- 著者
-
長尾 真
- 出版者
- 情報知識学会
- 雑誌
- 情報知識学会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.1, pp.1-8, 1991
今日,情報は社会のすみずみにまで行きわたるようになり,人それぞれによりそれぞれの仕方で活用されるとともに,また種々の影響を社会と個人に与えるようになってきた.従って,情報・情報技術の社会における実態とその影響をよく観察し,情報と人間との相互作用,相互関連性について考えることが必要である.即ち情報社会というものに対する生態学的研究が今日必要とされていると言える.本稿では,これを「情報社会の生態学」と名づけ,その試みを示す.情報の代表的な表現媒体は言語であるが,音や図形・画像,さらには動作などによっても行なわれている.かっては,印刷物に固定された情報以外はすべてその場で消滅してしまうものであったが,電子技術・計算機技術によって,各種の情報が記憶され,処理され,種々の形に変換されて利用されるようになってきた.情報爆発という言葉が示すように,情報表現技術によって膨大な情報が利用できるようになってきているが,それに従って,1人の人間にとって必要な情報の割合が極端に小さくなり,真に有効な情報の取得が困難となってきている.ここでは,社会と情報,個人と情報との関係として検討すべき課題を列挙し,情報の有効性と危険性について考える.