著者
古賀 浩二 馬被 健次郎 今村 敬 荒牧 軍治
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.20030008, 2003

Usually, main parts of computer programs of structural calculation consist of complicated mathematical expressions, and generally speaking, these expressions are classified into two categories. One category represents relational expressions which are derived directly from physical laws, mathematical formulas and geometrical constraints, and the other category represents calculative expressions which are derived from numerical methods applied in the structural computation. The aim of this paper is to introduce a new tool in the object oriented programming for the purpose of making computer programs in structural calculation simple and easy to write. We introduce a new object class which represents an relational mathematical expression, and a new computational mechanism relating to the object class. One can assume that the relational expression holds throughout the program if one declares and makes the instances at the beginning of the program. By the use of the new tool of OOP in the structural calculation, one can separate relational expressions, which should be declared at the beginning of the program, and the other calculative expressions. As a result, one can make computer programs, whose main part consists of calculative expressions only, by assuming that the declared relational expressions hold throughout the program.
著者
小川 竣 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.20210004, 2021-03-18 (Released:2021-03-18)
参考文献数
22

本研究は、過渡的に変化する外荷重に対して構造物の最大応力を低減するためのトポロジー最適化手法を提案する。任意の波形を持つ外荷重を取り扱うため,運動方程式の解法は、ニューマークのベータ法による逐次積分法を採用する。さらに、解析で対象としている全時刻で生じる最大ミーゼス応力を最小化するための新しい目的関数を定義する。随伴変数法と高い精度で感度が得られる Discretize then differential approach の考え方を適用した過渡応答問題の解析感度を定式化する。定式化した感度は,有限差分法をベンチマークとした精度検証を行うことによって理論の妥当性を示す。最後に、複数の最適化計算を示すことで、提案手法の有効性を確認する。
著者
小川 竣 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.20210005, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
22

本研究では、過渡的に変化する温度分布を制御する最適構造の創成を目的に非定常熱伝導問題のトポロジー最適化手法を提案する。非定常熱伝導問題における温度分布の履歴依存性を感度解析において考慮するため、最も汎用性が高く、解析条件によらず高い精度で感度を計算できるDiscretize then differential approachを応用し,感度の詳細な定式化を行う。さらに、物体領域の熱伝導性を担保しながら、任意の温度分布に制御できる構造を導出するため、熱コンプライアンスと目標温度との2乗誤差による重み付け総和関数による目的関数を新たに定義する。定式化した感度は、有限差分法をベンチマークとした精度検証を行うことによって理論の妥当性を示す。最後に、複数の最適化計算例を示すことで、提案手法の妥当性を示す。
著者
村井 直樹 野口 悠暉 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.20210009, 2021-05-21 (Released:2021-05-21)
参考文献数
39

本論文では,高材料定数比均質化法とレベルセット法に基づくトポロジー最適化法を組み合わせた方法論を提案し,電磁メタマテリアルのユニットセル構造の最適設計を行う.高材料定数比均質化法は,メタマテリアル内を伝搬する波動の振る舞いを厳密に評価可能な手法であり,広い周波数帯で有効である上に従来の均質化法では困難であった局所共振現象の評価が可能である点を特長とする.まず,高材料定数比均質化法について概説した上で,ユニットセル構造を設計変数とし,均質化係数を目的関数とする最適化問題を定式化する.次に感度解析を行い,最適化に必要な設計感度を形状感度とトポロジー導関数の概念に基づき導出する.数値解析例では,負の透磁率を示すユニットセル構造の最適化例を示す.さらに,得られた最適構造を周期的に配列させたメタマテリアルに対してヘルムホルツ方程式によるマクロ応答の解析を行い,提案手法の妥当性を示す.
著者
酒井 虹太 野口 悠暉 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.20210018, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)
参考文献数
19

