- 著者
-
村瀬 敬子
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2, pp.297-313, 2020 (Released:2021-09-30)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
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本稿は,戦後の『主婦の友』を主な資料として,郷土料理/郷土食の「伝統」が強調されていき,「主婦」をその伝承者とする語りが,どのように構築されていったかを明らかにした.本稿では「伝統」を,昔から続いているとする「継続性」に加え,良いものとして価値づける「美化性」のまなざしによって構成されるとし,1979 年までの「郷土料理/郷土食にかかわる記事」において,これらの語りの分析を行った.
本稿の考察結果は次のようになる.(1)1960 年代半ばまで,従来の郷土料理/郷土食を改良したり,新しく生み出すことが推奨されている記事が登場しており,郷土料理/郷土食の「伝統」は強調されていなかった.(2)著名人の郷土料理/郷土食に関するエッセイが,1950 年代半ばから数多く掲載され,その多くで自らの故郷の郷土料理/郷土食が賛美されていた(美化性).(3)1960 年代半ば以降,「おふくろの味」が賞揚され,「おふくろの味」と郷土料理/郷土食は,長い間,伝承されてきたものだとされ(継続性),女性による伝承が規範化していった.(4)このことは「主婦」に新たな役割を与え,揺らぎはじめたジェンダー秩序の維持に寄与した.