著者
星野 崇宏 竹内 真登
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-61, 2019-02-25 (Released:2019-02-25)
参考文献数
69

行動経済学とマーケティング研究双方に関係が深い二重過程理論と文脈効果についてレビューを行うとともに,実際のスーパーマーケットでの購買履歴データから魅力効果の存在を示す著者らの解析例を示す.
著者
八木 匡 瓜生原 葉子
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.26-36, 2019-02-06 (Released:2019-01-31)
参考文献数
67

社会にとって望ましい行動を人々が常に行うわけではない.しかしながら,個人の選択と行動を社会的観点から変化させることは,個人の主体的意思決定を尊重するという立場からは,多くの人々が妥当性を認める問題に対して適用されるべきであり,その方法についても慎重な配慮がなされる必要がある.本章では,医療および健康行動における行動変容について議論を整理し,行動変容の基礎理論,社会的行動変容の神経科学的根拠を紹介する.最後に、臓器提供意思表示の事例を用いて,行動変容を可能にする戦略デザインについて議論を行う.
著者
高橋 泰城
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.69-71, 2008 (Released:2011-12-03)
参考文献数
21

神経科学と経済学との境界分野は,Neuroeconomics(神経経済学)と名づけられ,近年活発な研究がなされている.本発表では,時間割引および不確実性下の意思決定に関して,経済学における規範的意思決定からの乖離に関する神経経済学的研究(神経ホルモンや中毒財との関連),および行動経済学·進化生物学との関連を紹介する.
著者
三浦 貴弘 犬飼 佳吾 Pacharasut S. San S. Thanee C. 佐々木 勝
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.106-109, 2017 (Released:2017-06-01)
参考文献数
5

本研究では,アンケートを用いたリスク選好の測定の代替案の1つとして,実験室におけるサーチ実験を行い,観測された被験者のサーチ行動からリスクに対する選好の程度を測定した.その結果を用いて,性別間でリスク回避度に違いがみられるのかを日本,タイの被験者を用いて比較分析を行った.本研究から得られた結果として,日本では男女間でリスク選好に違いは見られなかったが,その一方でタイではリスク選好は女性のほうが統計的に有意にリスク愛好的であることが明らかになった.また,アンケートの結果から測定したリスク選好は日本,タイどちらの国でも有意な違いはみられなかった.この結果から,求職行動に関連するリスク選好の男女差は文化によって異なることが示唆される.
著者
髙橋 茉優
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.16-25, 2021-08-19 (Released:2021-08-19)
参考文献数
25

本稿の目的は,様々な大きさの経済格差状況で好まれる再分配の特徴を明らかにすることである.匿名3者に対する2つの再分配施策(「全員に対して確実に小さな金額を再分配する一律配分」,「必ずしも全員に対して確実ではないが,大きな金額を再分配する傾斜配分」)から参加者がどちらを選択したか分析した.すると,初めの経済格差の程度は選択に有意な影響を与えなかった.また,参加者は傾斜配分の再分配される確率が大きく,一人あたりの再分配額が大きく,対象人数が小さくなるほど,傾斜配分を選択した.
著者
小幡 績 太宰 北斗
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.216-219, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
6

競馬市場において,「本命–大穴バイアス」という有名な現象がある.これは的中確率の低い大穴馬への過剰な人気を指すもので,微小確率の過大評価傾向としてプロスペクト理論から説明できる.本論文では網羅的なデータを用いて,これまでの研究よりも直接的に大穴バイアスを検証した.また,微小確率に対する経済主体の実際の行動を捉えた大規模なデータである点から,競馬を対象とした研究に限らず,意義があると考えられる.
著者
三輪 宏太郎 植田 一博
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.114-118, 2010 (Released:2011-04-26)
参考文献数
7

個別銘柄レベルにおいて,出来高の上昇は株式リターンの持続を予測すると言われている.この出来高と株価変動の持続性(株価モメンタム)の関係は,株価の新規情報の折り込みの遅れが要因とされてきた.本研究では,この関係が投資家の株価トレンド追随行為によっても引き起こされる可能性が高いことを実データ検証,モデルシミュレーションの両面から示す.
著者
竹村 和久 村上 始
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-50, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
41
被引用文献数
1

