著者
山本 奈生
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.62, pp.75-91, 2016-03

本稿は2015年の「安全保障関連法案」に対する市民的不服従の社会運動,とりわけ学生を主体としたSEALDsについて論ずるものである。本稿ではまず第一にSEALDsが組織性や中心点をもたない緩やかな「立憲主義」への呼びかけである点を描写し,第二に当該運動の表面的な訴えのフレーミングおよび参与者らによる複数の言説について論述する。その上で,SEALDsに対して投げかけられた運動体内外からの批判を詳説し,社会運動とナショナリズムの問題やポスト植民地主義的観点からの批判について検討する。そして,参加者諸個人の水準においては,既にそのような批判が内在的に検討されているのにもかかわらず,ムーヴメントの表面的な言説水準においてはナショナリズム論やポスト植民地主義論の観点からみると素朴に映ずる主張が採用されている問題を中心に考察する。安全保障関連法案集団的自衛権新しい社会運動SEALDs
著者
藤井 透
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.61, pp.35-55, 2015-09

本稿は,19 世紀後半のイギリスの経済学者であるアーノルド・トインビー(1852-1883)に関する,従来の諸外国の研究をサーベーして,次のようなことを論じた。トインビーに関する研究は,その死から両大戦間期まで,第二次大戦後から1970 年代まで,1980 年代,そして,その後から現代までと,おおまかに四つの時期に分けることができる。そして,本稿は,それぞれの時期を,トインビー「神話」の誕生,「神話」から研究へ,研究の深化と発展,あたらしい「神話」か?と特徴づけた。結論として,トインビーに関するもっとも豊かな研究成果が現れたのが1980 年代で,それを部分的に受け入れて,トインビー個人ではなく,かれの『産業革命』を現代イギリス研究にとって重要なテキストであるとみなしているのが,今日の研究の特徴だとした。アーノルド・トインビー歴史学派経済学産業革命オックスフォード大学
著者
村瀬 敬子
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.71, pp.47-66, 2020-09

本稿の目的は1950年代後半から60年代前半を代表する料理研究家であった江上トミを文化仲介者と位置づけ,家庭料理とジェンダーの結びつきという観点からその表象を分析した。特に階層文化のあり方に注目し,主婦自らが料理を作るべきだとする規範(「手づくり規範」と呼ぶ)の強さの背景にどのような理由があるのかを考察した。江上トミ(1899-1980)は初期のテレビの料理番組に出演し,多くの料理にかかわる本にかかわり,料理学校の経営も行っていた料理研究家である。その特徴あるアピアランス(外見やキャラクター)や良妻賢母と料理を結びつけた言説によって,「理想の母」というイメージを持ちながら,幅広い活動によって有名性を獲得していた。「理想の母」としての江上トミのイメージは二つの「知」によって支えられている。ひとつは料理研究家としての正統性を象徴する〈高級文化〉としての「世界の料理」であり,もうひとつは地方名家の母から娘への「伝承」である。江上トミにおける両者の結合は,「世界の料理」を女性が「手づくり」することが「階層の表現」ともなる文化を生み出した。こうしたことから,本稿では,家庭料理の「手づくり規範」の背後には「手づくり」を「愛情の表現」とするだけでなく,「階層の表現」ともする二重の意味づけがあることを指摘し,この二重性によって,主婦自らが料理を作ることに強い規範性があるのではないかと考察した。料理研究家江上トミ文化仲介者手づくり規範階層
著者
河内 良彰
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.72, pp.21-40, 2021-03

本研究は,コロナ禍における大学生の旅行意欲と観光行動を把握するために,佛教大学の学生を対象にアンケート調査を実施し,コロナ下の感染対策と観光復興に寄与することを目的とした。分析の結果,以下8点が明らかとなった。第1に,回答者の過半数は旅行意欲がなく,その理由として「感染する可能性があるから」が最多を占めた。第2に,旅行意欲が高まる要素は,「ワクチンが開発されたら」が最も多かった。第3に,関心のある観光要素は,「自然・景勝」が第1位をとった。第4に,なるべく避けたい交通手段は「長距離バス」,感染予防のために重視する要素は「マスク」が,それぞれ第1位に立った。第5に,「Go To トラベル」キャンペーンで行きたい観光地は,「北海道」が第1位,「沖縄」が第2位,「福岡」が第3位となった。第6に,「マイクロツーリズム」との関連で,京都観光で行ってみたい観光地は,「嵐山」が第1位,「清水寺」が第2位,「天橋立」が第3位となった。第7に,タイプ別観光への関心について「ある」とした回答は,「マイクロツーリズム」が30%となり,海外旅行(41%)をも下回った。最後に,女性のほうが国内旅行(日帰り)やマイクロツーリズムへの関心が高く,学年別で見ると,4年は国内旅行(日帰り),国内旅行(宿泊),マイクロツーリズムへの関心のいずれも比較的高くなった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)旅行意欲観光行動Go To トラベルマイクロツーリズム
著者
瀧本 佳史 青木 康容
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.64, pp.93-116, 2017-03

本稿は沖縄県北部の国頭郡に所在する米軍基地,キャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブ,興味深いことにこの2つの基地は半ば地元による誘致結果として生まれた稀有のケースであるが,その周辺市町村による用地提供の代償として受け取る「軍用地料」に関して論じるものである。それは地域を構成する旧字住民が入会山として日常生活において利用してきた土地でありながら,その地代としての軍用地料が市町村と各行政区との間でどのように配分されるのか,それは地域によってどのような違いがあるのか,などについて市町村が提供した資料等に基づいて明らかにし,結果としてその地代としての巨額の軍用地料が配分される地域とされない地域との間をいかに分断するものであるかについて論及する。それと共に同じように軍用地に土地を奪われた中部地区の市町村との根本的な相違にも言及する。(尚,本稿における多数の表は行文上重要なものであるが,編集者によって小さくされている。)軍用地料金武町宜野座村恩納村辺野古杣山