期待できるので解説いただいた。
著者
越後 多嘉志 竹中 哲夫 市村 真
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.223-227, 1974-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

蜂蜜の品質に関する一連研究として,蜂蜜中の酵素の安定性を調べた。(1) 酵素液中にはアミラーゼ,グルコースオキシダーゼ,α-グルコシダーゼが存在し,ゲルろ過法によってそれらの活性区分を明らかにした。(2) 酵素液中の上記各酵素の作用最適条件を第1表に示した。またpH安定性試験から蜂蜜のpH(約3.8)附近ではどの酵素も不安定であった。(3) 酵素液あるいは蜂蜜中でのアミラーゼは,加熱に対して比較的安定であり,グルコースオキシダーゼは最も不安定であった。酵素液を冷温(3℃)貯蔵すると活性低下をほとんど認めないが,室温(20℃)貯蔵では低下を認め,この場合アミラーゼの低下度合が少なく,グルコースオキシダーゼが最も大きかった。(4) 密封したガラス瓶に蜂蜜を7か月間室温(20~28℃)貯蔵した結果,酵素活性の損失度合はアミラーゼが最も少なく,α-グルコシダーゼとグルコースオキシダーゼはともにアミラーゼよりも2倍ぐらい多かつた。