著者
近藤 邦成 鈴木 益太郎 緒方 忠 宮本 静枝
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.295-299, 1971-08-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
5

「洗たくに関する実態調査結果」から, 洗たくに風呂の残り湯を利用している家庭はかなり多いことが知られている.しかし, 風呂の残り湯を使用した場合, 残り湯の汚垢が再汚染することも考えられるので, 消費科学的見地から本実験を行った.成年男子5人を入浴させた風呂の残り湯を用い, 同温度の水道水を対照として, 綿, アセテート, ナイロン, ポリエステル, アクリル, ビニロン, ポリプロピレンの7種類の白布について繰返し10回洗たくを行い, 再汚染の程度を調べた.その結果, 残り湯中の汚垢は, いずれの繊維にも白度低下が認められるほど再汚染しなかった.また, 着用汚垢の存在する系においても, 着用汚垢による風呂の残り湯, 水道水間に仕上り白度の差は認められなかった.更に衛生学的指標としての大腸菌群測定においては, 風呂の残り湯中にはかなり認められたが, 洗たく乾燥試布には大腸菌群は認められなかった.
著者
安田 武 山階 克子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.278-287, 1968-07-15 (Released:2010-09-30)

消費財の耐用年数については, 主として営業用の減価償却の都合上, 国税局によって規定されたものがある.また, 銀行や火災保険会社などでその業務の都合上調査した資料があるが, これらに繊維製品は数点しか含まれておらず, それ以外に公表されたものはほとんど見当らない.特に戦後の消費ムードによって国民の消費財の耐用に関する考え方が変化しつつあるので, 最近の繊維製品の耐用年数についてその実態を明らかにすることは非常に重要であると思われる.著者らは, 本学学生およびその家族を対象に, 調査人員623名について, 家庭で実用する131品種の繊維製品の平均耐用年数, 実際に使用する日数, 使わなくなる理由を調査した.繊維製品の耐用年数は, 短かいものでストッキングの2~3週間から長いものでは蚊帳の12.6年に到るまで, はなはだ広範囲にわたっている.消費ムードによって全体的にこれらの耐用年数が短かくなる傾向はあるとしても, このような品種別の大きい開きは無視できないと考えられる.消費科学の研究課題として, 強さ, 変色など種々の特性がとりあげられているが, 耐用年数に着目して繊維製品の消費特性を考えてみると, 品種によって強さの要求されるもの, あるいは変色しないことを要求されるものなど非常に特徴的な傾向がみられる.さらに, 科学的特性がいかにそなわっていても, 型の陳腐化によって耐用年数の決定される品種もはなはだ多い.
著者
藤本 純子 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.366-373, 2015

<p>歴史的に重要な衣服の効率的な複製制作をテーマとし,多量のいせこみを施したケープカラー部分のシルエットと,いせこみ分量および布の力学的特性との関係を検討した.シルエットは,三次元計測装置により採取し,体積<i>V</i>を特徴量として解析した.<br>その結果,いせこみ分量が多いほど,布の種類により<i>V</i>が大きく異なることがわかった.また,<i>V</i>の要因を検討したところ,布のみかけ密度の影響が大きいこと,測定長が長くなるほど,せん断特性および曲げ特性との相関が大きくなることがわかった.そこで,オリジナルドレスを効率よく複製するために,<i>V</i>を目的変数とし,みかけ密度,せん断剛性に加え,測定長およびいせこみ率を説明変数として,重回帰分析を行った.導出された重回帰式から,オリジナルドレスと同様のシルエットを創出するために必要ないせこみ率を精度よく推測し得ることがわかった.</p>
著者
神山 進
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.35-41, 1983-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

本研究は, 2つの目的を持っている.1つは, 被服関心の基本的次元を検証することによって, 被服関心として言及される被服行動の領域を明確化すること (ギュレルの研究に関する追試) であり, もう1つは, 我が国において使用可能な, 簡略版「被服関心度質問表」を試作することである.得られた結果は, 次のとおりである.(1) 被服関心に関して, I個性を高める, II心理的安定感を高める, III似合いの良さを探究する, IV同調を計る, V快適さを求める, VI理論づけを計る, W慎みを求める, VIII対人的外観を整える, の8つの被服関心次元を検証することができた.(2) 48個の質問項目から, 上記8次元別に被服関心度を測定しうる, 簡略版「被服関心度質問表」を試作することができた.
著者
市川(向川) 祥子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.441-451, 2010