本研究では,幾何学的特徴量に対する偏微分方程式を用いて,型による成形製造の可否を判定する数理モデルを提案する.さらには,提案するモデルとレベルセット法に基づくトポロジー最適化を用いて,型による成形製造を前提としたトポロジー最適化法を提案する.最初に,型による成形製造において要求される幾何学的制約条件を明確化する.次に,法線ベクトルを仮想的な物理モデルによる定式化を行う.さらには,製造性に関する幾何学的制約条件を具体的に定式化する.また,有限要素法を用いたトポロジー最適化の具体的な数値解析アルゴリズムを提案する.最後に,二次元及び三次元の数値解析例を示し,本提案手法の有効性と妥当性の検証を行う.
著者
小川 竣 音羽 貴史 山田 崇恭
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200022, 2020-12-23 (Released:2020-12-23)
参考文献数
15

本研究は、熱交換量性能最大化を目的としたレベルセットトポロジー最適化手法を提案するものである。トポロジー最適化は、最適化の過程で境界の移動だけでなく、新たな境界を発生させることが可能である。また、熱交換は物体の境界に行われるため、その境界の位置と形状が物体の温度分布に大きな影響を与える。そこで、本研究では、物体の形状依存の境界条件として熱伝達境界を考慮した感度解析手法を提案する。特に、トポロジー導関数と形状感度が異なる式で定義されることを前提に、2つの感度式を組み合わせた新たな設計感度式を示す。加えて、最適化計算中に自動で熱伝達境界面の位置を判定する数値解析手法を導入する。最後に具体的な数値計算を行い、提案した手法の妥当性を示す。
著者
大石 篤哉
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.20150009, 2015-08-24 (Released:2015-08-24)
参考文献数
15

Isogeometric解析は, CADで形状定義に用いられるNURBSを解析の基底関数として用いる新しい解析法である. 形状定義と解析に同一の基底関数を用いているため, 従来の有限要素解析において実用上最大の難点となる要素分割が不要になり, CADとCAEがスムーズに接続されるという大きな利点を有している. しかしながら, Isogeometric解析の基底関数であるNURBSは従来の有限要素解析で用いられる基底関数よりも複雑であることや, 有限要素解析の節点に相当する制御点が必ずしも解析対象の内部および表面に存在するとは限らないという相違点などは, Isogeometric解析を理解する際の障害となることがある. 近年, スマートフォンやタブレットなどの携帯端末が急速に普及し, また, ハードウエア性能の向上とともに様々な新しい用途にも使われるようになりつつあり, 時間や場所に限定されないモバイルコンピューティング, ユビキタスコンピューティングを実現するキーデバイスである. 本研究では, 携帯端末上で動作するCAEシステムを開発し, その性能を評価した. 現状では絶対性能においてPCに劣る携帯端末を用いるため, 演算・描画における高速性を追求するのではなく, 携帯端末の特性を生かしたアクセスの容易さ, ユビキタス性に重点を置いたシステムを目標とする. 具体的には, Isogeometric解析を対象とし, NURBS基底関数のグラフィカル表示機能, 形状や解析結果の3次元表示機能, 並列処理に対応した解析機能を有するIsogeometric解析学習支援システムを携帯端末上に実装した. 各機能は, 携帯端末の有するユビキタス性を活用するために, 別途サーバーを必要としないスタンドアローン型のアプリケーションとして開発した. ハードウエアの描画・演算性能が使いやすさと直結する3次元表示機能, 解析機能については, 本システムの学習支援システムとしての実用性および, 対応可能な表示・解析規模を明らかにするためにその描画・演算性能を評価した.
著者
松下 真太郎 青木 尊之
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.20180005, 2018-03-27 (Released:2018-03-27)
参考文献数
15

