著者
前田 学 山崎 隆治 藤沢 智美 永井 美貴 周 圓
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.210-218, 2005-09-30 (Released:2010-08-05)
参考文献数
13

末期皮膚悪性腫瘍 (悪性黒色腫と有棘細胞癌) の2例に対してモーズ法と灸療法の併用を試みた。症例1; 77歳, 男性, 1996年夏より左足第I爪が黒色化し, 1997年5月, 外科で抜爪術施行。6月左鼠径部リンパ節腫脹出現, 悪性黒色腫のリンパ節転移の診断下, 8月18日に当科入院後DAV-feron療法3クール施行, 1998年1月22日に左第1趾切断, 6月より左鼠径部に転移巣数十個以上出現, 腫瘍巣36×30cmを拡大切除・植皮施行, 8月同部に再発, 切除。以後, 再燃・切除を4回施行。鼠径部転移巣に1999年10月よりモーズ法を施行・切除。2000年1月14日に再入院。骨盤内の腫瘍巣は小児頭大, 肺転移出現。1月24日, 鼠径部転移巣に灸3荘施行後, 黒色壊死・潰瘍化し, 同部の腫瘍細胞は消失。易出血のため計5回で中止, 3月9日, 黒色舌苔・カンジダ症併発し, 3月15日心不全で死亡。症例2; 63歳, 男性, 1999年11月右鼻孔部に丘疹を生じ, 2000年3月, 急速に増大, 耳鼻科の生検では良性と判断されたが, 以後増大し, 6月13日当科紹介。有棘細胞癌 (SCC) の診断後, 鼻中隔を含め広範切除。8月よりPM療法2クール施行。2001年4月25日下顎に腫脹出現, 5月25日同部の結節もSCCのため, 放射線60G照射, CF療法2クール施行, 一時的に腫瘍は縮小したが, 深部に癌浸潤し, 手術不可能と判断。3月25日モーズ法を試み, 隆起部は平坦化し, 4月10日に退院後もモーズ法継続。7月16日, 腫瘍巣周辺部の小結節に灸療法併用し, 自宅でも継続。8月6日には腫瘍巣は壊死・痂皮化し, 病理像で壊死化 (+) 。10月より急速に腫瘍巣は増大・易出血性となり, 12月3日再度入院。腫瘍巣は小児頭大壊死性潰瘍となり, 2002年2月23日, 多臓器不全で永眠。灸は文献的にも各種の不定愁訴の改善のみならず, 腫瘍増殖抑制効果も報告されているので, 末期で完治困難な癌症例に対してQOL向上面からモーズ法と灸療法の併用も積極的に考慮する必要がある。
著者
石原 和之 山崎 直也
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.192-198, 1991-06-25 (Released:2010-08-05)
参考文献数
2

メラノーマの多発皮膚転移の2症例についてIFN-β (フエロン) の腫瘍内投与を試みた。1例はstageIIIで来院し, 原発巣の潰瘍化および所属リンパ節の転移の見られた症例で, 準治療後1年目に皮膚および皮下に多発転移が発生したものである。他臓器に転移の見られないことよりIFN-β単独で長期の腫瘍内投与によりすべての転移巣 (101個) を消失せしめ10年以上再発,転移を認めなかった。かかる症例は稀有といわざるを得ない。2例目は他施設で試験切除を施行し, 若干の期間を経て原発巣の広範切除と所属リンパ節郭清し, 10ヵ月後に同側下肢と所属リンパ節を越えた皮膚転移の多発を見た症例である。化学療法は無効であった。IFN-βの投与によりすべてを消失せしめ得た。副作用に関してはいずれの症例も問題となるものはなかった。
著者
中山 恵二 三神 寛 濱松 優 青木 雅子 西 原潔 中村 進一
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.297-299, 1991
被引用文献数
1

75歳女性の腹部に発生したエックリン汗管癌の1例を報告した。数年前より毎年暑くなると腹部に紅斑が出現。涼しくなると, 軽快することを繰返していた。初診時, 腹部に27×36mmの中心に潰瘍を形成する楕円形の結節を認めた。病理組織学的所見: 腫瘍細胞は表皮直下から一部脂肪織にかけて充実性に増殖しており, 細胞の大小不同, 核の異型性など悪性像を示し, 小管腔構造を伴って小胞巣を形成しながら増生していた。
著者
中野 敦 織田 知明 前田 晃 山田 秀和 手塚 正
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.465-470, 1997-03-10 (Released:2010-08-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

We reported a 69-year-old male case of multiple myeloma. His chief complain was a skin tumor, and it was localized on his forearm. After general examination of whole the body, atypical myeloma cells were found in the bone marrow. We selected radiation therapy, because of his age, past disease history, and so on. The tumor expressed good response, and reduced clinically. But, in a short time, it formed metastatic lesions in both thoracis vetebra and forearm arround the first lesion.Multiple myeloma is a disease, which is usually found and mainly complained chronic anemia, morbid bone fracture, and lumbago. This case that we reported was found as extramedullary plasmacytoma on the skin, and in that point, it was comparatively rare clinically.
著者
熊野 公子
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.278-281, 2011

50年前にイギリスのDr.シシリー・ソンダースがブロンプトン・カクテルを創作し,これを発端に,学問的なターミナルケアが始まりました。単なる経験論でなく,多数例での実践を踏まえて,科学的に検証し始めました。<br> 現在,ターミナルケアから緩和医療へと呼称が変化しています。緩和医療は,あらゆる時期のあらゆる苦痛からの解放を目指します。その対象となるのは,決して癌だけではなく,すべての疾患で,すべての患者に必要なものです。結局,緩和医療は医療の根本そのものであったのです。これを医療の回帰性と呼びます。この回帰性に医師が気付き始め,医学自体の方向性に変化が生じています。<br> 一方,皮膚科は専門領域の外の研究会に出席し,告知,身体的以外の痛み,終末期の家族への対応,などを学ぶべきです。<br> 皮膚科は緩和医療と接するところが少なくないにも拘わらず,皮膚科視野に立った緩和医療の研究は皆無です。今,緩和皮膚科学を考えるべき時です。
著者
菅原 光雄 佐伯 英明 沢田 幸正
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.425-427, 1990

61歳の男性。初診の約1年前に左下腿内側に掻痒感あり, 同じ頃同部を打撲。その後同部に皮下腫瘍が発生し, 2ヵ月で鶏卵大となった。1989年9月1日当科初診, 9月19日の生検で本症と診断された。患者の希望で左下腿腫瘍の摘出術を行ったが, 同年11月15日に死亡した。剖検で, 両側の肺, 右側の腎, 左肩甲骨および脳に多臓器転移が認められた。
著者
柳下 有理香 前川 武雄
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.367-371, 2010 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

76歳女性。2年前に外陰部の紅斑を自覚,半年前から急速に増大した。初診時,中央部に結節を伴う紅色局面が左大陰唇から肛門にかけて存在し,両側鼠径リンパ節を触知した。生検にてPaget細胞が真皮全層に浸潤していることを確認した。CT上,両側鼠径から大動脈周囲リンパ節までのリンパ節転移がみられ,stage IV(T4N2M1)と診断した。特殊染色にてHER2強陽性であったため,原発巣切除後,weekly docetaxel,trastuzumabによる化学療法を行った。7クール終了時点から8週後の評価でCRと判定した。経過中みられた副作用はいずれもgrade1の軽度のものであり,QOLを保ちながら,非常に奏効した。Trastuzumabとdocetaxelの併用療法は,HER2陽性乳房外Paget病において,少ない副作用と高い治療効果を併せ持った,非常に有用な治療法になり得ると考え報告する。