著者
山根 信二 小笹 裕昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.440, pp.9-16, 1996-12-21
被引用文献数
1

「ハッカー」とはシステムに精通した人物に対する称号であり, ハッカーはネットワーク社会への貢献者でもある. しばしばハッカーは蔑視の意味でしばしば誤って使われたが, やがてサイバーテロリストをハッカーと区別するために「クラッカー」と呼ぶようになり, RFCでもその呼称が提案されている. 本論ではハッキングをセキュリティ破りではなく, インターネットやフリーソフトウェアに体現される自由と協調の精神の観点から捉える. そしてハッカーを養成する運動の現状を分析し, ハッカーの裾野が広がる意義を考察する.
著者
長尾 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.95, no.261, pp.55-65, 1995-09-25

自然科学の発展は目覚しい。それは古典力学から量子論へといった質的転換をとげ、今日では科学技術という1つの概念さえ出来上がった感がある。こういった科学の発展を哲学的、歴史学的に考える学問として科学哲学がある。本稿はこれまでの科学哲学の考え方を批判し、新しい科学哲学的立場を明かにするとともに、科学は価値中立であるが工学はそうでないこと、工学は人間を中心として価値概念を伴った設計という立場から科学技術を駆使するものであって、工学の方が科学技術よりはるかに困難であるが崇高な倫理的課題を伴ったものであることを明かにする。
著者
辻井 重男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.95, no.569, pp.17-27, 1996-03-09

1995年12月に開催されたOECD暗号政策会議等で得た知見に基づいて、暗号供託システム、鍵管理システム及び電子現金について、プライバシーの観点も含め、国際的な視野の下に記述している。
著者
馬被 健次郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.98, no.78, pp.1-6, 1998-05-28

九州工業大学情報工学部の教務情報システムは、キャンパス・ネットワーク上に構築されたクライアント・サーバ型の情報システムであり、学務係の窓口において行われてきた教務関連の情報サービスを、ネットワークを通して学生と教官に提供することにある。本稿では、このシステムを構築するに当たって学内で議論されたセキュリティ上の問題点に重点を置いて、現在のシステムの基本設計と全体構成について紹介する。
著者
木實 新一 上林 弥彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.440, pp.33-40, 1996-12-21

コンピュータ上の仮想世界を示す言葉「サイバースペース」はSF小説で用いられたのがはじめであるが, 現在この言葉は我々にとって身近な存在となっている. ふだん電子メールやWWW, ネットニューズ, チャットを利用しているとき, 我々はサイバースペースにいる. 現在のサイバースペースはさまざまな問題を抱えており, それらが顕在化しつつある. しかしながら, 仮想世界と現実世界の結び付きは多種多様であるため, それらの問題を一般的に解決することは困難である. このことが顕著に表れるのが, サイバースペースにおけるレイプの問題である. 最近のネットワーク社会の問題についても触れ, 解決法についても議論する.
著者
大谷 卓史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.83, pp.9-16, 1996-05-29

本報告においては、電子ネットワーク上のデータ内容の制限・禁止が、自由主義倫理の立場から見て正当化できるか検討し、電子ネットワーク上のデータ内容の制限・禁止も、イギリスのワーノック委員会の報告に基づいた既存メディアのわいせつ表現規制に原則的には従うべきであることに加え、電子ネットワークの技術的条件によって修正を加えるべきことを提案した。
著者
浜尾 敦史 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.97, no.607, pp.21-26, 1998-03-16
被引用文献数
7

1997年12月11日, 12日に行われた『第一回京都コンピュータリテラシー教育シンポジウム「コンピュータ・リテラシー教育とその問題点-社会と技術の関わりを視野に入れて-」』の報告を通して, コンピュータリテラシー教育の現状あるいは問題点, そして今後の課題について述べる。
著者
江口 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.97, no.607, pp.7-12, 1998-03-16
被引用文献数
1

本論では、システム侵入の倫理的問題を考察する。主としてE.Spaffordの有名な論文「コンピュータハッカー侵入は倫理的か?」を取り上げ、彼の「システム侵入は明らかな害悪がなくとも非倫理的である」という主張の説得力のある部分は、彼の本来の意図に反して、望ましくない結果が生じるという帰結主義的なものであることを明らかにし、この立場からシステム侵入の問題を再考察する必要性を提唱する。
著者
児玉 晴男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.83, pp.21-28, 1996-05-29
被引用文献数
3

マルチメディアやインターネットの開発・普及は,ディジタル機器に対応した著作権制度と国際的な調和の必要性を顕在化させている.国際的な著作権制度の枠組みは,ベルヌ体制にある. しかし,著作権の解釈は二つのアプローチ(author's right, copyright)によって複雑化しているのが現状といえる.二つの法文化の差異とアナログからディジタルへの技術の転換は,著作物,著作者の伝統的な概念にずれを生じ,著作権の解釈に軋轢を派生させている.本報告は,カオス状態の著作権に一つの規則性を見ることにある.この問題解決は,相補性の観点から,著作権制度の調和点が著作権者の公示と著作者人格権・著作隣接権の調整にあろう.
著者
村山 優子 岡本 栄司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.97, no.84, pp.13-18, 1997-05-31

インターネットのような計算機網で,マルチメディア通信が実現される時,従来のデータ,ソフトウェア,サービスプロセスなどのネットワーク資源への不正なアクセスの脅威などに加え,画像や音声によるセキュリティの脅威が新たに存在するようになる.本予稿では,特に動画像の通信における新しい脅威のひとつとして識閾下伝意の問題を提起する.識閾下伝意については,心理学の分野では,長年その効果の是非が議論されていたが、10年程前から,様々な領域の研究や交流が進み,その効果が認められるようになった.現在,実験心理学の分野では,治療や教育目的のため,このような手法が使用されている.本予稿では,さらに,この識閾下伝意の問題が,本質的にコンピュータ・ウィルスの問題と同等であることを示し,画像情報におけるセキュリティの分野である情報隠蔽技術(steganography)や「隠れ通信路」(covert channel)の概念において,識閾下効果の問題が,どのような位置を占めるのかを明確にする.