<p>被服を中心としたおしゃれへの関心がきょうだい数・きょうだい構成・出生順位によってどのような影響を受けるのかを検討した.調査対象者は小中学生1062名であり,本研究では.小学生,中学生,それぞれにおいて分析を行った.様々な質問項目においてきょうだいの影響が確認された.特にひとりっ子においておしゃれに関する情報や流行への関心が高かった.全体として,ひとりっ子と女一女きょうだいにおいて,関心が高い傾向にあり,男きょうだいがいる場合の関心度が低くなる傾向にあった.更に,女子の場合,流行への関心では小中ともに性別の効果が見られたが,小学生では性別の効果が,中学生では出生順位の効果が多くみられ,女子次子の方が女子長子に比べ積極的に行動する傾向が明らかになった.長子の場合も次子の場合も,女一女きょうだいの場合が全体として関心が高い傾向にあり,男一男きょうだいの場合との差が顕著であった.</p>
著者
神山 進 枡田 庸
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.104-113, 1992

容姿メッセージ評定尺度を用いて, 基本的な服装色が伝える情報内容を測定することが本研究の目的であった.得られた結果は, 次のようなものであった.すなわち, (1) 赤, 榿, 黄, 黄緑, 緑, 青緑, 青, 紫青, 紫, 赤紫, 黒, 白の12の服装色別に, 異なったメッセージが伝達される事態を確認でき, またそれらを測定することができた. (2) 赤, 榿, 黄, 紫青, 黒, 白の各色彩メッセージは, その他の色彩メッセージよりもいっそう明瞭であった.また暖色は寒色よりも, メッセージが一層明瞭であった. (3) 因子分析法により, 各色彩別に4つないしは5つの色彩メッセージ因子が抽出された.例えば赤色の場合には, 「性的魅力」, 「気品」, 「派手さ」, 「世間ずれ」, 「活発さ」と命名された5因子が, 黒色の場合には, 「性的魅力」, 「格式性」, 「気分」, 「反社会性」, 「仕事」と命名された5因子が抽出された. (4) 具体的な衣服のかたちで色彩が提示された本研究の場合を, それが単なる方形や円形で提示された従来の研究と比較した場合, 両色彩メッセージの間には一定の相違が認められた. (5) 服装色メッセージには, 多くの色に共通して, 「性的魅力」, 「気品」, 「お酒落」に関した情報が顕著であった.特に赤色, 黒色, 紫色の服装のいずれもが, 「性的魅力」を伝達すると考えられていた. (6) 服装色の白と黒は, 「女らしさ・顔立ちのよさ・知的さ」を伝達すると考えられていた. (7) 服装色の黄と紫は, 「派手さ・目立ちたがり屋・刺激の追求・挑発」といった意味を伝達した. (8) 服装色の青は, 「堅い仕事への従事・礼儀の尊重」を伝達した. (9) 服装色の緑, 紫, 黒は, 「反社会性」, すなわち社会的に不適応な人柄を伝達した.
著者
上野 清一郎 東条 順子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.18, no.12, pp.547-551, 1977

人間の視覚イメージに合うような被服図形を創り出すため, 既成の被服の概念からはなれ, 乱数を用いて直折線のつながりから図形を求めた.そしてこの中から視覚イメージによって被服図形と認知できるものをえらび, 同一イメージに属する図形のグループ化を試みた.<BR>因子分析法を用いて解析した結果, 一部の図形に関しては, 図形作成のための要因・水凖とイメージとの対応, すなわち直折線の乱数系列において, どの要因・水準を組ませればどのようなイメージ群にまとまるかということがわかったが, 大部分の図形では必ずしも明らかな対応は得られなかった.しかし要因・水準の組合せ, ならびにイメージ用語の選定如何によっては, 乱数を用いて視覚イメージに合う被服図形を創り出せるという手がかりは得られた.