著者
和田 応樹 ワダ マサキ Wada Masaki
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.635-690, 2011-03-20

研究ノート(Note)20世紀初頭に、イギリス軍最大の植民地インドにおいて、インド軍総司令官キッチナーにより大規模な軍制改革が行われた。彼はエジプト、スーダンや南アフリカなどの海外植民地で豊富な経験を積み、広い視野を持った歴戦の軍人であった。改革により、参謀制度などの新しいシステムが導入され、インド軍は近代的な軍隊へと変化した。その過程では、インド総督ミントーも重要な役割を果たし、改革は本国政府とインド政庁間のインド支配と密接に関わるものであり、そこからは帝国主義期イギリスの実相を垣間見ることができる。Lord Kitchener was one of the most famous national heroes during British Empire's era of imperialism. Kitchener's long experience of being "colonial officer" abroad gave him a much wider frame of reference. As an administrator, soldier, or reformer, in Egypt, Sudan, and South Africa, he approached his tasks in a unique fashion. After the Bore war, in particular, as the Commander-in-Chief in India, he proposed to reorganize the Army in India in order to answer the larger needs of the Empire. Moreover, he improved the Indian staff system to increase the efficiency of the army. The then Viceroy of India, Lord Minto, supported Kitchener's reforms. As a result of Kitchener–Minto Reform, the Indian army became a more efficient unit in the British Army, serving the Empire to the extent that it did during the Great War.
著者
伊多波 良雄 イタバ ヨシオ Itaba Yoshio
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.679-695, 2013-03-20

論説(Article)法人事業税に関して、2004年度から外形標準課税が導入されている。法人事業税が地方税として位置づけられている根拠は、行政サービスからの利益を企業活動を受けているという点に求められる。したがって、法人事業税の負担配分としては受益に応じて負担するという応益原則を採用するのが適当である。しかし、企業が受けている受益を何で測定するのかというのが大きな問題である。本稿では、社会資本ストックの便益を求め、応益税としての法人事業税の検証を試みる。その結果、応益税として法人事業税を見た場合、外形基準として付加価値を用いるのが望ましいことが明らかにされた。The basis by which the corporate enterprise tax is positioned as a local tax is often questioned, given that corporate enterprises receive benefits from administrative services. There is much debate as to what should be used as a proxy variable for the benefits from administrative services. This study finds that value added can readily serve as a proxy variable for the benefits from administrative services.
著者
北坂 真一 菅原 千織
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.357-384, 2011-12

研究ノート(Note)高等教育機関の効率性を定義し計測した上で、その改善を目指す研究が世界的に注目されている。教育における効率性の計測は重要なテーマであるにもかかわらず、高度な計量分析の手法が大学のような高等教育機関に応用されるようになったのは比較的最近のことであり、その研究の蓄積は多くない。本稿では確率的フロンティアモデルにより経済的効率性を分析するための計量分析の手法を概観し、あわせてそうした手法を大学の効率性の分析に用いた欧米の研究を簡潔に展望する。Higher education institutions worldwide are increasingly becoming the subject of analyses aimed at defining, measuring, and improving efficiency. However, despite the importance of efficiency measurement in higher education, it is only relatively recently that more advanced econometric measurement techniques have been applied to higher education institutions such as universities. We survey the underlying models and econometric techniques that have been used in studying economic efficiency in the stochastic frontier framework and present a brief review of the literature on stochastic frontier models for the efficiency analysis of universities.
著者
鹿野 嘉昭
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.509-529, 2007-03

本稿は、バブル期から金融システム不安期において銀行経営に対する資本市場の経営チェック機能が働いていたか否かという問題について実証的に検証することを目的とする。そして、銀行全体としてみた場合、資本市場からは銀行経営者に対する警鐘が期待されたほどには鳴らなかったという結果が得られた。その背景としては、第1には株式の相互持合い、4社体制と称される1990年代半ばまでの株式市場を支配した日本に独特の市場論理、第2には株価裁定手段の欠如が挙げられる。このほか、銀行経営に固有の要因として護送船団方式と称される手厚い銀行保護行政を背景として醸成された銀行不倒神話が投資家におけるモラルハザードを発生させ、それが資本市場の経営チェック機能を減殺したことが指摘できる。
著者
中尾 武雄
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.469-496, 2007-03