本稿では,心理学と行動経済学との歴史的経緯について述べ,次に,両者が関連する現象として,プロスペクト理論にも仮定されている確率荷重関数を心理学的に解釈する研究の試みを例示して,心理学と行動経済学が密接に関係していることを説明する.
著者
佐伯 政男 前野 隆司
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.146-152, 2010 (Released:2011-04-26)
参考文献数
17

幸福度を継続的に自己管理するための手法として,カレンダー·マーキング法を開発した.カレンダー·マーキング法は,一日の終わりにその一日を振り返り,主観的な評定を行う手法である.すなわち,評定の結果,その日がよい日であったら「◯」,悪い日であったら「×」,どちらでもない日であったら「△」をカレンダーの日付欄に記録する.心理学部の学部生を対象に,10週間,手法の実施を行った.実施後に測定したThe Satisfaction with life Scale (SWLS)では,手法の実施群と対照群のSWLSに統計的に有意差は見られなかった.SWLSと各被験者の各記号の総数との相関係数は,◯,△,×,それぞれ,0.506,-0.439,-0.237であった.分析の結果,よい日にも悪い日にも△を付ける傾向が見られた.◯を増やし△と×を減らすことによって幸福度を向上させうることが示唆された.また,被験者間,被験者内で各記号の報告には変動性が見られたことから,本手法で得られた結果は,主観的幸福度の測定手法として利用されうることを示した.
著者
黒川 博文 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.176-179, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
10

本稿では『国民生活選好度調査』を用いて,幸福度,満足度,ストレス度の年齢効果について分析した.横断データでは年齢効果と世代効果を識別できないため,年齢効果の形状が世代効果の影響を受けている可能性がある.実際,世代効果と年効果を無視すると,幸福度と満足度の年齢効果はU字型を示し,ストレス度の年齢効果は右下がりを示した.しかし,世代効果と年効果を考慮すると,幸福度の年齢効果は右下がりとなるが,満足度の年齢効果はU字型のままであった.ただし,古い世代の方が幸福度と満足度は高い.世代効果を考慮しても年齢効果がU字型であることを示した欧米の研究と同じ結果であるのは満足度であり,幸福度については異なる結果である.また,ストレス度の年齢効果は右上がりとなり,古い世代ほどストレス度が低いことがわかった.
著者
茂木 啓司 野澤 知世 鈴木 巧 中村 年希
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-15, 2020 (Released:2019-12-02)
参考文献数
17

本論の目的は,奨学金が過剰に受給される原因を明らかにするとともに,それを解消するための施策について検討することである.高校生と大学生を対象に,奨学金の借入が必要な状況を想定した仮想的質問を含む質問紙調査を行ったところ,奨学金を借りる選択をした被験者のうち約42%は将来の破産リスクを過小に評価していた.さらに,奨学金申請フォーマットについて,毎年の借入金額を選択するもの,および選択肢を部分的に記入式にしたものの方が,実際の申請フォーマットよりも被験者の借入金額が有意に小さくなった.以上より,奨学金の過剰受給を解消するため,利用者に対して「延滞のリスクを強調すること」および「申請書類のフォーマットを変更すること」が有効であるといえる.
著者
中上 晨介
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.115-158, 2019 (Released:2019-06-11)
参考文献数
5

本稿では,不平等回避モデルを拡張し,ネットワーク上のcontribution gameにおけるプレイヤーの利得関数に不満と罪悪感のパラメータを用いて新たなモデルを構築し,ナッシュ均衡とabsorbing setを導出した.ネットワーク上でcontribution gameを行った研究では,プレイヤーは隣り合う2人のプレイヤーとつながりを持つサークルの形をした社会的ネットワーク上で公共財への拠出にContributionするかDefectするかの戦略の決定を行う.また,プレイヤーの利得関数はつながりを持つ周囲のプレイヤーの戦略に基づいて決まる.本稿では,不満と罪悪感のパラメータの範囲によっては,多くの人が貢献する状態もナッシュ均衡,absorbing setとして実現することを示した.結果の解釈としては,ある条件下で,人々が持つ罪悪感が不満よりも大きいとき,多くの人がネットワーク上のcontribution gameにおいて協力的行動をとるということである.
著者
阿部 誠 守口 剛 八島 明朗
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-12, 2015 (Released:2015-07-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1

