著者
植木 亮介 山東 信介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.93-97, 2018-05-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
19

近年、DNA-encoded library(DEL)と呼ばれる手法が新たな創薬基盤技術として注目を集めている。本手法ではDNAがもつ「PCRによる増幅反応が可能」、「ハイスループットな配列解析が可能」という特性を利用し、無数の化合物が混合された状態においてスクリーニングを実行可能である。そのため従来法と比べ、迅速かつ簡便に106以上の多様な化合物の評価を行うことができ、Hit化合物の特定と構造活性相関の取得までのプロセスを効率化できる。本稿では、DELの構築法についてライブラリ構築の際に考慮すべきDNAの特性に触れながら概説する。
著者
島野 正直
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.2-7, 2016-02-01 (Released:2018-07-02)
参考文献数
5

科研製薬株式会社は、財団法人理化学研究所(理研)をルーツにもつ製薬企業である。規模的には、いわゆる中堅であり、どちらかというと地味な企業であるが、ユニークな品揃えで社会に貢献し、堅実に成長している。医薬品業界は医療費抑制政策の大波に揉まれ始めており、予断を許さない状況であるが、今までに築いてきた基盤を大切にしながら新しいことに挑戦し、患者さんのアンメットメディカルニーズに応えられるように研究開発体制の強化を図っている。また、開発速度と開発頻度を上げるために、外部との共同研究、共同開発にも積極的に取り組んでいる。製薬産業は知識集約型産業と言われて久しいが、基本となるのは人である。計画や施策の実効性は、個々の研究員の能力と発想、そして達成意欲に掛かっている。一方で、医薬品の開発には長い年月が掛かるが、成功確度は高くない。規模的に多くのことはできない中で、何を行うかも問われている。
著者
薬師寺 文華
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.121-124, 2016

<p>米国ボストンにあるハーバード大学、Broad Institute of Harvard and MITのStuart L. Schreiber教授が主宰する研究室に2年間留学する機会を得た。Schreiber研究室は、現在Broad Instituteの3階にあり、大学研究室の枠を越えた大規模な研究展開を行っている。最近では、ガン細胞における遺伝子発現と低分子化合物に対する感受性との間に相関を見出すことで、化合物の作用機構を考察する計算科学的手法を発表している。Schreiber教授の研究例を含め、大規模データ解析による知見の構築が次世代創薬の流れをつくりつつある。実際にBroad InstituteはGoogle genomicsと提携し、ゲノム解析ソフトGATKをGoogleクラウドプラットフォーム上で使用できるサービスを開始しており、生物医学や創薬研究に与えるインパクトの大きさがうかがえる。Schreiber研究室への留学という好機に恵まれたことに深く感謝し、今後も幅広い研究活動を行えるよう努力を重ねていきたい。</p>
著者
斉藤 文彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.216-220, 2016-11-01 (Released:2018-03-15)
参考文献数
1

National Medicinal Chemistry Symposium(NMCS)は、ACS Division of Medicinal Chemistry主催で1948年より隔年で開催されている。今回の第35回シンポジウム(NMCS2016)は、2016年6月26~29日までの4日間、イリノイ州シカゴで開催された。29の国・地域から約350名の参加があり、受賞・招待講演である口頭発表が26演題、ポスター発表が109演題であった。1日目は「DMPKに関する最近の話題」と「受賞講演」、2日目は「転写因子ターゲット」、「エピジェネティック メカニズム」と「ポスターセッション」。3日目は「神経変性疾患に対する治療の最近の進歩」、4日目は「オープンイノベーション」と「アンドラッガブルからドラッガブルへ」についての講演であった。本レポートでは口頭発表のなかからいくつかの演題について報告する。