気液二相流の数値シミュレーションは, 未だに数値流体力学的課題の多いテーマである. 近年のコンピュータの著しい性能向上に伴って, 流体方程式と界面追跡の方程式を直接解くことによる解析がなされてきている. しかし, 格子を増やすと新たな水滴や気泡が生じるなど, 解の収束性に至る十分な格子解像度で計算することは非常に困難である. 一般に気液二相流は界面近傍が激しく運動し複雑な挙動を示すため, 界面挙動を精度よく捉えるためには多くの格子が必要である. 界面近傍をより高解像度で効率的に計算するために, 細かい格子が必要となる領域に格子を集めることのできるAdaptive Mesh Refinement (AMR) 法を気液界面に適用することが考えられる. 総格子点数を大幅に削減することができ, 界面近傍をより高解像度で計算することが可能となる. 直交格子上で界面を追跡する手法として, レベルセット法, VOF法が広く用いられてきた. しかし, 激しい流れでは液体よりVOF値は小さいが気体より大きな値を持つ領域が気体中を浮遊する問題などが生じてしまう. 近年, 新たなアプローチとして保存形フェーズフィールド法が提案されており, 本研究では界面捕獲手法として良い結果が報告されている保存形Allen-Cahn方程式を用いる. マルチモーメント法である保存形IDO法を用いて保存形Allen-Cahn方程式を解くことにより, 格子点上に変数を配置しながら気相と液相の質量保存性を担保する. 保存形マルチモーメント法では格子点上の値に加えて線積分値や面積分値といったモーメントが時間積分される変数として定義されている. レベル差補間の際にはコンパクトな領域で精度の高い補間関数を構築可能であり, AMR法に適した手法であると言える. また, 界面が時間とともに動く場合には保存形Allen-Cahn方程式の時間微分項に流束の微分項が加わる. フェーズフィールド変数に対する連続方程式と保存形Allen-Cahn方程式に分離して解くことにより, 連続方程式に対してはCIP-CSLR1法を, 保存形Allen-Cahn方程式には保存形IDO法を用いることができる. 分離した式はいずれも方向分離法で各々の方向に対する1次元の式を繰り返し解くことができ, 連続方程式の解法に精度の高いセミ・ラグランジアン法が適用可能である. AMR法適用に際しても1次元方向のみの補間を考えれば良くAMR法の実装が容易な手法となっている. 本論文では流束項付き保存形Allen-Cahn方程式をマルチモーメント法の解法を高精度で解くために, 木構造に基づいたAMR法により界面の時間的・空間的に追従する動的な適合格子細分化法を導入した. フェーズフィール変数が急激に変化する領域に細かい格子を動的に配置する. ベンチマーク問題としてSingle Vortex問題をレベル0から5までの格子細分化を行って計算し, 最も細かい格子解像度で均一格子を用いた場合と比較して平均で1/12.3に格子点数を削減することができ, 9.26倍に計算を高速化することができた. 界面形状も計算領域全体を均一に細かい格子で計算した場合と同じ精度が出ていることを確認した. マルチモーメント法を用いることによりコンパクトで高精度な補間関数を構築可能であるため, 界面が大変形するような問題に対しても高い精度で計算できる. 本論文の成果は, 気液界面に適合した動的な格子細分化による気液二相流計算に適用可能である.
著者
田中 正幸 益永 孝幸 中川 泰忠
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.20090001, 2009-01-28 (Released:2009-01-28)
参考文献数
16

粒子法により非圧縮性流体を解析するMPS(Moving Particle Semi-implicit)法には空間的に粒子径を変更できないという問題があった.本研究では重み関数を粒子の大きさを考慮して計算し,さらに非圧縮条件を粒子径が異なる場合にも対応できるように変更することで,空間的に粒子径が異なっても安定に解析できるようにMPS法を改良した.また,粒子の分裂と結合を行うことによって動的に空間解像度を調整することを可能にした.その結果,ダム崩壊問題において計算時間を約1/9に削減することができた.
著者
永井 邦憲 入部 綱清 Md Mostafizur Rahman
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200019, 2020

<p>海岸工学の分野では,不規則波を使用して沿岸地域での越波などの問題を解決することは重要である。本研究の目的は,MPS法でシミュレーションした不規則波の精度の検証である。不規則波の解析は,ゼロアップクロス法とスペクトル解析により行われる。計算結果として,高周波または短周期の波の波高が減衰していることが示される。さらに,不規則波の数値計算には多くの波が必要であるため,計算時間とデータ容量の増加の問題が示唆される。</p>
著者
韓 霽珂 西 紳之介 高田 賢治 村松 眞由 大宮 正毅 小川 賢介 生出 佳 小林 卓哉 村田 真伸 森口 周二 寺田 賢二郎
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200005, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
36

