著者
伊藤 文人
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.143, pp.57-79, 2021-03-31

本論考は,「社会福祉発達史」の視点と方法に関する戦後社会福祉学史上の意義と限界を明らかにしていく作業の一環として設定される.本論考では,「社会福祉発達史」という研究対象が生まれた背景としての戦後社会科学の知性史の一端にも触れつつ,そうした当時の知的環境のなかでこの研究領域を開拓した故高島進(1933-2016)がどのような問題意識を以てこれと対峙してきたのか,1970 年代初頭において提起された「社会福祉三段階発達史論」の到達点までの足跡を明らかにしながらその意義を考察するものである.
著者
伊藤 文人
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.1-23, 2017-09-30

本稿は, ポプラリズム運動を牽引したレイバー・ガーディアンズ(Labour Guardians:労働党の影響力の強い保護委員会)による人道的救貧行政(the Humane Administration of the Poor Law)をこの間収集した新資料を基に検討することを通じて,彼らの実践思想の内実にアプローチするものである. 本稿では,改正救貧法(1834 年)に規定されたガーディアンズの役割を確認した上で,1920 年代にレイバー・ガーディアンズによって実施された救貧行政とソーシャルワークの実相に焦点を当てる.その際に彼らの政敵であった慈善組織協会(COS)のそれと比較しながらその特徴を考察する.また彼らの設定した救貧法上の救済基準(スケール)の運用実態にも触れつつ,彼らのストリート・レベルの政策思想についても検討する. 検討の結果,レイバー・ガーディアンズの救貧行政は,遵法精神(コンプライアンス)の徹底を通じたステイクスホルダーへのアカウンタビリティ(説明責任)の確立と,財政事情が厳しい中でもその政策思想を現実化しようとした救済基準の設定と柔軟な運用を行っていたことが明らかになった.
著者
伊藤 文人
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.145, pp.23-50, 2022-09-30

本稿の目的は,現代歴史学から「社会福祉(なるもの)」へ接近し,社会福祉の歴史研究を刷新をしていると思われる,「福祉の複合史(the mixed economy of welfare)」研究の展開過程とその方法論的な特長を抽出することである. 「福祉の複合史」研究は,本国英国では1970年代末期から,日本では英国での成果を摂取しつつ1990年代後半から徐々に「歴史学」分野で紹介・深められ,多くの「福祉の歴史」の諸相を明らかにしてきた.その特長は,それまでの社会福祉史研究(≒社会事業史研究)が無意識的に採用してきたと思われる「歴史観 historiography」(ホウィグ主義史観とマルクス主義史観)とは異なる,多層的で射程の長いそれを見いださそうとしているところにある.本稿は,この「福祉の複合史」研究の主要な論者による問題意識と主張——特に彼らが注目する「中間団体(アソシエーション)」による福祉供給主体の史的内実:「福祉ボランタリズム」——を紹介し,その到達点へ若干のコメントを行うものである.
著者
伊藤 文人
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.28-39, 2020-11-30 (Released:2021-02-09)
参考文献数
50

小論の目的は,二木立から故高島進へ提起された政策研究の分析枠組(analytical framework)に関する批判に応答することである.小論では,二木の政策研究の有効性を検証するため両者の政策研究の方法論的特質をその射程とダイナミズム―分析枠組・イデオロギー批判・対案―に焦点を当てつつ批判的に再検討した.高島は社会福祉の全体性=歴史(理論)を踏まえた,中長期的展望に価値を見いだすコミュニストとしての政策研究を行い,二木は政策の前提条件を原則的に問わない,短期的な実用主義に価値を見いだすプラグマティストとしての政策研究を実施したといえる.新自由主義の席巻する文脈で今日の社会福祉政策を捉えるには,二木の研究上の貢献を尊重しつつ,高島の政策研究への再評価が必要になるだろう.
著者
伊藤 文人
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.137, pp.1-23, 2017-09

本稿は, ポプラリズム運動を牽引したレイバー・ガーディアンズ(Labour Guardians:労働党の影響力の強い保護委員会)による人道的救貧行政(the Humane Administration of the Poor Law)をこの間収集した新資料を基に検討することを通じて,彼らの実践思想の内実にアプローチするものである. 本稿では,改正救貧法(1834 年)に規定されたガーディアンズの役割を確認した上で,1920 年代にレイバー・ガーディアンズによって実施された救貧行政とソーシャルワークの実相に焦点を当てる.その際に彼らの政敵であった慈善組織協会(COS)のそれと比較しながらその特徴を考察する.また彼らの設定した救貧法上の救済基準(スケール)の運用実態にも触れつつ,彼らのストリート・レベルの政策思想についても検討する. 検討の結果,レイバー・ガーディアンズの救貧行政は,遵法精神(コンプライアンス)の徹底を通じたステイクスホルダーへのアカウンタビリティ(説明責任)の確立と,財政事情が厳しい中でもその政策思想を現実化しようとした救済基準の設定と柔軟な運用を行っていたことが明らかになった.
著者
木戸 利秋 平野 隆之 伊藤 文人 丹羽 啓子 丹波 史紀 谷口 由希子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

社会的排除への政策対応が課題になっていることをふまえ、イギリスと日本の政策プログラムの評価研究を行った。その結果、イギリスでは社会的排除対策の進展もみられるが、同時に現代社会において貧困や排除に対応すべきソーシャルワークが岐路にたっていることも明らかになった。他方、日本では都市部での貧困調査、子どもの貧困調査、そして過疎地域の高齢者実態調査から貧困・社会的排除対策の現状と課題を明らかにした。
著者
成田 雅 鵜沼 菜穂子 伊藤 文人 佐藤 憲行 星野 智祥 井上 実 山本 正悟 安藤 秀二 藤田 博己
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.164-167, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

タテツツガムシによるつつが虫病の臨床像は多彩で見逃されることが多い.病歴(好発時期と好発地域,野外活動歴),バイタルサインと身体所見(発熱,比較的徐脈,発疹,刺し口)から積極的に疑い,疑わしければ直ちにテトラサイクリン系抗菌薬にて治療を開始すべきである.血清学的にはKawasaki型あるいはKuroki型のOrietia tsutsugamushi抗原に対する抗体価の上昇が特異的であるが,これらは一般的な外注検査での抗体価測定には含まれないことに注意する.痂皮の遺伝子学的検査も特異性が高く有用である.
著者
伊藤 文人
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.143・144, pp.57-79, 2021-03-31

本論考は,「社会福祉発達史」の視点と方法に関する戦後社会福祉学史上の意義と限界を明らかにしていく作業の一環として設定される.本論考では,「社会福祉発達史」という研究対象が生まれた背景としての戦後社会科学の知性史の一端にも触れつつ,そうした当時の知的環境のなかでこの研究領域を開拓した故高島進(1933-2016)がどのような問題意識を以てこれと対峙してきたのか,1970 年代初頭において提起された「社会福祉三段階発達史論」の到達点までの足跡を明らかにしながらその意義を考察するものである.
著者
篠原 一彰 駒場 智美 橋本 克彦 伊藤 文人 岡田 恵 石田 時也 横山 秀之 松本 昭憲
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.1105-1110, 2014 (Released:2018-01-25)
参考文献数
24

過去17.5年間に,運転中に意識障害発作を発症し当院に救急搬送された203例について検討した.車両の内訳は四輪車165例(四輪車運転手の3.6%),二輪車38例(二輪車運転手の1.1%)で,発作の原因としてはてんかん発作77例,脳血管障害62例などであった.運転中の意識障害発作は稀ではなく,自動運転技術開発の意義は大きい.