行動経済学では,時間軸における選好の逆転現象を割引で説明する場合が多い.一方,心理学や行動意思決定理論の分野では,時間を含めた心理的距離の変化による選好の逆転を解釈レベル理論の枠組みで分析する研究が多数,存在する.本研究では,割引の概念を解釈レベル理論に組み込んだ割引解釈レベルモデル(DCLM)を提案する.具体的には,割引の適用を時間も含めた一般的な心理的距離に拡張し,割引傾向の違いに関する2つの要因,量的効果と符号効果を仮定する.本論文では,これらを3つのプロポジションとして提案し,ロトの選択に関するアンケート調査に基づいて統計的に検証する.その結果,DCLMが時間軸も含めた一般的な心理的距離の変化による選好の逆転を説明,予測できることを示す.
著者
山田 歩 福田 玄明 鮫島 和行 清河 幸子 南條 貴紀 植田 一博 野場 重都 鰐川 彰
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.129-132, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
6

本研究では,テイスティングの際に,好き嫌いの理由を意識的に分析することが,サンプルへの選好に与える影響を検討した.参加者は,好きな理由を分析するか,嫌いな理由を分析するか,もしくは分析せずにPepsiとCokeを試飲し,それらの好みを判断した.その結果,分析をしなかった参加者はPepsiよりCokeを好む傾向があったが,好きな理由を分析した参加者はPepsiへの選好を強めることが確認された.嫌いな理由を分析した参加者は,PepsiとCokeに示す好みに違いがなくなった.また,好きな理由についてはPepsiはCokeより記述しやすいと判断されたが,嫌いな理由については両者に違いがなかった.これらの結果は,意識的に味の好き嫌いを分析するテイスティング場面では,直感的な評価と異なる結果をもたらすこと,また,サンプルの理由の記述しやすさがそうした評価の変動を増減させていることを示唆する.
著者
山根 承子
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.156-159, 2010 (Released:2011-05-17)
参考文献数
3

本稿ではリファレンスグループの内生的設定を行う相対所得モデルを作成し,その妥当性を実験室実験によって確認した.本モデルは心理学の知見を利用しており,(1)リファレンスグループはパフォーマンスに影響する,(2)その影響の方向には個人差があると考えていることが特徴である.実験の結果,本モデルの妥当性は支持され,新しい相対所得モデルとしての可能性が見出された.
著者
Shoko Yamane Hiroyasu Yoneda Yoshiro Tsutsui
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.273-276, 2012 (Released:2013-06-12)
参考文献数
7

This paper investigates the individual outcomes of irrational thinking, including paranormality and non-scientific thinking. These modes of thinking were identified by factor analysis from a 2008 survey. Income and happiness are used as measures of performance. Empirical results reveal that non-scientific thinking lowers income, whereas paranormality does not affect it. While non-scientific thinking lowers happiness, paranormality raises it. Extending the model, we find that higher ability and self-control result in higher income and happiness. Selfishness raises income, but diminishes happiness. These results suggest that generally achieves higher individual performance except that belief in paranormality raises happiness.
著者
山田 歩
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S41-S44, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
9

ナッジはしばしば理性ではなく直感に働きかけ意思決定を操作する.本研究は,意思決定者がナッジによる操作をどれほど自覚しているのか,また,ナッジを開示することがナッジによる操作からの離脱を可能にするのか,の2点について検討した.実験1は,デフォルトの影響力を意思決定者の多くが自覚しないことを示した.実験2は,デフォルトを開示しても,意思決定者の多くはデフォルトから受ける影響力を認めないこと,また,意思決定を修正しないことを示した.これらの知見がリバタリアン・パターナリズムにおいて持つ意味について考察した.
著者
保原 伸弘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.160-161, 2010 (Released:2011-05-17)
参考文献数
8

ヒット曲(流行歌)は周囲の経済状況との関連が強い商品(財)と考えられる.去年のヒット曲の調性やテンポと経済状況に関する分析に引き続き,日本の昭和期および平成期に流行ったヒット曲(流行歌)がもつ音域や音程に注目し,それらと経済状況との間の相関について考察する.