近年,亀裂・進展の解析手法の一つとして,phase-field破壊モデルが注目を集めている.phase-field脆性破壊モデルは既に多くの実績が報告されている一方で,延性材料を適切に表現するphase-field破壊モデルは発展途上である.phase-field破壊モデルにおいて,拡散き裂の幅を表す正則化パラメータは破壊開始の制御に用いられ,これが大きいほど破壊開始が早くなる.これは正則化パラメータが大きい場合には,その分だけき裂近似領域も大きくなるため,1に近いphase-fieldパラメータの分布も拡大し,それに応じて荷重--変位関係のピーク値が小さくなることが原因として考えられる.本研究では,正則化パラメータの性質を考慮し,通常は定数として扱われる正則化パラメータの代わりに,蓄積塑性ひずみの大きさに応じて変化する可変正則化パラメータを提案する.これにより,塑性域と正則化パラメータによって規定されるき裂周辺の損傷域が関連づけられ,塑性変形の影響を考慮した損傷の計算が可能となる.提案モデルの表現性能を調査するためにいくつかの解析を行った.可変正則化パラメータの導入により,塑性変形の進行とともにき裂周辺の損傷域が大きくなる傾向が捉えられ,弾性域から塑性域を経てき裂に発展するといった遷移過程に特徴づけられる延性破壊を表現できることを確認した.ベンチマーク問題の解析等の数値解析を通して,き裂の進展方向を適切に予測できること,および可変正則化パラメータを介して延性の制御が可能になることを例示した.また,金属供試体を用いた実験の再現解析では,実験結果と整合する結果が得られることも確認した.
著者
入部 綱清 永井 邦憲 Md Mostafizur Rahman
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200007, 2020

<p>海岸工学分野では段波による波圧を評価することは,海岸構造物の維持管理に重要である。本研究の目的はMPS法における疑似圧縮型のソース項の改良を行い,圧力計算を安定的に行うことである。精度検証として静止した流体の静水圧の計算を行い,理論値と比較し良好な結果を得た。さらに海岸工学分野への応用として,段波の計算を行い,衝撃波圧と重複波圧の関係,重複波圧と護岸全面水位の関係,重複波圧と沖合波高の関係において,実験結果との比較を行い良好な結果を得た。</p>
著者
入部 綱清 永井 邦憲 Md Mostafizur Rahman
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.20200007, 2020-04-30 (Released:2020-04-30)
参考文献数
19

海岸工学分野では段波による波圧を評価することは,海岸構造物の維持管理に重要である。本研究の目的はMPS法における疑似圧縮型のソース項の改良を行い,圧力計算を安定的に行うことである。精度検証として静止した流体の静水圧の計算を行い,理論値と比較し良好な結果を得た。さらに海岸工学分野への応用として,段波の計算を行い,衝撃波圧と重複波圧の関係,重複波圧と護岸全面水位の関係,重複波圧と沖合波高の関係において,実験結果との比較を行い良好な結果を得た。
著者
藤野 清次 藤原 牧 吉田 正浩
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.20050028, 2005 (Released:2005-10-27)
参考文献数
11

The Bi-Conjugate Gradient method or Lanczos algorithm is an important guideline of a generalized CG method. In particular, BiCGStab method is among well known methods for solving a linear system of equations with unsymmetric coefficient matrix. However, the occurrence of breakdown of the methods can cause failure to converge to the solution. In this paper we present algorithm of new product-type BiCG method based on the minimization of an associate residual vector in place of the residual vector. Numerical experiments show safe convergence of the proposed BiCGSafe method as compared with the existing GPBi-CG and BiCGStab methods.
著者
波多野 僚 松原 成志朗 森口 周二 寺田 賢二郎
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.20190015, 2019-11-22 (Released:2019-11-22)
参考文献数
47

