- 著者
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山本 美紀
- 出版者
- 創価大学日本語日本文学会
- 雑誌
- 日本語日本文学 (ISSN:09171762)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.17-30, 2012-03
鎌倉時代初期、藤原定家によって創られた『物語二百番歌合』は、『源氏物語』と『狭衣物語』の物語の歌を番えた前半部の『百番歌合』と、『源氏物語』と『夜の寝覚』などの十篇の物語の歌を番えた後半部の『後百番歌合』からなる。各歌合は百番二百首からなり、それぞれに詞書と作者名が添えられている。古くよりこの歌合は、散逸物語の本文調査や、定家所持の『源氏物語』の本文を探る対象として取り扱われてきた。しかし、『物語二百番歌合』はひとつの作品であり、そこには創作者 藤原定家の意識が織りこまれている。『物語二百番歌合』の各番の詞書は、歌の背景がわかるよう物語の一部を表出しており、そのようにして物語の歌を番えるという手法をとって歌と物語、また歌と物語の関係を表している。そこで、本論文では『物語二百番歌合』の前半部である『百番歌合』の三つの番に着目し、歌と物語の視点から定家の制作意図の一部を探る、新たな試みである。