著者
北村 智紀 中嶋 邦夫 赤井 研樹 青木 恵子
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.139-140, 2011 (Released:2012-03-29)

高齢者が投資決定に際して他の者と相談することで投資詐欺を防ぐことが可能か実験で検証した.実験では高齢者を被験者とし,意思決定前に相談するグループと相談しないグループを設定し,現状の市場環境では存在し得ない元本保証で高利回りという詐欺的な特徴を持つ金融商品と通常の株式投信への仮想的な投資配分を決定してもらった.実験の結果,当初の選択では相談したグループの方が詐欺的商品への配分比率が高くなり,相談の効果が認められなかった.しかし,異なる商品に対する続く選択では相談したグループの方が詐欺的商品への配分比率が減少した.さらに,過去に預けた預金金利が高い者ほど相談に効果があった.家族等と単に相談するだけでは投資詐欺被害を防ぐ効果は低いと考えられるが,より現実的な投資詐欺の手口を示すことや,過去と現在の預金金利を比較するなどの具体的な相談内容を示すことで高齢者の投資詐欺被害を減らせる可能性がある.
著者
松葉 敬文 佐藤 淳 蔵 研也 青木 貴子 村上 弘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.194-198, 2010 (Released:2011-06-27)
参考文献数
17

女子短大の学生を被験者に3週間にわたり,テストステロンの濃度と,リスク選好指標,時間選好などを計測した.リスク選好指標は,選択課題(choice task)と適合課題(matching task)の2種類を用いた.また被験者のT濃度を,グルコース投与によって一時的に低下させて,コントロール群との違いを見た.結果,Tの絶対濃度とリスク選好には選択課題,適合課題ともにはっきりとした関係がなかった.また,30分間隔でのT濃度の変化と,リスク選好の指標である 選択課題の間には有意な正相関があるが,選択課題とでは有意性は示されなかった.T濃度の変化は,確率過程の不明な不確実性(uncertainty)状況では影響を与えるが,確率過程が既知のリスク(risk)状況下では弱い,あるいは与えないことが示唆された.またTは時間選好には影響を与えない.