本研究は,超弾性複合材料に対するデータ駆動型ミクロ・マクロ連成マルチスケール解析手法を提案する.本提案手法におけるオフライン計算プロセスでは,まず十分な数のマクロ変形勾配を入力として,周期的な代表体積要素(ユニットセル)に対する数値材料試験を実施し,ミクロ応力場のデータベースを作成する.そして,得られたミクロ応力場のデータベースに固有直交分解(POD)を適用することで,データベースの主成分と対応する基底ベクトルを抽出する.さらに,オンライン計算プロセスでFE 2 タイプの連成型マルチスケール解析を実現するために,基底ベクトルを線形結合する際の係数を放射基底関数によって内挿補間し,クロスバリデーションとベイズ最適化を活用したL2正規化によって連続関数を平滑化する.このようにして得られた関数は,ミクロ応力場の「データ駆動型関数」と呼ばれ,均質化法の平均化プロセスによってマクロ応力を算出する際に使用可能である.本提案手法の性能は,代表的な数値計算例に対して,直接的にFE 2 を実施した結果と比較することによって例証する.
著者
車谷 麻緒 安藏 尚 相馬 悠人 岡崎 慎一郎
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.20190007, 2019-05-31 (Released:2019-05-31)
参考文献数
24

本論文では,損傷モデルを用いて,鉄筋コンクリート部材における腐食ひび割れ進展挙動を再現するためのモデル化を示し,2次元問題と3次元問題において,提案手法の妥当性および有効性を検証した.鉄筋の腐食膨張によって,コンクリートが押し出される挙動とひび割れが進展する挙動の両方を再現するために,損傷モデルにおいて,鉄筋の膨張方向の剛性を低下させないモデル化を導入した.2次元問題において,等方性の損傷モデルを適用した解析結果と比較することにより,腐食膨張する方向の剛性を低下させないモデル化の妥当性を検証した.3次元問題における検証例題では,既往の実験結果と同様のひび割れ進展挙動を再現することができ,また四面体要素を用いた詳細な3次元シミュレーションにも適用可能であることを示した.
著者
高瀬 慎介 樫山 和男
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.20090003, 2009-02-02 (Released:2009-02-05)
参考文献数
18

近年,津波,高潮などによる浸水災害が,数多く発生している.これらの浸水災害に対して,時々刻々と変化する浸水範囲を予測することは,防災・災害対策を講じる上で重要である.浸水被害の予測に関する研究は,かつては模型実験が主流であったが,近年では計算機性能および計算技術の進歩により,数値シミュレーションによる方法が一般的となっている.浸水被害の予測に関する数値シミュレーション手法は,数多く提案されているが,移動する水際境界の処理法の違いから,移動メッシュを用いる界面追跡法と固定メッシュを用いる界面捕捉法に大別される.なお,支配方程式としては浅水長波方程式が一般に用いられている.また,空間方向の離散化手法には,当初は直交格子に基づく有限差分法が主に用いられてきたが,近年では,高精度なGISデータ(地形および住宅数値地図)の整備,およびそれらを用いたメッシュ生成手法の進歩等により,複雑な地形や構造物形状を考慮可能な非構造格子に基づく有限要素法や有限体積法が数多く適用されるようになってきている.一方,時間方向の離散化手法には,空間方向の離散化手法のいかんにかかわらず,有限差分法が一般に用いられている.著者らはこれまで,移動する水際境界を精度よく表現できる界面追跡法に着目して,空間方向と時間方向に対して有限要素法を適用するSpace-Time有限要素法に基づく手法の構築研究を行ってきた.そして,界面追跡法の欠点であるロバスト性の欠如については,バックグラウンドメッシュを用いるメッシュ再構築手法の導入により改善を図ってきた.Space-Time有限要素法は,時間方向に差分法を用いる手法に比べて,時間精度が高くかつ安定性に優れる長所がある一方,短所は要素の次元が1つ上がるため,計算負荷が差分法を用いる場合と比べて高いと言われている.しかし,上記のSpace-Time有限要素法の精度と安定性に関する長所短所を裏付ける研究は,Huertaらにより移流拡散方程式に対してはなされているが,浅水長波方程式に関してはこれまで行われていない.そこで,本論文では,著者らが提案した浅水長波流れ解析のためのSpace-Time安定化有限要素解析手法の精度と安定性について,時間方向に差分法を用いた安定化有限要素法との比較により検討を行うものである.なお,Space-Time安定化有限要素法においては,時間および空間の離散化に対して五面体要素に基づく1次要素を用いた.一方,時間方向に差分法を用いた安定化有限要素法においては,空間方向の離散化に三角形要素に基づく1次要素を,時間の離散化には2次精度であるCrank-Nicolson法を用いた.また,浅水長波流れ解析は,時々刻々と水位が変化するためCFL条件も変化する.従って,微小時間増分量を全時間ステップで一定の値を用いることは効率上問題があるといえる.そこで本研究では,流れの現象に応じて,CFL条件に基づいて微小時間増分量を決定する方法の有効性についても検討した.数値解析例として,段波問題,跳水問題,津波の遡上問題を取り上げ,理論解や実験結果との比較を通じて,本手法の計算精度と安定性について検討を行った
著者
馬渡 正道
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.20190003, 2019-03-22 (Released:2019-03-22)
参考文献数
23