本稿では、日本企業268社のデータを用いてストックオプションの効果を分析した。被説明変数は企業価値の変化率と企業価値変化をボラティリティに企業価値を乗じたもので割った値である。主要な説明変数はストックオプション規模、ボラティリティ、企業規模である。回帰分析によって推定した結果、ストックオプションを始めて導入した企業では、ストックオプションは企業価値を高める効果を持つことが明らかになった。
著者
鹿野 嘉昭
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-41, 2006-06

本論文は、ベンチャー企業育成のための環境整備のあり方について、主として金融面から日米比較の視点を織り交ぜつつ検討するとともに改善の方向を具体的に示すことを目的とする。アメリカの場合、上場を目指すベンチャー企業に対しては、その発展段階に応じて資本市場調達の途が開かれている。実際、エンジェル、ベンチャーキャピタルなどがベンチャー企業の資金調達を支えており、成功した暁にはリスク負担に相応した報酬を得る。ベンチャーキャピタルの原資は年金基金や金融機関に運用委託された個人マネーであり、そういった機関投資家の資産運用行動がベンチャー企業による果敢な投資行動を支えるとともに監視・規律づけているのである。個人によるリスク負担はまた、総合課税を原則とするアメリカに独特な投資家にやさしい税制により支えられている。 それゆえ、日本においてベンチャー市場、資本市場の活性化を促すに際しては、ベンチャー企業経営者を監視・規律づけるメカニズムを強化すると同時に、税制についても投資家にやさしいものへと改変することが強く求められる。そのためにも、東証マザーズ等の新興株式市場についてはマーケットメーカー制の導入を義務づけることにより、新興市場の担い手である証券会社の引き受け・売買行動を監視・規律づけるメカニズムを強化する、という措置の実施を提案したい。それはまた、日本の金融が長年にわたって銀行を中心として構成・運営され、資本市場の健全な育成・発展が政策目標の視野に入っていなかったことを意味している。そうした事態を改善すると同時に日本版ビッグバンが究極の目標としていた奥行きの深い資本市場を日本のなかに作り上げるためにも、政府においてはベンチャー市場の全体像をも見据えて金融制度の改革に取り組む必要があるといえよう。In this paper, policy measures for promoting venture business activities in Japan are discussed from a comparative perspective with the U.S. In the U.S., activities of venture businesses after the IPO are closely monitored by their market makers, in addition to venture capitalists whose investment activity is positively supported by investor-friendly tax rule. Taking these institutional aspects into account, we propose that equity market in Japan for venture businesses like TSE Mothers should be organized into one led by market makers modeled after NASDAQ and that the tax rule should be modified to be friendly with investors for ventures.
著者
田原 昭四
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.29-53, 2006-03

5大工業国を中心にして、歴史的観点から景気循環の周期性を検証した。また、物価変動の面から、戦前のデフレ不況と戦後のインフレ不況の相違を考察した。さらに、世界三大不況である欧米大不況、世界大恐慌、平成大不況を取り上げ、それぞれの特徴と形態を分析した。そして、大不況はいずれも複数個の景気後退から構成されており、原因は大規模なバブルの発生と崩壊であり、かつこの現象は数十年間隔で発生していることなどを解明した。This paper examines the following phases of three great depressions in the world on business cycle history: the periodicity of business cycle seen from a historical point of view and differences in price variation between the prewar deflationary depression and the postwar inflationary depression. In addition, the forms and characteristics of three world major depressions―depression in Europe and America, the Great Depression, and the Heisei depression―are analyzed with a comment that a great depression consists of the plural number of regression and is caused by the outbreak and breakdown of bubble economy, an occurrence which has been seen at intervals of several decades.
著者
宮本 勝浩
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.240-255, 1995-03
著者
新関 三希代
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.373-401, 2006-12

本論は、日経225株価指数、及び追加型株式投資信託の日次データを用いて、価格収益率とボラティリティの関係について実証分析を行っている。危険資産のリターンが負の場合は、正の場合に比べてそのリスクが大きいという負の因果性が見られるか否か、ノンパラメトリックな回帰分析を用いて実証するとともに、その理論的分析をプロスペクト理論を用いて行っている。結果、日本の株式インッデクス、及びインデックス連動型の投資信託にはこの負の因果性が見られ、プロスペクト理論における価値関数がその投資家行動を説明しうることを示した。しかし、分配回数の多い人気投資信託や収益性を重視した投資信託には両者の明確な因果性が見られず、特に、前者はリターンの大きさに関係なく、低いリスク水準を一定に保っていることがわかった。これは、分配型投資信託が人気商品になっている要因の一つであると考えられる。
著者
小林 龍馬
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.157-191, 1987