高度熟練技能はモノづくり業界において不可欠の技術であるが,一般的に暗黙知であることが多く,その習得には未だに属人的な熟練に委ねる以外に方法がない現状にある.著者らはこの現状を打破するため,高度熟練技能における動的挙動をその成分関数は低次のスプライン関数である多次元連続軌道ベクトルで表現し,その解析を行って暗黙知を形式知化することによって自動化するための端緒を開いている.その成果をさらに発展させて,当該軌道ベクトルに現れた高度熟練技能の特定と特徴づけを行うためには,その成分関数の次数を超えた階数の高階導関数の数値計算法の新たな開発が必須であるが,その過程で10個以上の異なった増分の点におけるテイラー展開から構成される連立方程式を解くことが必要である.この連立方程式の係数行列は,非対称,密であり,かつ重度の悪条件である.したがって,LU分解法など通常の解法ではとても解けないので,係数行列の奇偶分解法という新しい解法を提案する.そして,この解法で,少なくとも20階までの導関数に対する高精度な近似値が計算可能であることを確認する.
著者
荻野 正雄 長谷川 颯
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.20190002, 2019-03-08 (Released:2019-03-08)
参考文献数
26

SPH法やMPS法などの粒子法は自由表面を含む流れ解析に広く用いられている.本研究は,粒子法における粒子初期配置に着目したものである.粒子初期配置としては正方格子状のものが一般的に用いられているが,壁境界などにおける曲面や斜面を十分に表現することができない.それにより,計算精度の低下を招く可能性がある.そこで著者らは重心ボロノイ分割に基づく粒子初期配置の決定方法を提案する.重心ボロノイ分割はボロノイ分割の特別なケースであり,母点とボロノイセル重心が一致するものである.2次元平面で重心ボロノイ分割を用いた場合,ボロノイセルは正六角形に漸近することが知られている.本研究では,重心ボロノイ分割に基づく粒子配置アルゴリズムを開発し,数値実験によって有効性を評価する.
著者
河合 浩志 遊佐 泰紀 岡田 裕 塩谷 隆二 山田 知典 吉村 忍
出版者
一般社団法人 日本計算工学会
雑誌
日本計算工学会論文集 (ISSN:13478826)
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.20180012, 2018-08-29 (Released:2018-08-29)
参考文献数
27

本報告では、ハイパフォーマンス・デザインパターンについて紹介する。これはHPC環境のためのデザインパターンであり、主に比較的サイズの小さな抽象データ型をC,C++,Fortranなどのライブラリとして実装するためのものである。ここでは抽象データ型の一つ一つのデータがそれぞれ複数のスカラー変数の組として表現され、また関連する手続き群については関数やサブルーチンではなく、プリプロセッサマクロとして実装される。例として、連続体力学での利用を想定しベクトル、テンソルや小規模行列演算を対象とするAutoMTライブラリをとりあげ、本手法に基づき性能最適化を行い、またそのベンチマーク結果を示す。